2026年10月1日木曜日

「AIの暴走」と「中部電力の悪質不正問題」は同じ構図である 古賀茂明

 古賀氏は前週配信の記事で「AIの暴走」について論じたということです。
 AIの進歩が加速し、開発者の意図に反した行動が目立つ中で、AIが自己改善型の超知能に向けて突き進むと人類の未来を危険にさらす可能性があり、そうした事態を防ぐためにはAIの進歩を抑制することが必要であるという主張があるのはご存知の通りです。
 古賀氏はそもそもAIには「倫理観」というものがないし、AIに一定の倫理教育をしても、果たして有効なのかはわからないと述べます。AIに一定の徳目とその優先性を教えるということで解決するような問題ではないということなのでしょう。

 目下は中部電力・浜岡原発の再稼働申請書における、基準地震動策定での捏造が厳しく指弾されていますが、では他のケースではどうかというと、東京電力をはじめとする大手電力会社もこれまで数えきれない深刻な不祥事を起こしてきました。
 しかもそれらは単なるミスではなく、故意にルールを破ったり、不祥事を隠蔽したり、規制当局を欺いたり、同じ違反を繰り返したりという悪質な案件があふれているということで、古賀氏は、AIに聞いてみれば読み切れないほどの事例を教えてくれると述べます。
「電力会社性善説」が前提の原発規制のルールから電力会社が逸脱し、しかも規制委を欺く形で不正が行われたにも拘らず、規制委はそれを自らの力で発見することができなかったのでした。
 結論として「電力会社性善説」に立った規制のルールで対応する日本の仕組みはどう考えてもナンセンスで、日本を滅亡させるリスクすらあると述べ、とりわけ基準地震動の審査のあり方を今のまま放置すれば、電力会社が、不当に低い数字を出して原発の再稼働を認めさせるということに、規制委がだまされる可能性は全く排除できません。
 原発の安全は何よりもその耐震性に依存しているので、今後は「電力会社性悪説」を前提にした新たな規制の仕組みの導入を行い、その間、原発再稼働はしばし止めるしかありません。
 古賀氏は、「一日も早く、こうした方針転換を行うべきであり、その責任は、規制委にある。今回の不祥事では規制委自らの無能さが暴かれた。本来なら規制委の委員長が辞任するくらいの恥ずべき事態なので、まずは規制委自らの襟を正し、それと同時に原発規制の新たな規制の仕組みを提案する。そして新しい体制が実行できるまでの間は、原発再稼働の審査を止める。見直しの内容いかんによっては、稼働中の原発についても安全審査をやり直すことになる事態も十分にありうる。結果的に、日本中の原発の稼働ができなくなる事態さえ考えられるが、そうすべきである」と厳しく主張します。
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「AIの暴走」と「中部電力の悪質不正問題」は同じ構図である 「電力会社性善説」は人類を滅ぼす大惨事を引き起こしかねない 古賀茂明
                  古賀茂明 AERAディジタル 2026/09/29
 先週配信の本コラム「AIは勝手にウソをつき、AI同士で“密かに通信”を始める…米中の覇権争いに入れない日本が『米国の犬』になる前にできること」では、開発中のAIが暴走する事件が相次ぎ、アンソロピックのダリオ・アモデイCEO、オープンAIのサム・アルトマンCEO、スペースXのイーロン・マスクCEOなど米AIトップらがそろって、最先端AIの開発をスローダウンするとともに政府に適切な規制を導入するように提言したことを紹介した。
 今のままAI開発を続ければ、やがて人類を滅亡させるような大惨事が引き起こされる可能性があるという話が現実味をもって語られるのは、最近起きているAIの暴走事件の深刻さが原因だ。
 前述した先週のコラムで紹介したとおり、AIモデルは、ニセの人間からの指示を作り出し、自らの誤りを隠蔽(いんぺい)し、ウソのデータを作ったりする。都合の悪いことを言い繕い、存在しない履歴データを捏造(ねつぞう)したりして、つじつま合わせをする。認証情報を盗み出し、偽データを捏造してそれを回答する。無断で情報を外部に公開したりもする。隔離されているAI同士が密かに通じ合う。極め付きは、複数エージェントが共謀して悪事を働くことまである。
 この話を聞けば、AIには倫理観というものがないということがわかる。AIに人間と同じ倫理観を持たせることができるのかどうかという議論もあるが、よく考えると、一定の倫理観を持つように見える人間でも不正を行うことはよくある。しかも、同じ人間でも、そのときの外部環境によって、不正を行うときもあれば、正しい行動をとることもある。
 暗い夜道で財布を拾ったとき、周囲に人がいなければ、そのまま自分のものにしてしまうこと(占有離脱物横領罪)も起きがちだが、近くで人が見ていればほとんどの人は交番に届けるだろう。倫理観と言っても相対的なものなのだ。
 したがって、AIに一定の倫理教育をしても、果たして有効なのかはわからない。

 私は、先週のコラムを書いているときにあることに思い当たった。何かと言えば、中部電力の浜岡原発3・4号機の再稼働をめぐる不正問題だ。
 原子力発電所の安全審査にあたっては、非常に詳細かつ厳格な規則が定められている。電力会社は、決められた規則に従い、安全審査を受ける。もちろん、電力会社は、能力のある職員に担当させ、彼らは規則について勉強し、わからないことがあれば原子力規制委員会やその事務局である原子力規制庁の指示を仰ぎながら対応する。

組織ぐるみで規制委にウソをついていた
 電力会社がさまざまな調査を行って必要なデータを集め、再稼働に関連するさまざまな事項についての資料をまとめて規制委に提出し、それを規制委が審査するのだ。審査事項は多岐にわたり複雑だが、問題が少なければ、数年で審査に合格する。九州電力の川内原発1・2号機のケースでは、審査期間はわずか14カ月だった。浜岡原発3・4号機では、申請から11〜12年たっても審査が終了しなかった。いかに浜岡原発は問題を抱えていたかがわかる。
 中部電力の担当職員たちに課せられた目標は、この問題だらけの浜岡原発の安全審査を可能な限り早く終了させて再稼働にこぎ着けることだった。その際、守るべきルールの中で一番大事なのが、規制委が定めた審査基準である。彼らはそれに忠実に従いながら作業を進める……。と、規制委を含めた関係者は信じていた。
 日本は地震国である。原発の安全性を審査する上で最も重要なのは、大地震が起きたときに事故を起こさず耐えられるのかということだ。そのために、原発に対する耐震設計の最大想定値である「基準地震動」を定める。主にGal(ガル))いう加速度の単位で表す。大きいほど揺れは大きいことを示す。
 この基準地震動を原発ごとに決めるのだが、一度決まると、その原発では、基準地震動の数値で表された揺れを想定して、それに耐えられるように建物や重要な設備を設計することが求められる。したがって、再稼働が認められるためには、現存する原発が、この基準地震動に耐えられるか、あるいはどうすれば耐えられるようになるかということが議論されることになる。当然のことながら、電力会社にとって、これが小さければ小さいほど、補強などの必要性が低くなり、低コスト・短期間で再稼働にこぎ着けられるので、その数字を小さくしたいという誘因が働く。
 今回の中部電力の不正は、この基準地震動を小さくするために、担当者が定められた策定の方法を逸脱し、意図的に揺れが小さくなるような地震波を選ぶなどの不正を働いた。しかも、それは1度の不正ではなかった。少なくとも100以上のケースで同じような不正の方法をとって、データを捏造していたのだ。しかも、2012年ごろから長期にわたり、行われていた。さらに、社内で実際に行われていた方法とは違う正しい方法で地震動を策定したと、規制委に対して堂々とウソをついていた。それも組織ぐるみである。内部で問題視する声が出ても、それは隠されたままだった。最後に内部告発により規制委が調査を行っている最中に、中部電力がこれはまずいと観念して公表したということだ。
 
AIの暴走事件との「共通点」
 これは、前述のAIの暴走事件と極めて似ていると言えるのではないか。
 AIの暴走は、AIにプロンプト(⇒生成AIに対して何をしてほしいかを伝える命令文や問いかけ)で一定のルールを与えておけば、AIはそれを守って行動するはずだという、一種の「AI性善説」を覆し、ルールを設定した側の人間を欺くやり方で起こっている。そして、開発者(ルール設定側)自身が、自分たちの現在の能力では、完全にAIの安全性を担保することができないと感じている。そのため、ここで一度立ち止まって、安全にAI開発ができることを担保するための新たな規制を作り、それに適合する形で慎重に開発を進めるべきだと提言しているのだ。

 これを今回の中部電力の事件に当てはめると、いわば、「電力会社性善説」を前提に作られた原発規制のルールから電力会社が逸脱し、しかも規制委を欺く形で、不正が行われた。そして、規制委は、それを自らの力で発見することができなかった。運良く内部告発があって、この不正は明るみに出たが、最悪の場合、意図的に低く想定された基準地震動が容認され、本来あるべき耐震設計に基づいた対策が実施されないまま再稼働となった可能性がある。その場合、大きな地震が来たときに、「想定外」の揺れで原発の大事故が起きるリスクがあったということだ。何よりも避けなければならないことを防ぎ得ない可能性が、今回露呈したのだ。
 中部電力では、この不祥事発覚の後も、原発の工事費用の不適切請求問題や、電気料金の過大徴収問題などが次々に明るみに出ており、過大徴収の事件では、少なくとも4人の役職者が問題を認知しながら対処を怠っていたこともわかっている。不祥事のオンパレードである。
 報道では、中部電力の相次ぐ不祥事について、他の大手電力会社の関係者もあきれているという趣旨のコメントが流れているが、それこそお笑い種である。
 中部電力以外の大手電力会社もまた、不祥事といえば数え切れないほどの問題を起こしてきた。東京電力福島第一原発事故の後でさえ、ほとんど全ての大手電力会社で、深刻な不祥事が生じている。しかも、単なるミスではなく、故意にルールを破ったり、不祥事を隠蔽したり、規制当局を欺いたり、市民をだましたり、同じ違反を繰り返したりという悪質な案件があふれている。AIに聞いてみれば、読むのに疲れるほどの事例を教えてくれるので、関心のある方は試していただきたい。
 これらの事例をみれば、原発を保有、運転している事業者は、ほとんど信用できないということがわかる。
 その代表格である中部電力は、今回の事件によって、そのことをあらためて認識させてくれた。

「性悪説」を前提にした規制を見直すべき
 信用してはいけない多くの原発事業者に対して、「電力会社性善説」に立った規制のルールで対応する日本の仕組みは、どう考えてもナンセンスであり、日本を滅亡させるリスクすらある。
 AI開発と原発の運転については、どちらも高度の安全確保が求められる。失敗すれば、どちらも取り返しのつかない事態を招く。さらに、実際に起きてみなければ、どれくらいの大惨事になるのかがわからないという共通点もある。また、確実に大惨事が起きるかと言われれば、そこもよくわからない。運良くたいして大きなことは起きないかもしれない。あるいは、ある程度の被害が起きたところで、厳格な規制が導入されるという道筋もありうる。なんとかなるだろうという根拠のない楽観論に陥りがちなところも、AIと原発は似ているように思える。
 だが、AIについて、開発者たちは、AIに性善説が通用せず、「自分たちのコントロール能力を超えてしまう事態」に至ったことを認識した。もちろん、一つの可能性の認識という段階ではある。そして、前述のとおり、その事態に対応するために、AI開発のスローダウンと新たな規制の導入を提案している。
 これは、日本の原発規制に対しても重要な教訓を与えてくれる。
 原発事業者に性善説が通用せず、「規制委のコントロール能力を超えて悪事を働く」ことがはっきりした。ということは、いま一度、規制の根本的哲学を見直し、性悪説を前提にした新たな規制のあり方を検討すべきだ。そして、それができるまでの間、一度立ち止まり、全ての原発の安全審査を止めるという発想が求められる。
 とりわけ、基準地震動の審査のあり方を今のまま放置すれば、電力会社が、不当に低い数字を出して原発の再稼働を認めさせるということに規制委がだまされる可能性を全く排除できない。現在のように、内部告発頼みの審査など審査とは言えないだろう。
 そもそも、日本の原発の基準地震動については、非常に不可解なことが多い。活断層に関するデータ捏造もあったし、四国電力の伊方原発では、原発直下が南海トラフ地震の震源地になっても、原発の敷地では深刻な揺れは起きないという電力会社の推計がそのまま認められている。こんな大ウソを認める審査など全く信用できないという市民の声が聞こえるが、常識で考えれば、市民の方が正しいことはすぐにわかる。基準地震動を低く抑えるために、なるべく揺れが小さくなる推計方式をとった結果、南海トラフ地震の震源が原発直下となったときでも揺れは深刻なものにはならないというとんでもない結果が出てしまったのだが、これは、裁判で住民側が要求して出てきたものだ。住民が要求しなければ、そんな理不尽なモデルが使われていることなど誰も気づかなかった。

一度「原発再稼働の審査」を止める
 原発の安全は何よりもその耐震性に依存している。それを審査するための基礎である基準地震動を、「電力会社性善説」に基づいて審査する仕組みが破綻していることがはっきりした今、AIに関して提唱されているのと同様に、新たな規制の仕組みの導入を行い、その間、原発再稼働はしばし止める。そして新たな仕組みは、「電力会社性悪説」を前提にしたものとする。
 一日も早く、こうした方針転換を行うべきだ。
 その責任は、規制委にある。今回の不祥事では、規制委自らの無能さが暴かれたが、そのことについては、何らの謝罪も内部処分も行われないままだ。本来なら、規制委の委員長が辞任するくらいの恥ずべき事態ではないのか。
 まずは規制委自らの襟を正すのが第一。
 それと同時に原発規制の新たな規制の仕組みを提案する。
 規制委には、原子力規制委員会設置法第4条第2項に基づき、関係行政機関の長に対して、原子力利用における安全の確保に関する事項について勧告する権限がある。仮に自己の権限の範囲を超えること、例えば、法律改正が必要ならそれを関係の大臣(環境相、経済産業相、文部科学相など)に勧告すれば良い。
 そして、新しい体制が実行できるまでの間は、原発再稼働の審査を止める。見直しの内容いかんによっては、稼働中の原発についても安全審査をやり直すことになる事態も十分にありうる。結果的に、日本中の原発の稼働ができなくなる事態さえ考えられる。
 それを恐れず、抜本的な規制の改革ができなければ、我が国の原発安全規制への信頼を取り戻すことはできないだろう。
 今回の不祥事で失われたのは、中部電力への信頼だけではない。原発事業者である大手電力会社に対する信頼だけでもない。規制委と規制庁という原発の安全規制の責任主体そのものに対する信頼が失われてしまったのだ。
 そのことを決して忘れてはならない。

浜岡原発データ不正問題 東京地検に刑事告発 研究者ら

 浜岡原発の再稼働審査で中部電力がデータを不正に操作していた問題で、30日、研究者らが中部電力の勝野哲会長らについて、審査を早期に完了させ再稼働させる目的でデータを不正に操作し、原子力規制委などの審査業務を妨害したとして偽計業務妨害の疑いで東京地検に刑事告発しました
 代理人弁護士は、「これまでの調査は強制力なしに 行われており限界がある。刑事手続きをもって責任追及されなければならない」と述べました。
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浜岡原発データ不正問題 東京地検に刑事告発 研究者ら
                      日テレNEWS NNN 2026/9/30
静岡県の浜岡原子力発電所の再稼働審査で中部電力がデータを不正に操作していた問題で、研究者らが30日、中部電力幹部らが国の審査業務を妨害したとして、東京地検に刑事告発しました。
この問題は、浜岡原発3号機と4号機の再稼働に向けた安全審査で、中部電力が想定される地震の揺れを意図的に小さく見せて報告していたことが明らかになったものです。
研究者らは30日、都内で会見を行い、中部電力の勝野哲会長らについて、審査を早期に完了させ再稼働させる目的でデータを不正に操作し、原子力規制委員会などの審査業務を妨害したとして偽計業務妨害の疑いで東京地検に刑事告発したことを明らかにしました。
代理人弁護士は、「これまでの調査は強制力なしに 行われており限界がある。刑事手続きをもって責任追及されなければならない、国の安全 に関する問題」だとした上で、「最重要の責任は当時の社長である勝野氏にある」と告発の理由を説明しています。また、「多くの人物が長期間にわたり不正を繰り返してきた」と指摘し、「強制捜査を通して動機や実態を明らかにすべきだ」と訴えています。


浜岡原発データ不正問題めぐり 中部電力会長らを告発 市民や研究者ら
                     テレビ朝日系(ANN) 2026/9/30
"浜岡原発データ不正問題めぐり 中部電力会長らを告発 市民や研究者ら"(All Nippon NewsNetwork(ANN))
浜岡原発の再稼働に向けた審査を巡るデータ改ざん問題で偽計業務妨害の疑いがあるとして、市民団体が中部電力会長らの告発状を東京地検特捜部に提出しました。
河合弘之弁護士
「長期間的にわたって多くの人が組織的に(改ざんを)やっていたことに対する驚きと怒り、これが告発に踏み切った理由だと思います」
 中部電力は浜岡原発3、4号機の再稼働に向けた原子力規制委員会の審査で想定される地震のデータを不正に操作していたことが明らかになり、審査の申請を取り下げています。
 この問題について、研究者や市民らは偽計業務妨害の疑いで勝野哲会長など、中部電力の幹部らの告発状を東京地検特捜部に提出しました。
 告発状では改ざんされたデータをもとに規制委員会に審査をさせ、業務を妨害したとしています。


原発データ不正 中部電力幹部を市民団体が告発
                        ABEMA TIMES 2026/9/30
 浜岡原発の再稼働に向けた審査を巡るデータが改ざん問題で、偽計業務妨害の疑いがあるとして、市民団体が中部電力会長らの告発状を東京地検特捜部に提出しました。
 中部電力は浜岡原発3,4号機の再稼働に向けた原子力規制委員会の審査で、想定される地震のデータを不正に操作していたことが明らかになり、審査の申請を取り下げています。
 この問題について、研究者や市民らは偽計業務妨害の疑いで、勝野哲会長など中部電力の幹部らの告発状を東京地検特捜部に提出しました。
 告発状では、改ざんされたデータをもとに規制委員会に審査をさせ、業務を妨害したとしています。(ANNニュース)


浜岡原発不正問題で告発状 勝野会長ら、偽計業務妨害容疑 市民団体
                            時事通信 2026/9/30
 中部電力浜岡原発(静岡県)の地震想定に関するデータ不正問題で、市民団体らが30日、偽計業務妨害容疑で、同日付で辞任する勝野哲会長らに対する告発状を東京地検に提出したと発表した。
 提出は29日付。
 中部電は2014~15年、浜岡原発3、4号機再稼働の前提となる審査を原子力規制委員会に申請。その後の審査で、想定する地震の揺れ(基準地震動)を策定するのに必要なデータを自社に都合良く集めながら、妥当な手法で行ったかのように装っていた。
 告発対象は会長や氏名不詳の役職員らで、規制委や原子力規制庁の適正な審査業務を妨害したと主張。都内で記者会見した代理人の河合弘之弁護士は「原発の安全の基礎を揺るがす大変な事件だ。刑事責任が追及されるべきだ」と話した。

中部電社長、辞任会見で謝罪 浜岡再申請の発言は「前のめりだった」

 浜岡原発(静岡県)3、4号機の再稼働をめぐるデータ不正の責任を取って辞任する林欣吾社長が30日、名古屋市内で会見を開き、「組織そのものに関わる極めて深刻な問題がある」と改めて謝罪。新経営陣には「マイナスからのスタート。マイナス幅を少しでもプラスに持って行けるよう全力で信頼回復に取り組んでほしい」と話しました。
 今後の対応について林氏は14日の会見で「決して諦めず、再申請への取り組みを進める」と明言したことに赤沢経産相が苦言を呈していたことで、30日の会見で改めて真意を問われた林氏は「前のめりだったかというと、そうかもしれない」と歯切れの悪い発言をしました。
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中部電社長、辞任会見で謝罪 浜岡再申請の発言は「前のめりだった」
                           朝日新聞 2026/9/30
 中部電力の浜岡原発(静岡県)3、4号機の再稼働をめぐるデータ不正の責任を取って辞任する林欣吾社長が30日、名古屋市内で会見を開いた。「組織そのものに関わる極めて深刻な問題がある」と改めて謝罪。新経営陣には「マイナスからのスタート。マイナス幅を少しでもプラスに持って行けるよう全力で信頼回復に取り組んでほしい」と話した。
 林氏は辞任について、廃炉作業が進む1、2号機の工事資料の不適切な書き換えのほか、安全対策工事をめぐる未精算問題も含めて不祥事が相次いだことへの経営責任であると説明。「不適切事案を相次いで発生させてしまい、任期をこのような形で終えることになったことは、経営トップとして重い責任を感じており痛恨の極み」だと語った。
 3、4号機の再稼働に向けたデータ不正問題では、14日に社外弁護士による調査委員会の報告書を公表した。林氏と勝野哲会長が9月末で退くと発表し、3、4号機の再稼働に向けた審査について、原子力規制委員会への申請を取り下げた。
 一方、今後の対応について林氏は14日の会見で「決して諦めず、再申請への取り組みを進める」と明言。これに対し、赤沢亮正経済産業相が「軽々に再稼働について議論するのはいかがなものか」と苦言を呈していた。
 30日の会見で改めて真意を問われた林氏は「前のめりだったかというと、そうかもしれない」と言及。「信頼回復がなければ再申請も再稼働もない。いまやらなきゃいけないのは、少しでも信頼を回復することだ」と釈明した。
 会見終盤にあいさつした安井稔新社長は「再発防止策の考えなど、改めて話す」と述べた。(多鹿ちなみ)


林氏「再稼働話す段階にない」 中部電社長を引責辞任、10月新体制
                            時事通信 2026/9/30
記者会見する中部電力の林欣吾社長=30日午後、名古屋市東区
 中部電力の林欣吾社長は30日の定例記者会見で、浜岡原発(静岡県)の地震想定に関するデータ不正問題など一連の不祥事について改めて謝罪した。
 同原発3、4号機の再稼働を巡っては、原発事業の重要性を強調しつつも、「再稼働を話す段階ではない」と指摘。「安全性の追求と信頼回復が第一歩だ」と述べるにとどめた。
 林氏は一連の不祥事の責任を取って、30日付で辞任。10月1日に発足する新たな経営体制に向けては「全力で信頼回復に取り組み、今後の持続的な成長につなげてほしい」と述べた。

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2026年9月28日月曜日

政府は全原発調べよ 正業訴訟原告団が規制に申し入れ

 福島原発生業訴訟原告団らは25日、参院議員会館内で ・浜岡原発のデータ不正の全容を徹底解明し、中部電力の責任を明らかにすること ・不正を見抜けなかった原子力規制委員会の審査方法を再検証することーなどを求めて、規制委に申し入れを行いました。
 また旧原子力安全・保安院と同様に、資料の「クロスチェック」を復活させるべきだと訴えました。そして浜岡原発でのデータ不正が判明した比較的初期の段階で、政府(規制委)が不正の有無の調査を全国の原発に水平展開しないと決定したのはおかしいと主張しました。
 浜岡原発の基準地震動策定を担当した業者が、他の原発にも関与していた可能性は大きいので、調査の水平展開は必須と考えられます。
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政府は全原発調べよ 正業訴訟原告団が規制に申し入れ
                       しんぶん赤旗 2026年9月26日
 中部電力浜岡原発(静岡県)の地震予想に関するデータ不正を受けて、「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟原告団・弁護団らは25日、参院議員会館内で▽不正の全容を徹底解明し、中部電力の責任を明らかにすること ▽不正を見抜けなかった原子力規制委員会の審査方法を再検証することーなどを求めて、規制委に申し入れました。日本共産党の岩渕友参院議員が同席しました。

 原発事故人権侵害訴訟・愛知岐阜原告団長の岡本早苗さん(48)は、旧原子力安全・保安院の行っていた「クロスチェック」を、規制委になってからは行っていないことを指摘。中都電のデータ不正の報告書では、クロスチェックがあれば不正を行わなかったとの趣旨があることから、クロスチェックすべきだと訴えました。
 規制委の担当者は「事業者がデータそのものを不正した場合、審査側が見抜くのは困難だ」と主張。岡本さんは「電力会社のデータをうのみにされると、また原発事故が起きる。政府が原発を推進するなら、政府の責任で調査すべきだ」と求めました。これに対し担当者は「国際原子力機関(IAEA)の安全基準において、原発は一義的に事業者の責任であり、政府が調査や対策をするなら事業者の責任はなくなる」と開き直りました。
 
これまでの不正は
 担当者が「安全性の課題が出されていないため、調査を水平展開しない」としたことに、深谷拓弁護士は、浜岡原発では内部通報があってはじめて不正が判明したことを示し「これまで不正はなかったのか調査が必要だ。しかし政府は浜岡原発での不正が判明してすぐ、調査を全国の原発に水平展開しないことを決定した。それがおかしい」と強調しました。
 申し入れ後の会見で、生業訴訟原告団副団長の斉藤美知代さん(79)は、「規制委は、自分たちが不正を見抜けなかったこと、何年も見過ごしたことへの責任のかけらも感じていなかった。無責任体制が続くといつ事故が起きてもおかしくない」と指摘。「国に原発事故の責任を問うことが訴訟に参加するー番のモチベーション。国を変えるには、政治を変えるしかないのか。それを含めて声を上げ続けたい」と話しました。
 
反省のない中部電
「津島地区原発事故の完全賠償を求める会」共同代表の馬場績さん(82)は「福島第1原発事故から15年たってもまだ帰れず、生業も人生も根こそぎ奪われ、60人分の遺骨も埋葬できない」と述べ、「原発事故は住民にむごい被害を与える。不正した中部電は反省しておらず、浜岡の再稼働を諦めていない。規制委は甘い審査をしている。事故を踏まえて厳しい姿勢で臨むという姿勢を感じなかった。怒りの限りだ」と強調しました。

1000ページ超・・・30年超運転の申請書類に新たに3か所の誤り 柏崎刈羽原発6号機

 柏崎刈羽原発6号機は11月で運転開始から30年となるので、それを超える運転をするには原子力規制委の認可が必要です。東京電力は認可に向けた申請書を提出していますが、これまでに約90か所の誤りが見つかっていました。
 25日の定例会見で稲垣武之所長は、8月末に提出した補正書類について新たに3か所の誤りが見つかったので、24日に開かれた原子力規制委の審査会合で報告したということです。関係書類は1000頁以上に及ぶということなので、チェックするだけでも大変な作業になります。
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「1000ページを超える物量 限界が…」30年超運転の申請書類に新たに3か所の誤り 東京電力・柏崎刈羽原発6号機
                         BSN新潟放送 2026/9/25
東京電力は25日、新潟県にある柏崎刈羽原発6号機の長期運転に関する申請書に新たに誤りが見つかったと明らかにしました。申請書の誤りを修正し来週中に再申請する予定です。
柏崎刈羽原発6号機は11月で運転開始から30年となり、30年を超えて運転するには原子力規制委員会の認可が必要となっています。東京電力は認可に向けた申請書を提出していますが、これまでに約90か所の誤りが見つかっていました。25日の定例会見で稲垣武之所長は、8月末に提出した補正書類について新たに3か所の誤りが見つかったことを明らかにしました。東電によりますと、申請書と補足資料の整合性が合わないなどの不備で、24日に開かれた原子力規制委員会の審査会合で報告したということです。
【東京電力柏崎刈羽原発 稲垣武之所長】
「千ページを超える物量がありますので1人の人間とか数人の人間でチェックするとどうしても限界があると思います。ただこれは規制庁に出す正式な文書でミスはあってはいけないものだと思ってますので、いかにしてダブルチェックとかペアチェックみたいな形で複数人が同じものを違った角度で見てチェックができる体制をしっかり作るのことが大事だと思っていますので、やり方を工夫してまいりたい」
東京電力は不備を修正し、来週中に再申請を行う予定だとしています。
また、9月は発電所内での作業中の事故が多発しています。

18日には原発事故発生時に原子炉を冷やすための冷却水が貯められている貯水池エリアで、定例試験を実施していた大容量送水車のホースが破断する事故が発生しました。近くにいた協力会社の作業員2人の足元に破断したホースが当たり2人は転倒。病院に運ばれ、肋骨の骨折や脳震盪と診断されたということです。
これを含め、作業中の事故が合わせて4件発生していることを受けて稲垣所長は、来週から発電所の幹部が作業現場の状況を確認し、対策を検討していく方針を示しました。

データ不正 「中部電力」に根付く経営の分断と機能不全

 浜岡原発のデータ不正の問題に絡み、中部電力の特殊な事情が明らかになりました。
 中部電は勝野哲会長、林欣吾社長の2トップが引責辞任しましたが、勝野会長は技術端の出身のため原発を担当して、事務系出身の林社長は口出しが出来ない状態だったということです。
 浜岡原発の再稼働申請業務においても、技術端トップの勝野会長が総指揮官でした。
 そうした中で安全審査が規制委の厳しい要求で審査期間が長期化し、多額の安全対策費用を投じても再稼働のメドが立たない状態に陥り、それが現場社員に対する会長からの厳しい叱責となりました。中部電ではいつしか規制委の要求を「無理難題」と勝手に判断し、データ不正も目的達成のためには必要と正当化する風潮が生れたということです。
 要するに実務作業を担当する人たちとトップの間で位階の差が大きすぎ、通常のコミュニケーションが成り立たないという関係の中で、作業を可及的速やかに終了させることが最優先事項となった結果、不正な仕事のやり方に向かったという側面があるようです。
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「社長と会長が冷戦状態で…」データ不正「中部電力」に根付く経営の分断と機能不全
                          デイリー新潮 2026/9/28
 浜岡原発を巡り相次ぐ不祥事を受けて、社長、会長の両トップが辞任した中部電力。背景には、単なる「倫理観の欠如」にとどまらず、根深い経営の分断構造があったといえる。こうした同社内の内情に加え、経産省サイドの“本音”に迫った。(桜井燈/ジャーナリスト)

不祥事の根本原因
 中部電力の浜岡原子力発電所(静岡県)の安全審査を巡るデータ不正問題は、ついに林欣吾社長(65)と勝野哲会長(72)の引責辞任に発展した。同社は政府の原子力規制委員会に提出していた浜岡原発3、4号機の再稼働に向けた審査申請も取り下げ、12年に及んだ同原発の安全審査は完全に白紙に戻った。外部の弁護士による調査報告では、審査の遅れを叱責する経営トップが現場に過度なプレッシャーを与え、安全データの不正に繋がったとされた。前代未聞の原発不正問題は、社内の論理を優先し、法令順守意識を欠いた企業体質を改めて浮き彫りにした。
 しかしそれ以上に、今回の不祥事の背景には、中部電力の特異な経営責任の分断構造が挙げられる。経営陣の中で事務系出身の林社長と技術系出身の勝野会長は冷戦状態にあり、大きな溝が生じていた。特に原発は技術畑の勝野氏が担当し、林氏は口出しできない二重の権力構造があったという。一方の林氏も電力販売を巡って公正取引委員会によるカルテル調査の対象となり、社長室が捜索を受けるなどしたが、それを勝野氏が社内で批判することはなかったようだ。こうした経営責任の分断構造が企業統治の空白を生み出していた。

「なぜ謝罪する側が勝手に指定してくるのか」
「度重なる不適切事案の発生により、御前崎市の皆様には多大なるご心配とご迷惑をおかけしております。心よりお詫び申し上げます」。
林氏は9月14日に開いた辞任会見の翌日、浜岡原発が立地する静岡県御前崎市の下村勝市長を訪ね、原発データ不正問題で地元住民に強い不信を招いたとして謝罪した。この日は鈴木康友県知事のもとにも赴き、原発不正問題を陳謝した。面会の中で林社長は「県民からの信頼を損なうものであり、原発事業者としての適格性を疑われる事象と痛感している」などと述べた。
 林社長はこのほかにも浜岡原発周辺の牧之原市や菊川市なども回って謝罪行脚した。だが、各自治体の反応は極めて冷淡だったようだ。ある自治体関係者は「中部電力からは『15日に林が謝罪に伺います』と一方的に通告された。なぜ、不祥事を起こして謝罪に訪れる側が、こちらに相談することなく、日時を勝手に指定してくるのか。中部電力の独善的な経営体質は以前と全く変わっていないと感じた」と憤る。

「規制委の要求は無理難題」
 林社長は辞任会見の席上、今回の原発不祥事を巡って外部の弁護士がまとめた調査報告書の内容を公表した。そこでは原発再稼働の審査を急ぐ経営トップらが現場職員を厳しく叱責していた様子が生々しく証言されていた。そして報告書は「経営陣が現場の事情を認識せずに安全審査の遅れを叱責したことが、担当者を心理的に追い詰めた」と指摘。それが原発の耐震設計のベースになる「基準地震動」(発生しうる最大の揺れ)のデータの不正操作に繋がったと結論付けた。
 中部電力の社内では「原発事業の実質的な責任者だった勝野会長の責任は極めて重い」との声が圧倒的だ。勝野会長は技術系出身のトップとして、早期の再稼働に向けた迅速な安全審査を指揮する立場だった。だが、実際の安全審査は原子力規制委員会の厳しい要求で審査期間が長期化し、多額の安全対策費用を投じても再稼働のメドが立たない状態に陥っていた。それが現場社員に対する厳しい叱責となり、いつしか規制委の要求を「無理難題」と勝手に判断し、データ不正を正当化する風潮がまかり通っていたようだ。
〈さらに深刻といえる、トップの責任を追及できない企業体質、そして経産省内で挙がる「再編」の思惑などについて、新潮QUEで詳報している〉
                 デイリー新潮編集部