福島県での小児性甲状腺がんの原因が、原発事故によるものかどうかを巡って、15日の会見で「引き続き調査すると言ったことはない」と述べていた山口環境相は18日の会見で、「新たな調査を立ち上げる必要はない」という意味の発言だったと釈明し、現在行われている福島県の調査については、継続することの重要性を強調しました。
甲状腺がんの原因が、原発事故によるものかどうかについては明言を避けました。
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福島の甲状腺がんと原発の影響巡り小泉元首相らに抗議の山口大臣
“継続調査しない”発言を釈明
TBSニュース 2022年2月18日
福島県での小児性甲状腺がんの原因が、原発事故による放射線の影響によるものかどうかを巡って、15日の会見で「引き続き調査すると言ったことはない」と述べていた山口環境大臣は、きょう(18日)の会見で、「新たな調査を立ち上げる必要はない」という意味の発言だったと釈明しました。そのうえで、現在行われている福島県の調査については、継続することの重要性を強調しました。
この問題は先月、小泉純一郎氏ら5人の総理大臣経験者が、EUでの原発活用の動きを受けて、福島第一原発の事故の影響の大きさを訴える声明をEU側に送付していたことがきっかけです。声明の中で、福島第一原発の事故によって「多くの子供たちが甲状腺がんに苦しみ」などと書かれていたことに対し、山口環境大臣は「誤った情報を広めている」として小泉元総理らに抗議していました。
福島第一原発の事故をめぐっては、事故による放射能の影響で小児性甲状腺がんを発症したとして、当時6歳から16歳で福島県に住んでいた男女6人が東京電力に対し損害賠償を求める裁判を、先月、起こしています。弁護団によりますと、小児甲状腺がんは年間の患者数が100万人に2人という極めて稀な病気ですが、福島県が事故当時概ね18歳以下だった約38万人を対象に甲状腺の検査をしたところ、がんやその疑いが266人に見つかり222人が手術を受けています。
こうしたなか、山口大臣は、福島の小児甲状腺がんと原発事故の影響を巡って、今月4日の記者会見では、「結論的に福島の原発が原因という風には断じられないという状況がずっと続いている」と述べたうえで、「(福島で甲状腺がんが)266人見つかったということもあるので引き続き調査する」と述べていました。
しかし、15日の会見では一転、「引き続き調査すると言ったことはない」、「福島県の専門家のレポート、国連のレポートの判断につきる」などと発言したため、事実上発言を修正して「調査を継続しない」ものとも受け止められていました。
そして今日、この15日の発言について、釈明。
「新たな調査をするのかという質問(を記者から受けた)と理解した」として、「新たな調査を立ち上げる必要はない。一方で現在継続されている福島県の県民健康調査は続けていくことが重要」と述べました。
一方、「多くの子供たちが甲状腺がんに苦しみ」と、福島の甲状腺がんに原発事故が影響している可能性を指摘した元総理5人の見解に対して山口大臣は「誤った情報」だと断定的に抗議していますが、今日の会見で、あらためて環境省として、甲状腺がんへの原発事故の影響の“ある”“なし”について判断を示すべきではないかと問われると、「福島県の県民健康調査を受けたいろんな話や国連の調査、その辺が一番大事だと思う。それを受けて環境省もそういう風に考えているということで受け止めて」などと、明言を避けました。
以下、この問題に関する今日の山口大臣の発言です。
山口環境相 「先日2月15日閣議後の記者会見でのやりとりについて確認する。甲状腺がんの原発事故による放射能の影響かどうかは断定できなくて引き続き調査をすると述べられたと思うんですけど、という質問があったので私の方から。引き続きというか、引き続きって質問を引っ張ってしまったが、調査をするといったことは私は言ったことはないと思いますと回答したところ。これは甲状腺がんの原発事故による放射能の影響かどうか断定できないことに対し、何か新たに調査をするといったのかという趣旨の質問と理解して、そのような新たな調査をすると私は言ったことはないと答えた次第。国内外の公的な専門会議により現時点で放射能の影響と考えにくいという評価がなされていて、専門家による新たな調査を立ち上げる必要はないという認識を示したもの。ただ、会見記録を読み返すと、答える際に引き続き調査するのかというところから引っ張ってしまって、引き続き調査をするといったことはないと答えたので、わかりにくかったんだと思う。引き続きというのは余計だった。正確には新たな調査をすると言った覚えはないという趣旨。一方で現在継続的に行われている福島県の県民健康調査は、2月4日の会見で、すぐにポンと打ち切らずに引き続き調査させていただくんだろうなと考えていると発言した通りで、引き続き福島県民の気持ちに寄り添いながら継続的に実施されていくことが重要と考えている。その意味で2月4日の発表からの修正はない」
記者 「冒頭おっしゃった原発の甲状腺(がん)影響のことで、意見がある。専門家の評価を受けて環境省が『影響があると考えるのかなしと考えるのか』を出すべきでは、環境省は逃げてるのではないか?」
山口環境相 「甲状腺の話については、我々、専門家の福島県の県民健康調査を受けたいろんな話、あるいはアンスケア(⇒原子放射線の影響に関する国連科学委員会)、その辺のことが一番大事だと思う。それを受けて環境省もそういう風に考えているということで受け止めて」
記者 「文書の中で大臣は多くの子供たちが甲状腺がんに苦しむという表現については、放射線健康影響調査に関する差別や偏見につながる恐れがあり適切ではないと考えると述べた。一方で、先日、小児甲状腺がんを発症した患者や家族が東電を提訴。甲状腺がんに苦しんでいる人がいるのも事実。大臣の文書によれば、これらの原告が甲状腺がんに苦しんでいるのは原発事故の影響ではないということになる。甲状腺がん発症の事実を否定することにならないか見解を。現実に甲状腺がんで苦しんでいる人たちがいることの見解は?」
山口環境相 「甲状腺がんの方がおられることを踏まえて環境省では、福島県の子どもたちの気持ちに寄り添うべく放射線の健康影響に関する差別偏見の払拭に取り組むとともに、甲状腺検査の対象者あるいは家族の多様な不安に応えるため、例えば2次検査を受ける方への心のサポートの実施体制を強化する事業を行っており、今後ともこうした事業・取り組みを進める。裁判に関することは私はコメントすることは差し控える。甲状腺に関する、甲状腺がん、これが福島県の報告書あるいは国連の科学委員会のアンスケアの報告書によっては因果関係は現時点で放射線の影響とは考えにくいという趣旨の評価がなされているということだと思う」