欧州委員会は2日、原子力発電と天然ガスを「環境に配慮した投資先」のリストに加える提案を正式に発表しました。放射性廃棄物を出す原発などを「環境保護に貢献する」と認めることに対し、すでに一部の加盟国や環境保護団体などから強い反発が出ているし、天然ガスについても、反対の声が上がっているので、成立に向けては曲折も予想されます。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
EU、原発を「グリーンな投資先」に提案 一部の加盟国は反発
毎日新聞 2022/2/2
欧州連合(EU)の行政執行機関にあたる欧州委員会は2日、原子力発電と天然ガスを「環境に配慮した投資先」のリストに加える提案を正式発表した。脱炭素化に向けた民間投資を促す政策の一環。だが、放射性廃棄物を出す原発などを「環境保護に貢献する」と認めることに対し、すでに一部の加盟国や環境保護団体などから強い反発が出ている。提案は今後、加盟各国や欧州議会で議論されるが、成立に向けては曲折も予想される。
EUは気候変動対策として、2050年までに二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスを実質ゼロにする目標を掲げる。提案は、この目標に貢献する持続可能な経済活動を定義するEU規則「タクソノミー」に基づく。リスト入りすることで、原発や天然ガスは、再生可能エネルギーを中心とする経済への移行期に重要な役割を果たすものとして位置づけられる。
欧州委は21年12月末、この提案の草案を示し、各加盟国や専門家グループに意見を求めた。批判的な声も多く上がったが、欧州委は方針の大幅な変更はせず、正式提案をまとめた。
提案では、45年までに建設許可を得た原発は、放射性廃棄物の安全な処理などを条件に環境保護に貢献する「持続可能」なエネルギーとして分類された。天然ガスは30年までに建設許可を得ることや、CO2排出を一定量に抑えることなどを条件に「持続可能」と認定している。
だが、原発は発電時にCO2を排出しないものの、事故が起きれば甚大な被害が生じる。放射性廃棄物など「核のごみ」が残り続ける問題もある。原発のリスト入りは、発電量の多くを原発に依存するフランスやフィンランドのほか、石炭火力の代替電源として原発導入計画がある中東欧諸国などが推進したとみられる。
一方で、22年までの原発全廃を決めているドイツや、オーストリア、スペインなどは反対してきた。ドイツのハベック経済・気候保護相は1月25日、「原発のリスト入りが提案された場合、ドイツは反対すべきだ」と発言。オーストリアは提案の妥当性を巡り、欧州司法裁判所で争う姿勢を示している。
天然ガスについても、反対の声が上がる。石炭などに比べれば量は少ないが、CO2を排出する化石燃料であることには変わりないからだ。ドイツは天然ガスのリスト入りは支持するが、オーストリアやオランダなど4カ国は天然ガスをタクソノミーに含めることは「科学的根拠を欠いている」と、非難する書簡をEU執行部宛てに出していた。
また、欧州委に助言する専門家グループも「タクソノミー規則に沿ったものではなく、その枠組みを損なう」として、草案に異議を唱える意見書を提出。欧州投資銀行(EIB)のホイヤー総裁や一部の機関投資家からも批判的な声が上がっていた。
提案は今後、各加盟国や欧州議会で議論され、双方が受け入れを拒まなければ成立する。加盟国が拒否を決めるのには、加盟27カ国中20カ国以上の支持などを条件とする「特定多数決」による同意が必要で、難しいとの見方が強い。
一方、欧州議会で求められるのは過半数の同意で、加盟国間の協議に比べれば、提案を拒否するためのハードルは低い。【ブリュッセル岩佐淳士】
EU一部加盟国から猛批判 原発“グリーン”認定
共同通信 2022/2/3
【ブリュッセル共同】欧州連合(EU)欧州委員会が2日、原発と天然ガスを地球温暖化抑制につながる“グリーン”な投資先として認定する方針を各国に提案したことに対し、脱原発を掲げる一部の加盟国からは「受け入れがたい」「法的措置も検討する」と猛烈な批判の声が上がった。
欧米メディアによると、原発反対を党是とするドイツの環境保護政党「緑の党」所属のレムケ環境相はグリーン認定は「受け入れがたい。明確に反対する」とした上で「原発は持続可能ではなく、リスクが高く、費用がかかりすぎる」と指摘した。ドイツは天然ガスの認定は支持している。