福島民友新聞が、福島原発1、2号機共用排気筒(高さ120m)の解体作業を請け負う建設会社「エイブル」に勤務する水野寿秋さん(26)=いわき市出身=を紹介する記事を出しました。
水野さんは9年前の3月11日、平工高を卒業し東北学院大への進学を控える中で大震災に見舞われました。大学卒業後の進路を考え始めた時、「自分も何か復旧、復興の役に立ちたい。にぎわう富岡町をもう一度、見たい」と、それまでは考えていなかった地元の企業「エイブル」に就職しました。
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「廃炉」支える決意! 富岡復興へ 建設業・エイブルの水野さん
福島民友 2020年03月30日
事故収束と廃炉作業が続く東京電力福島第1原発の敷地内にある協力企業棟。広野町の建設業「エイブル」の水野寿秋さん(26)=いわき市出身=は、同社が担当する1、2号機共用排気筒(高さ120メートル)の解体作業を事務面からサポートする。「廃炉は30~40年の長丁場。自分が関わり続けるだけでなく、経験を次の世代に引き継いでいきたい」。決意と責任感に満ちた目で、本県の未来を見つめる。
9年前の3月11日。平工高を卒業し、東北学院大への進学を控える中、いわき市の自宅で大きな揺れに襲われた。津波被害はなく同居する家族3人も全員無事だったが、原発事故で幼少期から親しんだ大切な場所を奪われた。祖父母が暮らした富岡町だ。
正月やお盆に囲んだ食卓、夜の森地区の桜並木。思い出の中の富岡町は、いつも笑顔にあふれていた。祖父母は事故で古里を追われ、避難した同市に自宅を再建。慣れ親しんだ地を離れた2人の寂しげな表情が、今でも水野さんの脳裏に浮かぶ。
大学卒業後の進路を考え始めた時、ふと、そんな2人の顔と富岡町の光景を思い出した。「自分も何か復旧、復興の役に立ちたい。にぎわう富岡町をもう一度、見たい」。それまでは考えていなかった地元の就職先を探す中で震災後、復旧工事を積極的に受注しているエイブルが目に留まった。迷いはなかった。
昨年8月に始まった排気筒解体は、4班編成のエイブル社員が切断装置のカメラを頼りに、約200メートル離れた操作室から遠隔で筒身を切る前例のない作業だ。水野さんは作業の進み具合や工程別の課題をまとめ各班に伝える役割を担い、さまざまな情報の共有を下支えしている。
当初は切断装置の不具合で度々作業が中断し「胃が痛かった」と振り返るが、現在は作業方法の改良などで順調に工程が進んでいる。地元就職のきっかけになった祖父は2年前に亡くなり、今では、祖母に掛けられるねぎらいの言葉が仕事に打ち込む原動力になっている。「排気筒の解体は廃炉全体から見たら小さなことかもしれない。ただ、長い廃炉はそうした作業の積み重ね。少しずつ、復興に向けて仕事を進めていけたらと思う」