2022年2月4日金曜日

女川原発の広域避難計画に自治体悩む

 女川原発事故時の広域避難計画は、30キロ圏の約20万人が宮城県内31市町村に移動する大掛かりなものです。
 河北新報が、今月行われる予定の避難訓練に向けて各自治体の対応などについての記事を出しました。各自治体はそれなりに取り組む方針ですが、避難訓練から実効性のある避難計画か否かを検証することなどはとても出来そうもありません。
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「複合災害・感染予防・人手不足」 女川原発の広域避難計画、自治体悩む
                             河北新報 2022/2/3
 東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)の重大事故時の広域避難計画は、30キロ圏の約20万人が宮城県内31市町村に移動する大掛かりなプランだ。今月開催予定の原子力総合防災訓練に臨む県内の自治体からは地震、津波などの複合災害への対応、新たに浮上した新型コロナウイルス対策にも取り組みながらスムーズに避難できるのか、懸念の声が上がる。

■屋内退避の場所も
 計画では原発5キロ圏内の予防的防護措置区域(PAZ)の石巻市と女川町、「準PAZ」の牡鹿半島南部と離島の住民が即時に避難。5~30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)の石巻、登米、東松島、女川、涌谷、美里、南三陸7市町の住民はいったん屋内に退避し、空間線量が基準より高い場合に避難を始める。区域ごとの人口や避難先は表の通り。
 国が主催する初の総合防災訓練で、県や市町村は避難車両の放射線量を測定する「避難退域時検査場所」や避難先を振り分ける「避難所受付ステーション」、避難所の運営手順を確認する
 石巻市は幹部含め職員100人が参加予定。担当者は「実際に職員が動くことで、避難計画の細かい部分まで確認したい」と話す。東松島市民を受け入れるステーションと避難所各1カ所を訓練で開設する亘理町の担当者は「車の待機場所、土地勘のない市民をどう案内するかなどの課題を見定める」と狙いを語る。 
 避難訓練への住民参加は少なく、多くの受け入れ自治体は県との通信訓練のみとなる。白石市は「県からの情報を早い段階で確認できるかどうかに重点を置きたい」との考えを示す。

■自然災害と併発の事態も
 原発事故は自然災害と併発する恐れも否定できず、自治体は二重三重の対応を迫られる。涌谷町は「並行して対応するには時間も人も足りない」と明かす。
 「市内で相応の被害があれば十分な受け入れ態勢を築けるかどうか」(角田市)「複合災害なら市民の避難所受け入れを優先せざるを得ない」(仙台市)といった本音も漏れる。
 感染症に対し、各自治体は国の指針に沿って対策を講じる。大崎市は「避難所で発熱者を別室に隔離し、消毒や間仕切りで感染拡大を防ぐ」、石巻市は「移動バス内の座席は間隔を空けることを徹底する」などと説明する。
 避難所の確保には課題も残る。富谷市は新型コロナ対策として1世帯(3人想定)当たり9平方メートルの確保を目指すが、計画人数と避難施設から算出した1人当たりの避難スペースは2・5平方メートルほど。担当者は「もう少し余裕がほしい」と改善策を検討する。
 岩沼市は東松島市民約7900人を16カ所で受け入れる計画だが、感染対策などを考慮した実際の受け入れ可能人数を「1500~1600人程度」と試算。担当者は県外を含む2次避難の必要性を指摘する。
 「観光客避難との両立」(松島町)に加え、渋滞やマンパワー不足を不安視する意見もある。


20万人避難想定、訓練は400人 女川原発、コロナで参加小規模の見通し
                            河北新報 2022/2/3
■政府と宮城県、月内実施で最終調整
 新型コロナウイルスの影響で1年延期された東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)の原子力総合防災訓練について、政府と県は今月の初開催に向けて最終調整を進めている。重大事故時、半径30キロ圏の約20万人(2019年4月時点)が県内31市町村に逃れる避難計画の実効性が疑問視される中、住民避難訓練の参加者はオミクロン株の「第6波」襲来で、400人程度にとどまる見通しだ。自治体の円滑な対応や移動手段の確保、避難経路の渋滞といった課題の検証が不十分に終わる恐れがある。

■ヘリを使った避難も
 石巻市は30キロ圏にほぼ全域が含まれ、避難計画では14万人余りが27市町村に分散移動する。市によると、今回の訓練ではバスのほか、牡鹿半島の鮎川地区から船舶、離島からはヘリによる避難も実施する。参加者は市職員を除くと計50人ほどだ。
 約6500の全人口が避難対象の女川町では、計78人がバス7台で栗原市に向かう。行政区長を通じて募集したものの、新型コロナ感染拡大もあって積極的な呼び掛けは控えた。担当者は「避難車両による渋滞の検証は難しく、避難路の確認が目的になる」と話す。
 30キロ圏に一部が入る東松島市(避難対象約3万6400人)は、34人がバス2台に乗って名取市、亘理町に行く。登米市(9700人)では2地区の計200人に参加を依頼する予定だが、担当者は「まん延防止等重点措置が適用されても訓練を決行すれば、参加率が下がることが心配だ」と気をもむ。

■「参考にならないかも」
 30キロ圏の周縁3町は、さらに参加者が少ない。涌谷町(約700人)、美里町(約100人)はともにマイクロバス1、2台規模を想定。南三陸町(約1700人)では1地区の5、6人がワゴン車1台に乗り込み、町内に設ける避難退域時検査場所に移動する。
 南三陸町の担当者は「感染症流行下でも原子力災害が起きる可能性はあるが、感染不安を考えれば参加を促せないのが本音。実際の参考にはあまりならないだろう」と明かす。「全員にPCR検査をするのは体制的に難しい」(涌谷町)との声もある。
 避難計画では、避難先の自治体が避難所などの設置と初期運営を担い、避難元の自治体に引き継ぐ。相互理解が重要だが、避難者を受け入れる側に積極的な関与を求める県の姿勢は乏しい。

■仙台市は情報伝達訓練のみ
 女川町の全町民を18施設で受け入れる想定の栗原市は、1月末時点で「訓練の規模を知らされておらず、対応を検討できない」と困惑。石巻、東松島両市民の計約6万5000人を受け入れる仙台市は今回、情報伝達訓練のみに加わる
 市危機対策課の担当者は「県から受け入れ訓練を実施するかどうかの確認はなかった」と説明。「市の職員だけで避難所を運営できない場合も想定され、このままだと行き当たりばったりの対応しかできない。県は主体的に実効性を高める努力をしてほしい」と注文する。