花角知事は21日、臨時の記者会見を開き、避難路の整備などに取り組むことを前提に柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働を容認すると表明しました。
同知事は昨年3月、避難路の整備、除排雪体制の強化、東電の信頼性の確保など7項目で国の対応を確認した上で、再稼働の要請を「了解する」としていました。
自らの今回の判断について、これまで「県民の意思を確認する」と言ってきましたが、今回は「県議会に信任を得られるか、不信任とされるのか判断を仰ぎたい」としました。
これは驚くべきことで、県議会が再稼働に賛成であることは明らかなことなので、議会の賛成を得ることが「県民の信を問う」ことになるのであれば、これまで仰々しく「県民の信を問う」と表明してきたことは、一体何であったのかということになります。
また県民意識調査では、再稼働の条件が「整っているとは思わない」が60%、「どのような対策を行ったとしても再稼働すべきでない」が48%、「東電が同原発を運転することは心配だ」は69%もあり、県民は再稼働を認めていません。
そうした実態を無視したまま、しかも6本の新設避難道路や豪雪対策、地震対応策が『未完了』の状態で、「再稼働する」などはあり得ないことです。
知事は再稼働を認めるに当たり何よりもこの点を明確にすべきです。
そもそも地域住民の避難では、住民の避難にはバス 1千台以上を要するとなっていますが、県の避難計画には実際に準備できるバスの数は記されておらず、「バスが不足する場合は自衛隊の応援を要請する」という「文言が並んでいるだけ」です。
これでは30キロ圏内の住民に対して本当に3日以内に、5キロ圏内住民には即時に、それぞれ必要台数が利用できるのか全く不明です。実際にはかなりの日数が掛かる恐れがあります。
また豪雪時の原発事故や地震・津波時の原発事故において、5キロ圏内や30キロ圏内の住民の家屋が放射能防護に堪えるものであるかの検討もされていません。単に「家屋が自宅退避に堪えない」場合には「公共の避難所に退避する」という「言い逃れの文言」が並んでいるのみです。
それでは収容が必要な全対象者が収容できる避難所が、適切な規模と適切な配置で準備されているのでしょうか。バスの件と同様に、そうした具体的な検討がされたという情報は何もありません。
まず知事、県、議会は「そうした対策が全て完了した後でなければ原発は再稼働できない」ということを認識するべきです。何故ならそれが完了するまでの間は原発事故が起きないという保証は何もないからです。
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柏崎刈羽再稼働 知事が容認 東電原発 福島事故後で初
新潟県民「何を学んだのか」
しんぶん赤旗 2025年11月22日
新潟県の花角英世知事は21日、臨時の記者会見を開き、避難路の整備などに取り組むことを前提に東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)の再稼働を容認すると表明しました。再稼働すれば、2011年3月に事故を起こした東電の原発として初めてとなります。事故は収束せず、廃炉の見通しも立っておらず、東電自体の不祥事も絶えない中、県民などから「事故の教訓から何を学んだのか」と批判の声が上がっています。
会見で花角知事は昨年3月、経済産業相から再稼働への「理解要請」を受けていたとして、原発の必要性や安全性の説明、避難路の整備、除排雪体制の強化、東電の信頼性の確保など7項目で国の対応を確認した上で、要請を「了解する」としました。
また、柏崎刈羽原発の再稼働が重要だなどとする国の方針を「理解できる」としました。
同県が実施した再稼働に関する県民意識調査で県民の中で賛否が分かれています。これについては、安全対策・防災対策が周知されれば再稼働に肯定的な人が増えると判断したと述べました。
自らの今回の判断後について、これまで「県民の意思を確認する」といってきましたが、「県議会の信任を得られるか、不信任とされるのか判断を仰ぎたい」としました。しかし、県議会は知事与党の自民党が単独過半数を占めています。これが県民の意思の確認と言えるのか、批判の声が上がるのは必至です。
政府は2月に閣議決定した「第7次エネルギー基本計画」で「既設炉の最大限活用」を打ち出し、同原発の再稼働へ向けて「政府を挙げて対応」と明記。原発から避難するための道路を地方の負担なく整備すると県議会で表明するなどしています。
柏崎刈羽原発は1~7号機あり、いずれも福島第1原発と同じ沸騰水型(BWR)。東電は同原発6号機を優先して再稼働させる方針で、技術的な準備は整ったとしています。県議会は12月2日に開会します。
柏崎刈羽再稼働は「言語道断」 山添政策委員長「福島生業再建道半ば」
しんぶん赤旗 2025年11月22日
日本共産党の山添拓政策委員長は21日、国会内で記者会見し、新潟県の花角英世知事が東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働を容認したことについて、「言語道断だ」と批判しました。
山添氏は、東電による福島第1原発事故の被害補償や、ふるさとの生業(なりわい)再建はまだ道半ばだと指摘。「福島をはじめ多くの人びとに対し、その責任がまだ問われている最中に原発の再稼働に及ぶということは到底許されない」と強調しました。
山添氏は柏崎刈羽原発そのものの危険性に言及。「中越沖地震でも想定を超えて地震の影響を受けた。安全性が十分確保される場所ではないことが明らかになっている」と指摘しました。
またセキュリティー上の問題が発生していることにも触れ「原発を扱う事業者としての資格が問われている東電が、再稼働をすすめることは容認できるものではない」と強調しました。
柏崎刈羽 再稼働は論外 これだけの理由 新潟知事が再稼働 容認
しんぶん赤旗 2025年11月22日
新潟県の花角英世知事は東京電力柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)の再稼働を容認すると表明しました。しかし、福島第1原発事故を引き起こした東京電力は事故後も不祥事を繰り返しており、脆弱な地盤の上に立った柏崎刈羽原発は被災原発です。立地地域は豪雪地帯で住民避難はできるかなど多くの課題が山積しています。 (松沼環)
〝不正″続く東電
東電は、今もなお数万人の人たちがふるさとを奪われ、避難を続けている福島第1原発事故を引き起こした当事者です。さらに多くの事故・損傷隠しなど、不正を繰り返しています。
東電は内部告発に端を発した検査データの改ざん問題で2003年に、東電の柏崎刈羽と福島の2原発の全17基が停止する前代未聞の事態となりました。東電は07年にも大量のデータの改ざんが発覚し行政処分を受けています。
同じ年に発生した新潟県中越沖地震では、想定していた最大の地震動を上回る揺れを観測し、柏崎刈羽原発全7基が停止。火災や放射能漏れ、膨大な機器・建屋の損傷など重大な事態に陥り、東電の火災対策の不備や情報公開の問題などが露呈しました。
11年3月の福島第1原発事故では、事前に巨大津波のシミュレーションを実施しながらそれを公開せず、他電力会社の原発で実施していた水密化などの津波対策もせず対策を先延ばししました。無策のまま巨大津波に襲われ、世界最悪レベルの原発事故が発生。国会事故調報告書ではこの事故を「人災」と断定しています。
第1原発では、事故後の対応でも作業員の波ばくや汚染水の漏えいなどが発生し、東電の下請け任せの姿勢が批判されました。東電は現在も汚染水を抜本的に減らす地下水流入対策を避け、汚染水の発生を許しています。
柏崎刈羽原発では、テロ対策の設備不備が長期間放置されていたことが判明し、原子力規制委員会が21年4月に事実上の運転停止命令を出しました。規制委が商業原発に対してこのような厳しい措置をするのは、初めてでした。
不正や不祥事が発覚するたびに、稼働・スケジュールありきで下請け・現場任せの東電の体質が批判され、東電は、再発防止を約束してきました。しかし問題は繰り返されています。先月東電は、6号機の稼働を前提に新潟県へ10年で1000億円を拠出する意向を表明しましたが、稼働ありきの姿勢を示すものです。
豆腐〝地盤″の上
東電が福島第1原発事故の当事者であるだけでなく、柏崎刈羽原発には立地など安全上の多くの問題があります。
中越沖地震では2000ガル(ガルは加速度の単位)を超える強い揺れを観測。また、原発構内の広い範囲で液状化が発生しました。同原発は、「豆腐の上」に例えられるぼど脆弱な地盤に立っています。このため、他の多くの原発と比べて同原発の想定する地震の揺れは極めて大きなものになっています。
また、同原発は、日本でも特に地殻のひずみが大きいと推定されている地域に位置しており、繰り返し大きな地震の揺れに見舞われています。また、敷地内には何本もの断層が見つかっています。
地下水位も高く、福島第1原発を大きく上回る地下水が流れ込むため、事故が起きれば大量の汚染水が発生する危険があります。
同原発の30キロ圏内には、9市町村が含まれ、約41万6000人が暮らしています。
〝豪雪″での避難
原子力規制委員会が定めた原子力災害対策指針(原災指針)では、原発から5キロ圏内の住民は、原発事故が発生し周辺住民に放射線影響の恐れがある場合、披ばくを避けるために放射能が放出される前に予防的に避難することになっています。
新潟県は日本でも有数の豪雪地帯です。新潟県の避難計画では、大雪で避難できない場合は、5キロ圏内の住民も被ばくを軽減するため屋内退避をするとされています。
一方で、新潟県の行った被ばく線量シミュレーションでは、事故が発生しフィルターベント(排気)を使用した場合、屋内退避しても原発から5キロ圏内で国際原子力機関(IAEA)の基準値を上回るケースがありました。住民からは、被ばくを強いる計画と不安の声が上がっています。
柏崎刈羽原発は、1~7号機合わせた総出力は821万2000kwで世界最大級の原発です。6、7号機は、いずれも出力135・6万kwと日本最大の原子炉で、事故を起こした場合の被害もそれだけ大きなものになり得ます。東電に危険な原発を動かす資格はありません。
【主張】 柏崎刈羽原発容認 東電の再稼働など許されない
しんぶん赤旗 2025年11月23日
東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)について、花角(はなずみ)英世知事が再稼働を容認する考えを明らかにしました。「再稼働の是非は、県民に信を問う」との公約を投げすてるものです。福島第1原発の悲惨な事故を引き起こした東京電力が原発を稼働させるなど、あってはなりません。
県民意識調査では、再稼働の条件が「整っているとは思わない」が60%と多数を占め、「どのような対策を行ったとしても再稼働すべきでない」も48%です。県民は再稼働を認めていません。
「東京電力が柏崎刈羽原発を運転することは心配だ」は69%もありました。検査データ改竄(かいざん)、IDカード不正使用、侵入検知器の故障放置など東電のずさんさを目の当たりにしてきたからです。先日もテロ対策文書の不正コピーが発覚しました。東電に原発を運転する資格はありません。
知事は、県民の不安や不信を正面から受けとめ、再稼働容認を撤回すべきです。
■札束を振りかざし
政府と東京電力は足並みをそろえて再稼働ありきで突き進んできました。東電は、地元同意に先立つ6月に6号機に核燃料を装荷しました。
8月の原子力関係閣僚会議では、原発周辺地域の公共事業などへの国の補助率をかさ上げする特措法の対象を10キロ圏内から30キロ圏内に拡大する方針が出され、石破茂首相(当時)は、柏崎刈羽原発の再稼働への理解が進むよう全力で対応を進めることを関係閣僚と東京電力に求めました。
政府は、現実には避難が困難であるにもかかわらず、8月に柏崎刈羽原発の避難計画を了承しました。
10月16日の県議会では、東京電力の小早川智明社長が10年間で1千億円規模の資金を県に提供すると表明し、経済産業省資源エネルギー庁の村瀬佳史長官が1千億円超とされる避難道路などの整備を全額国費で行うと表明しました。高市早苗内閣は総合経済対策に柏崎刈羽原発の再稼働が重要だと明記しました。
福島原発事故を経験してなお、札束を振りかざして再稼働を迫るなど言語道断です。
■原発ゼロの決断を
原発がひとたび重大事故を起こせば、地域社会が破壊され多くの人が故郷を奪われます。福島原発事故を忘れてはなりません。政府がすべきことは、原発再稼働の押し付けではなく、国民の安全と日本の未来のために原発ゼロを決断することです。
政府は、電力の安定供給や気候変動対策に原発が必要だと言い募りますが、電力供給に占める原発の割合は8・5%にすぎません。再生可能エネルギーは22・9%と原発の2・7倍です(いずれも2023年度)。再エネで可能な発電量は電力消費をはるかに上回ります。再エネを本格的に増やせば、深刻な危険をはらむ原発に頼ることなく化石燃料依存から抜け出し、エネルギー自給率も高めることができます。
25日には、新潟県庁を包囲する「人間の鎖」行動が行われます。新潟と全国の世論と運動で柏崎刈羽原発の再稼働を断念させましょう。いまこそ原発ゼロの日本をめざしましょう。