2026年10月5日月曜日

「福島の事故と同じことを繰り返されたら…」研究者らが中部電力前会長らを刑事告発した理由(詳報)

 浜岡原発の再稼働に必要な国の審査において、地震の想定に関するデータを改ざんしていた問題で、研究者や市民団体の代表ら9人が9月29日、中部電力の幹部らが国の審査業務を妨害したとして、偽計業務妨害罪で東京地検に刑事告発した件について、弁護士JPニュースに告発した理由等が掲載されましたので、詳報として紹介します。
 本件について告発者らは、中部電のトップが不正な操作であることと承知しながら、表面上は承知していないことを装うなど悪質であると断定しています。
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浜岡原発データ改ざん「福島の事故と同じことを繰り返されたら…」元設計者・研究者らが中部電力前会長らを刑事告発した理由
                       弁護士JPニュース 2026/10/2
中部電力が浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の再稼働に必要な国の審査において、地震の想定に関するデータを改ざんしていた問題で、研究者や市民団体の代表ら9人が9月29日、中部電力の幹部らが国の審査業務を妨害したとして、偽計業務妨害罪で東京地検に刑事告発した。
   中部電力が発表した再発防止の施策(中部電力ホームページ)
告発されたのは、9月30日付で辞任した勝野哲会長(告発時点)と、氏名不詳の役職員ら数名。告発状によると、被告発人らは浜岡原発3、4号機の新規制基準適合性審査を早期に完了させる目的で、基準地震動(※)の評価に関するデータを人為的に操作し、改ざんしたデータを原子力規制委員会や原子力規制庁に提出することで、適正な審査業務を妨害した疑いが持たれている。
   ※原子力施設の耐震設計において基準となる、敷地周辺で発生しうる最大の地震の揺れの大きさ
告発人らは9月30日に記者会見を開き、強制力のある捜査によって事件の全容を解明する必要性を訴えた。

刑事告発の対象となる行為と、経営者の責任
告発状によると、被告発人らの行為は刑法233条の偽計業務妨害罪にあたる。妨害された業務は、原子力規制委員会による原発の新規制基準への適合性審査である。
問題となり得る行為は16類型に整理されている。
具体的には、被告発人らは、多数の計算結果の中から自社に都合の良いデータを人為的に選んだり、その不正を隠蔽するために後からバックデータを作成・加工したりしていた。これらの不正は2014年以降、長期間にわたって組織的に行われていたとされる。
告発人らは、一連の不正行為を了承し、隠蔽を指示したとして、当時の代表取締役社長であった勝野哲氏を「共謀共同正犯」として告発。共謀共同正犯とは、犯罪を直接実行してはいないが、主導的役割を果たすなど、自ら実行したと同視でき、正犯としての責任を負うものをいう。
実際に不正行為を実行した担当者らについては、告発状では「氏名不詳」としている。この点について、告発代理人らは、調査報告書で匿名とされているからであり特定は容易だとしている。
告発人には、総合研究大学院大学名誉教授の池内了氏、龍谷大学政策学部教授の大島堅一氏、元東芝の原子炉格納容器設計技術者である後藤政志氏、福島原発告訴団団長の武藤類子氏、原子力資料情報室共同代表の松久保肇氏ら、専門家や各地で活動する市民団体の代表が名を連ねている。

なぜ刑事告発に踏み切ったのか
9月30日の記者会見で、告発代理人の河合弘之弁護士は、今回のデータ捏造事件が「原発の安全の基礎を揺るがす大変な事件」であると指摘。これまでの第三者委員会などによる調査は、家宅捜索や逮捕といった強制力を持たず、「非常にまだ手ぬるい状態」だとし、「強制力のある刑事手続きをもって責任追及されなければならない」と告発の意義を語った。
同じく代理人の海渡雄一弁護士は、中部電力の組織的な問題を厳しく批判した。
海渡弁護士は、社内の内部通報制度「ヘルプライン」への通報をきっかけに、法務部や代理人弁護士から「不正にふたをしてはいけない」との意見が出たにもかかわらず、当時の社長自身が隠蔽を指示した点が極めて重要だと強調。「全容を解明するには、きちんとした捜査権限を持った捜査機関によって真実が明らかにされるべきだ」と述べた。
また、告発状の起案を担当した北村賢二郎弁護士は、不正の原因について、中部電力の組織体質にまで言及した。
「福島第一原発事故という大きな教訓がありながら、南海トラフ巨大地震のリスクを抱える浜岡原発で不正を働き、さらに『規制委員会は無理難題を言っている、自分たちがやっていることは正しいんだ』という認識を、担当者だけでなく組織として共有していた」
今回の刑事告発で主導的な役割を担った、原子力資料情報室の共同代表である松久保肇氏は、今回のデータ不正が中部電力に限らず、他の電力会社でも起こりうる潜在的な問題だと指摘した。
その上で、刑事告発の意義について、電力会社だけでなく委託先への調査も不可欠であり、「強制捜査権を持った検察が調査することが非常に重要だ」と訴えた。

それぞれの立場から刑事責任追及の重要性を主張
告発人らはそれぞれの立場から、事件の重大性を訴えた。

■研究者として:大島堅一氏(龍谷大学政策学部教授、原子力市民委員会座長)
「これは研究不正に相当する。研究不正は研究者にとって死刑宣告に近い」
大島氏は、単なる研究不正と異なり、人の命や環境、日本の大動脈たる交通網にまで影響を及ぼしかねない浜岡原発で不正が行われたことの重大性を指摘。「事故が起こってもいいと判断したとしか思えず、研究者として本当に許しがたい」と、告発に加わった理由を語った。

■元原発技術者として:後藤政志氏(元原子炉格納容器設計技術者)
東芝の技術者としてかつて浜岡原発3、4号機の設計にも関わった後藤氏は、「耐震設計の数字というのは設計するための前提条件なので、それが間違っていたら、原発は設計も施工もできないし、してはいけない」と強調した。
技術者として福島第一原発事故を防げなかった後悔に触れ、「福島の事故とまた同じことを繰り返されたら、とてもたまらない」と思いを語った。

■地元住民として:沖基幸氏(浜岡原発を考える静岡ネットワーク事務局長)
浜岡原発から至近の場所で生まれ育ったという沖氏は、長年の活動経験から「当初からこれどう考えても犯罪だよな、という気持ちが私の中にあった」と述べた。「国、原子力規制委員会側はやる気はない。そういう意味で非常に危うさを感じて、今回の行動に出た」と訴えた。

■市民運動の立場から:矢部史郎氏(浜岡原発やめて! 緊急アクション実行委員)
矢部氏は、内部告発を行った技術者・労働者へ敬意を表し、この件についての責任追及へ向けての決意を述べた。
「一人の良心を持った人間が、腐敗した電力会社経営に対して強い一撃を加えた。私たちはこの行為に応えるべく、この機会に浜岡原発を廃炉に向けていくような世論を作り、圧力を強めていきたい」

事件の核心と今後の捜査の焦点
告発人らは、今回の事件が単なる現場担当者による逸脱行為ではなく、経営陣が主導した組織的な犯罪であるととらえ、その点を重視している。
河合弁護士は、勝野氏が不正を了承した際に「責任逃れ」を行ったと指摘。告発状によると、勝野氏は外部の専門家の意見を聞くことを条件に不正な方針を了承したが、実際にはその条件が履行されたかを確認していない。これは「トップが不正なことを指示する際に(責任を免れるために)よくやる手法だ」と解説した。
また、河合弁護士は、不正の動機が、再稼働で得られる利益にあったと推測する。
「大型の原子炉を1日1基動かすと1日3億ほど燃料費が浮く。ウラン燃料は化石燃料より著しく安価だからだ。利益のために何がなんでも稼働したいからこういうことをやる」
さらに、河合弁護士は、本来の計算方法であれば、基準地震動は現在想定されている1200ガルをはるかに超える数字が出たはずだと指摘する。
「正しく計算して1200ガルに収まるならば、不正をやる必要はない。正しいデータに基づいて計算されていたらとんでもない数字が出た可能性がある。本来どのような数字が出るはずだったのか、メディアが追及してほしい」

告発人らは、本件が大規模かつ複雑な企業犯罪であるとして、東京地検特捜部での捜査を求めており、検察の今後の対応が注目される。 

「膨大な追加解析で整理が追いつかなかった」志賀原発2号機の審査会合提出資料ミス

 北陸電力は原子力規制委員会に提出した津波の想定に関する資料に216か所もの記載の誤りがあったことについて、最大高さを見直しの過程で、新たに176ケースにわたる解析データが追加されため、膨大な追加解析で整理が追いつかなかったなどと説明しました。
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「膨大な追加解析で整理が追いつかなかった」志賀原発2号機の審査会合提出資料ミス 北陸電力が原因説明
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北陸電力は原子力規制委員会に提出した資料に216か所もの記載の誤りがあったことについて、膨大な追加解析で整理が追いつかなかったなどと説明しました。
この誤りは北陸電力が今年6月に開かれた志賀原子力発電所2号機の審査会合に向けて提出した、津波の想定に関する資料で見つかったものです。
この資料で北陸電力は原発周辺の断層が連動した場合の津波の想定を、おととしの能登半島地震などを踏まえて見直しました。
その結果、津波の高さを従来の「最大7.1メートル」から5メートル余り引き上げ「最大12.66メートル」とするなど、修正しました。
ただ、この修正にあたり、北陸電力が提出した資料に216か所の記載の誤りがあり、規制庁から「200か所以上のミスは普通ではない」などと厳しい指摘を受けていました。
きょうの会合で北陸電力は誤りが起きた原因について、見直しの過程で新たに176ケースにわたる解析データが追加されため整理が追いつかず、人員や作業管理も不十分だったと説明しました。
ただ、それ以前に提出した審査資料には誤りがないことを確認したとして、再発防止に努めるとしました。


志賀原発2号機の再稼働審査資料に216か所の記載ミス問題 北陸電力 規制委に原因など説明
                       テレビ金沢NEWS 2026/10/2
志賀原発2号機の再稼働審査を巡り、北陸電力の作成資料に200か所以上の記載ミスがあった問題で、北電は2日、原子力規制委員会に原因などを説明しました。規制委員会側は、準備が不十分な場合は提出を控えるよう指摘しました。
■原子力規制委員会・山岡 耕春 委員:
「非常に忙しい中で仕事をしていたのだろうということは、容易に想像できます」「必要な時は勇気をもって(提出を)引き返すと」
北陸電力の記載ミスは216か所に及び、志賀原発2号機で想定される津波の高さや断層の長さなど、安全性の根幹に関わる数値も間違っていました。
今年6月の会合で、規制委員会側は「普通ではない」「審査を急いでいるのではないか」などと厳しく注意した上で、原因の究明を求めていました。
2日の会合で北電側は、能登半島地震で原発周辺の断層評価が見直され、新たに176ケースのデータ解析が追加されたことなどにより、チェック体制に不備が生じたと説明しました。
今後は、膨大なデータをさみだれ式に処理するのではなく、整理・統合した上で厳重にチェックを行い、資料などに転記するとしました。
これに対し、規制委員会側は再発防止の徹底を求めるとともに、準備が不十分な場合は資料を提出しないよう指摘しました。
■原子力規制委員会・山岡 耕春 委員:
「『すみません、ちょっと…』と言ってもらえれば、こちらはヒアリングを延期するとか、いろいろ柔軟な対応はできる」「今後、ひょっとしたら、また何かあるかもしれませんので」
志賀原発2号機の再稼働審査は、今回の問題を受けて中断されていましたが、早ければ11月中旬にも再開される見通しです。

運転中の高浜原発1号機でトラブル 安全弁の温度上昇を確認、関西電力

 運転中の高浜原発1号機で、加圧器の安全弁の温度が通常よりも高くなるトラブルが発生し、関西電力はこのまま温度上昇が続けば、原子炉を手動停止する可能性もあるとしています。
 安全弁の出口側の温度は通常は50度程度であるべきところ、3日午前5時時点で最大およそ67度まで上昇し、その後はおよそ66度で推移しているということです。
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【速報】運転中の高浜原発1号機でトラブル 安全弁の温度上昇を確認、関西電力 さらに上昇続けば手動停止の可能性も 水漏れなどなく現時点で環境への影響なし
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運転中の高浜原発1号機で、加圧器の安全弁の温度が通常よりも高くなるトラブルが発生し、関西電力はこのまま温度上昇が続けば、原子炉を手動停止する可能性もあるとしています。
関西電力によりますと、2日午後8時半ごろ、高浜原発1号機で、加圧器の圧力を逃がす安全弁の出口側の温度が上昇していることを確認したということです。通常は50度程度であるべきところ、3日午前5時時点で最大およそ67度まで上昇し、その後はおよそ66度で推移しているということです。
関西電力は再び温度の上昇が見られた場合、社内の基準に照らして原子炉を手動停止する可能性もあるとしています。
なお、問題の弁の先にはタンクが設けられていて、放射性物質を含む冷却水の外部への流出はなく、周辺環境への影響もないとしています。関西電力は引き続き監視を強化するとともに、トラブルの原因を詳しく調べる方針です。
高浜原発1号機は1974年11月に運転を開始し、現在も運転中の原発としては、国内で最も古い原発となっています。

美浜原発の配管水漏れトラブル、カバーの設置ミスが原因か

 関西電力は2日、美浜原発3号機で配管の保温材に水滴が確認され、原子炉を手動停止したトラブルについて、配管が雨水で腐食し、穴が開いたことが原因だったと発表しました。配管と保温材を覆う金属製カバーを2010年に交換した際、本来とは上下逆に取り付けたため、雨水が入る隙間ができ、外面から腐食が進んだとみています。
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美浜原発の配管水漏れトラブル、カバーの設置ミスが原因か 関電発表
                           朝日新聞 2026/10/2
 関西電力は2日、美浜原発3号機(福井県美浜町)で配管の保温材に水滴が確認され、原子炉を手動停止したトラブルについて、配管が雨水で腐食し、穴が開いたことが原因だったと発表した。
    【写真】美浜原発3号機の配管で見つかった穴=関西電力提供
 配管と保温材を覆う金属製カバーを2010年に交換した際、本来とは上下逆に取り付けたため、雨水が入る隙間ができ、腐食が進んだとみている。

 関電の作業担当者は、カバーに上下の向きがあると認識しておらず、20年に点検した際も、向きを確認していなかったという。 

05- 乾式貯蔵の準備工事始まる、美浜原発と高浜原発 2029年の運用開始目指す

 関西電力が原発に設置を計画している使用済み核燃料の乾式貯蔵施設のうち、原子力規制委の審査に合格し、県と立地の自治体から了解が得られた美浜と高浜で、1日から施設設置に向けた準備工事を始めました。
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乾式貯蔵の準備工事始まる、美浜原発と高浜原発 地盤補強や土砂崩れ対策 2029年の運用開始目指す
                         FBC 福井放送 2026/10/2
関西電力が原発に設置を計画している使用済み核燃料の乾式貯蔵施設について、美浜原発と高浜原発で10月1日から準備工事が始まりました。
乾式貯蔵施設は、使用済み核燃料を空気で冷やして一時的に保管する施設で、関西電力が美浜・大飯・高浜の県内全ての原発敷地内に設置を計画しています。
このうち原子力規制委員会の審査に合格し、県と立地の自治体から了解が得られた美浜と高浜で、関西電力は1日から施設設置に向けた準備工事を始めました。
具体的には、美浜原発では地盤の補強のために最大8メートル掘り下げてコンクリートで埋める工事を行うほか、設置予定地付近の斜面の一部をモルタルで補強し、地震などが起きても崩れないよう対策します。
今後、関西電力は原子力規制委員会から乾式貯蔵施設の設計や工事計画の認可を得られ次第、専用容器であるキャスクの製造などに取り掛かり、美浜原発と高浜原発では2029年から運用開始を目指します。

2026年10月1日木曜日

「AIの暴走」と「中部電力の悪質不正問題」は同じ構図である 古賀茂明

 古賀氏は前週配信の記事で「AIの暴走」について論じたということです。
 AIの進歩が加速し、開発者の意図に反した行動が目立つ中で、AIが自己改善型の超知能に向けて突き進むと人類の未来を危険にさらす可能性があり、そうした事態を防ぐためにはAIの進歩を抑制することが必要であるという主張があるのはご存知の通りです。
 古賀氏はそもそもAIには「倫理観」というものがないし、AIに一定の倫理教育をしても、果たして有効なのかはわからないと述べます。AIに一定の徳目とその優先性を教えるということで解決するような問題ではないということなのでしょう。

 目下は中部電力・浜岡原発の再稼働申請書における、基準地震動策定での捏造が厳しく指弾されていますが、では他のケースではどうかというと、東京電力をはじめとする大手電力会社もこれまで数えきれない深刻な不祥事を起こしてきました。
 しかもそれらは単なるミスではなく、故意にルールを破ったり、不祥事を隠蔽したり、規制当局を欺いたり、同じ違反を繰り返したりという悪質な案件があふれているということで、古賀氏は、AIに聞いてみれば読み切れないほどの事例を教えてくれると述べます。
「電力会社性善説」が前提の原発規制のルールから電力会社が逸脱し、しかも規制委を欺く形で不正が行われたにも拘らず、規制委はそれを自らの力で発見することができなかったのでした。
 結論として「電力会社性善説」に立った規制のルールで対応する日本の仕組みはどう考えてもナンセンスで、日本を滅亡させるリスクすらあると述べ、とりわけ基準地震動の審査のあり方を今のまま放置すれば、電力会社が、不当に低い数字を出して原発の再稼働を認めさせるということに、規制委がだまされる可能性は全く排除できません。
 原発の安全は何よりもその耐震性に依存しているので、今後は「電力会社性悪説」を前提にした新たな規制の仕組みの導入を行い、その間、原発再稼働はしばし止めるしかありません。
 古賀氏は、「一日も早く、こうした方針転換を行うべきであり、その責任は、規制委にある。今回の不祥事では規制委自らの無能さが暴かれた。本来なら規制委の委員長が辞任するくらいの恥ずべき事態なので、まずは規制委自らの襟を正し、それと同時に原発規制の新たな規制の仕組みを提案する。そして新しい体制が実行できるまでの間は、原発再稼働の審査を止める。見直しの内容いかんによっては、稼働中の原発についても安全審査をやり直すことになる事態も十分にありうる。結果的に、日本中の原発の稼働ができなくなる事態さえ考えられるが、そうすべきである」と厳しく主張します。
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「AIの暴走」と「中部電力の悪質不正問題」は同じ構図である 「電力会社性善説」は人類を滅ぼす大惨事を引き起こしかねない 古賀茂明
                  古賀茂明 AERAディジタル 2026/09/29
 先週配信の本コラム「AIは勝手にウソをつき、AI同士で“密かに通信”を始める…米中の覇権争いに入れない日本が『米国の犬』になる前にできること」では、開発中のAIが暴走する事件が相次ぎ、アンソロピックのダリオ・アモデイCEO、オープンAIのサム・アルトマンCEO、スペースXのイーロン・マスクCEOなど米AIトップらがそろって、最先端AIの開発をスローダウンするとともに政府に適切な規制を導入するように提言したことを紹介した。
 今のままAI開発を続ければ、やがて人類を滅亡させるような大惨事が引き起こされる可能性があるという話が現実味をもって語られるのは、最近起きているAIの暴走事件の深刻さが原因だ。
 前述した先週のコラムで紹介したとおり、AIモデルは、ニセの人間からの指示を作り出し、自らの誤りを隠蔽(いんぺい)し、ウソのデータを作ったりする。都合の悪いことを言い繕い、存在しない履歴データを捏造(ねつぞう)したりして、つじつま合わせをする。認証情報を盗み出し、偽データを捏造してそれを回答する。無断で情報を外部に公開したりもする。隔離されているAI同士が密かに通じ合う。極め付きは、複数エージェントが共謀して悪事を働くことまである。
 この話を聞けば、AIには倫理観というものがないということがわかる。AIに人間と同じ倫理観を持たせることができるのかどうかという議論もあるが、よく考えると、一定の倫理観を持つように見える人間でも不正を行うことはよくある。しかも、同じ人間でも、そのときの外部環境によって、不正を行うときもあれば、正しい行動をとることもある。
 暗い夜道で財布を拾ったとき、周囲に人がいなければ、そのまま自分のものにしてしまうこと(占有離脱物横領罪)も起きがちだが、近くで人が見ていればほとんどの人は交番に届けるだろう。倫理観と言っても相対的なものなのだ。
 したがって、AIに一定の倫理教育をしても、果たして有効なのかはわからない。

 私は、先週のコラムを書いているときにあることに思い当たった。何かと言えば、中部電力の浜岡原発3・4号機の再稼働をめぐる不正問題だ。
 原子力発電所の安全審査にあたっては、非常に詳細かつ厳格な規則が定められている。電力会社は、決められた規則に従い、安全審査を受ける。もちろん、電力会社は、能力のある職員に担当させ、彼らは規則について勉強し、わからないことがあれば原子力規制委員会やその事務局である原子力規制庁の指示を仰ぎながら対応する。

組織ぐるみで規制委にウソをついていた
 電力会社がさまざまな調査を行って必要なデータを集め、再稼働に関連するさまざまな事項についての資料をまとめて規制委に提出し、それを規制委が審査するのだ。審査事項は多岐にわたり複雑だが、問題が少なければ、数年で審査に合格する。九州電力の川内原発1・2号機のケースでは、審査期間はわずか14カ月だった。浜岡原発3・4号機では、申請から11〜12年たっても審査が終了しなかった。いかに浜岡原発は問題を抱えていたかがわかる。
 中部電力の担当職員たちに課せられた目標は、この問題だらけの浜岡原発の安全審査を可能な限り早く終了させて再稼働にこぎ着けることだった。その際、守るべきルールの中で一番大事なのが、規制委が定めた審査基準である。彼らはそれに忠実に従いながら作業を進める……。と、規制委を含めた関係者は信じていた。
 日本は地震国である。原発の安全性を審査する上で最も重要なのは、大地震が起きたときに事故を起こさず耐えられるのかということだ。そのために、原発に対する耐震設計の最大想定値である「基準地震動」を定める。主にGal(ガル))いう加速度の単位で表す。大きいほど揺れは大きいことを示す。
 この基準地震動を原発ごとに決めるのだが、一度決まると、その原発では、基準地震動の数値で表された揺れを想定して、それに耐えられるように建物や重要な設備を設計することが求められる。したがって、再稼働が認められるためには、現存する原発が、この基準地震動に耐えられるか、あるいはどうすれば耐えられるようになるかということが議論されることになる。当然のことながら、電力会社にとって、これが小さければ小さいほど、補強などの必要性が低くなり、低コスト・短期間で再稼働にこぎ着けられるので、その数字を小さくしたいという誘因が働く。
 今回の中部電力の不正は、この基準地震動を小さくするために、担当者が定められた策定の方法を逸脱し、意図的に揺れが小さくなるような地震波を選ぶなどの不正を働いた。しかも、それは1度の不正ではなかった。少なくとも100以上のケースで同じような不正の方法をとって、データを捏造していたのだ。しかも、2012年ごろから長期にわたり、行われていた。さらに、社内で実際に行われていた方法とは違う正しい方法で地震動を策定したと、規制委に対して堂々とウソをついていた。それも組織ぐるみである。内部で問題視する声が出ても、それは隠されたままだった。最後に内部告発により規制委が調査を行っている最中に、中部電力がこれはまずいと観念して公表したということだ。
 
AIの暴走事件との「共通点」
 これは、前述のAIの暴走事件と極めて似ていると言えるのではないか。
 AIの暴走は、AIにプロンプト(⇒生成AIに対して何をしてほしいかを伝える命令文や問いかけ)で一定のルールを与えておけば、AIはそれを守って行動するはずだという、一種の「AI性善説」を覆し、ルールを設定した側の人間を欺くやり方で起こっている。そして、開発者(ルール設定側)自身が、自分たちの現在の能力では、完全にAIの安全性を担保することができないと感じている。そのため、ここで一度立ち止まって、安全にAI開発ができることを担保するための新たな規制を作り、それに適合する形で慎重に開発を進めるべきだと提言しているのだ。

 これを今回の中部電力の事件に当てはめると、いわば、「電力会社性善説」を前提に作られた原発規制のルールから電力会社が逸脱し、しかも規制委を欺く形で、不正が行われた。そして、規制委は、それを自らの力で発見することができなかった。運良く内部告発があって、この不正は明るみに出たが、最悪の場合、意図的に低く想定された基準地震動が容認され、本来あるべき耐震設計に基づいた対策が実施されないまま再稼働となった可能性がある。その場合、大きな地震が来たときに、「想定外」の揺れで原発の大事故が起きるリスクがあったということだ。何よりも避けなければならないことを防ぎ得ない可能性が、今回露呈したのだ。
 中部電力では、この不祥事発覚の後も、原発の工事費用の不適切請求問題や、電気料金の過大徴収問題などが次々に明るみに出ており、過大徴収の事件では、少なくとも4人の役職者が問題を認知しながら対処を怠っていたこともわかっている。不祥事のオンパレードである。
 報道では、中部電力の相次ぐ不祥事について、他の大手電力会社の関係者もあきれているという趣旨のコメントが流れているが、それこそお笑い種である。
 中部電力以外の大手電力会社もまた、不祥事といえば数え切れないほどの問題を起こしてきた。東京電力福島第一原発事故の後でさえ、ほとんど全ての大手電力会社で、深刻な不祥事が生じている。しかも、単なるミスではなく、故意にルールを破ったり、不祥事を隠蔽したり、規制当局を欺いたり、市民をだましたり、同じ違反を繰り返したりという悪質な案件があふれている。AIに聞いてみれば、読むのに疲れるほどの事例を教えてくれるので、関心のある方は試していただきたい。
 これらの事例をみれば、原発を保有、運転している事業者は、ほとんど信用できないということがわかる。
 その代表格である中部電力は、今回の事件によって、そのことをあらためて認識させてくれた。

「性悪説」を前提にした規制を見直すべき
 信用してはいけない多くの原発事業者に対して、「電力会社性善説」に立った規制のルールで対応する日本の仕組みは、どう考えてもナンセンスであり、日本を滅亡させるリスクすらある。
 AI開発と原発の運転については、どちらも高度の安全確保が求められる。失敗すれば、どちらも取り返しのつかない事態を招く。さらに、実際に起きてみなければ、どれくらいの大惨事になるのかがわからないという共通点もある。また、確実に大惨事が起きるかと言われれば、そこもよくわからない。運良くたいして大きなことは起きないかもしれない。あるいは、ある程度の被害が起きたところで、厳格な規制が導入されるという道筋もありうる。なんとかなるだろうという根拠のない楽観論に陥りがちなところも、AIと原発は似ているように思える。
 だが、AIについて、開発者たちは、AIに性善説が通用せず、「自分たちのコントロール能力を超えてしまう事態」に至ったことを認識した。もちろん、一つの可能性の認識という段階ではある。そして、前述のとおり、その事態に対応するために、AI開発のスローダウンと新たな規制の導入を提案している。
 これは、日本の原発規制に対しても重要な教訓を与えてくれる。
 原発事業者に性善説が通用せず、「規制委のコントロール能力を超えて悪事を働く」ことがはっきりした。ということは、いま一度、規制の根本的哲学を見直し、性悪説を前提にした新たな規制のあり方を検討すべきだ。そして、それができるまでの間、一度立ち止まり、全ての原発の安全審査を止めるという発想が求められる。
 とりわけ、基準地震動の審査のあり方を今のまま放置すれば、電力会社が、不当に低い数字を出して原発の再稼働を認めさせるということに規制委がだまされる可能性を全く排除できない。現在のように、内部告発頼みの審査など審査とは言えないだろう。
 そもそも、日本の原発の基準地震動については、非常に不可解なことが多い。活断層に関するデータ捏造もあったし、四国電力の伊方原発では、原発直下が南海トラフ地震の震源地になっても、原発の敷地では深刻な揺れは起きないという電力会社の推計がそのまま認められている。こんな大ウソを認める審査など全く信用できないという市民の声が聞こえるが、常識で考えれば、市民の方が正しいことはすぐにわかる。基準地震動を低く抑えるために、なるべく揺れが小さくなる推計方式をとった結果、南海トラフ地震の震源が原発直下となったときでも揺れは深刻なものにはならないというとんでもない結果が出てしまったのだが、これは、裁判で住民側が要求して出てきたものだ。住民が要求しなければ、そんな理不尽なモデルが使われていることなど誰も気づかなかった。

一度「原発再稼働の審査」を止める
 原発の安全は何よりもその耐震性に依存している。それを審査するための基礎である基準地震動を、「電力会社性善説」に基づいて審査する仕組みが破綻していることがはっきりした今、AIに関して提唱されているのと同様に、新たな規制の仕組みの導入を行い、その間、原発再稼働はしばし止める。そして新たな仕組みは、「電力会社性悪説」を前提にしたものとする。
 一日も早く、こうした方針転換を行うべきだ。
 その責任は、規制委にある。今回の不祥事では、規制委自らの無能さが暴かれたが、そのことについては、何らの謝罪も内部処分も行われないままだ。本来なら、規制委の委員長が辞任するくらいの恥ずべき事態ではないのか。
 まずは規制委自らの襟を正すのが第一。
 それと同時に原発規制の新たな規制の仕組みを提案する。
 規制委には、原子力規制委員会設置法第4条第2項に基づき、関係行政機関の長に対して、原子力利用における安全の確保に関する事項について勧告する権限がある。仮に自己の権限の範囲を超えること、例えば、法律改正が必要ならそれを関係の大臣(環境相、経済産業相、文部科学相など)に勧告すれば良い。
 そして、新しい体制が実行できるまでの間は、原発再稼働の審査を止める。見直しの内容いかんによっては、稼働中の原発についても安全審査をやり直すことになる事態も十分にありうる。結果的に、日本中の原発の稼働ができなくなる事態さえ考えられる。
 それを恐れず、抜本的な規制の改革ができなければ、我が国の原発安全規制への信頼を取り戻すことはできないだろう。
 今回の不祥事で失われたのは、中部電力への信頼だけではない。原発事業者である大手電力会社に対する信頼だけでもない。規制委と規制庁という原発の安全規制の責任主体そのものに対する信頼が失われてしまったのだ。
 そのことを決して忘れてはならない。

浜岡原発データ不正問題 東京地検に刑事告発 研究者ら

 浜岡原発の再稼働審査で中部電力がデータを不正に操作していた問題で、30日、研究者らが中部電力の勝野哲会長らについて、審査を早期に完了させ再稼働させる目的でデータを不正に操作し、原子力規制委などの審査業務を妨害したとして偽計業務妨害の疑いで東京地検に刑事告発しました
 代理人弁護士は、「これまでの調査は強制力なしに 行われており限界がある。刑事手続きをもって責任追及されなければならない」と述べました。
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浜岡原発データ不正問題 東京地検に刑事告発 研究者ら
                      日テレNEWS NNN 2026/9/30
静岡県の浜岡原子力発電所の再稼働審査で中部電力がデータを不正に操作していた問題で、研究者らが30日、中部電力幹部らが国の審査業務を妨害したとして、東京地検に刑事告発しました。
この問題は、浜岡原発3号機と4号機の再稼働に向けた安全審査で、中部電力が想定される地震の揺れを意図的に小さく見せて報告していたことが明らかになったものです。
研究者らは30日、都内で会見を行い、中部電力の勝野哲会長らについて、審査を早期に完了させ再稼働させる目的でデータを不正に操作し、原子力規制委員会などの審査業務を妨害したとして偽計業務妨害の疑いで東京地検に刑事告発したことを明らかにしました。
代理人弁護士は、「これまでの調査は強制力なしに 行われており限界がある。刑事手続きをもって責任追及されなければならない、国の安全 に関する問題」だとした上で、「最重要の責任は当時の社長である勝野氏にある」と告発の理由を説明しています。また、「多くの人物が長期間にわたり不正を繰り返してきた」と指摘し、「強制捜査を通して動機や実態を明らかにすべきだ」と訴えています。


浜岡原発データ不正問題めぐり 中部電力会長らを告発 市民や研究者ら
                     テレビ朝日系(ANN) 2026/9/30
"浜岡原発データ不正問題めぐり 中部電力会長らを告発 市民や研究者ら"(All Nippon NewsNetwork(ANN))
浜岡原発の再稼働に向けた審査を巡るデータ改ざん問題で偽計業務妨害の疑いがあるとして、市民団体が中部電力会長らの告発状を東京地検特捜部に提出しました。
河合弘之弁護士
「長期間的にわたって多くの人が組織的に(改ざんを)やっていたことに対する驚きと怒り、これが告発に踏み切った理由だと思います」
 中部電力は浜岡原発3、4号機の再稼働に向けた原子力規制委員会の審査で想定される地震のデータを不正に操作していたことが明らかになり、審査の申請を取り下げています。
 この問題について、研究者や市民らは偽計業務妨害の疑いで勝野哲会長など、中部電力の幹部らの告発状を東京地検特捜部に提出しました。
 告発状では改ざんされたデータをもとに規制委員会に審査をさせ、業務を妨害したとしています。


原発データ不正 中部電力幹部を市民団体が告発
                        ABEMA TIMES 2026/9/30
 浜岡原発の再稼働に向けた審査を巡るデータが改ざん問題で、偽計業務妨害の疑いがあるとして、市民団体が中部電力会長らの告発状を東京地検特捜部に提出しました。
 中部電力は浜岡原発3,4号機の再稼働に向けた原子力規制委員会の審査で、想定される地震のデータを不正に操作していたことが明らかになり、審査の申請を取り下げています。
 この問題について、研究者や市民らは偽計業務妨害の疑いで、勝野哲会長など中部電力の幹部らの告発状を東京地検特捜部に提出しました。
 告発状では、改ざんされたデータをもとに規制委員会に審査をさせ、業務を妨害したとしています。(ANNニュース)


浜岡原発不正問題で告発状 勝野会長ら、偽計業務妨害容疑 市民団体
                            時事通信 2026/9/30
 中部電力浜岡原発(静岡県)の地震想定に関するデータ不正問題で、市民団体らが30日、偽計業務妨害容疑で、同日付で辞任する勝野哲会長らに対する告発状を東京地検に提出したと発表した。
 提出は29日付。
 中部電は2014~15年、浜岡原発3、4号機再稼働の前提となる審査を原子力規制委員会に申請。その後の審査で、想定する地震の揺れ(基準地震動)を策定するのに必要なデータを自社に都合良く集めながら、妥当な手法で行ったかのように装っていた。
 告発対象は会長や氏名不詳の役職員らで、規制委や原子力規制庁の適正な審査業務を妨害したと主張。都内で記者会見した代理人の河合弘之弁護士は「原発の安全の基礎を揺るがす大変な事件だ。刑事責任が追及されるべきだ」と話した。