J-CASTニュースが「再稼働する最初のBWRは女川2号機か」とする記事を出しました。BWRは「沸騰水型原子炉」の略で、放射能を濃厚に含んだ加熱蒸気乃至その濃縮水が発電所系内を循環し直接発電機タービンを回す構造です。
女川原発がある宮城県沖は今後30年以内にマグニチュード(M)7級の地震が起きる確率が90%程度とされています。基準地震動1000ガル程度で大丈夫だとはとても言えません。
昨年11月に石巻市民17人が「避難計画は実効性に欠ける」として「地元同意」の差し止めを求める仮処分を仙台地裁に申し立てているので、その結果を注視したいのですが司法にはあまり期待できないというのが実情です。
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再稼働する最初のBWRは「女川2号機」か
時期左右する「地元との関係」
J-CASTニュース 2020年3月7日
東日本大震災で被災した東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市、出力82.5万キロワット)の再稼働に、原子力規制委員会のOKが出た。
同委は2020年2月26日、安全対策が新規制基準を満たしたとの審査書を正式に認め、東北電に許可証を交付した。東北電は安全対策工事を2020年度中に終える計画で、再稼働は2021年以降になるが、地元の同意が必要で、予断を許さない。
被災原発としては2基目の合格
2013年にできた新規制基準に基づく審査合格は9原発16基目、東北電では初めて、2011年の東日本大震災で被災した原発では日本原子力発電の東海第2原発(茨城県東海村)に次いで2基目、事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型炉(BWR)では3原発4基目になる。
大震災の震源に最も近い女川原発は、想定していた最大の揺れ(基準地震動)580ガル(ガルは加速度の単位)を上回る推定636ガル相当の揺れに襲われ、建屋に多数のひび割れが入った。約13メートルの津波が押し寄せ、原子炉を冷やす設備の一部も浸水したが、海抜14.8メートルの高台にあったことから、福島第1のように冷却機能がすべて失われることはなかった。
国の地震調査研究推進本部の想定では、女川原発がある宮城県沖は今後30年以内にマグニチュード(M)7級の地震が起きる確率が90%程度に達する。東北電は想定する地震の揺れを2倍近い1000ガルに引き上げて施設や設備の耐震性を高め、津波想定も23.1メートルに引き上げて全国の原発で最も高い海抜29メートルの防潮堤をつくるなどの対策をまとめ、2013年12月、規制委に再稼働を申請。規制委は2019年11月に事実上の合格証となる審査書案を了承。審査書案への意見公募で寄せられた979件の意見は地震や津波対策への不安の声が目立ったが、規制委は審査で妥当と判断したと説明している。
東北電は今回の審査対象外の3号機を含め、安全対策に約3400億円を投じることになる見通しで、2号機の工事は2020年度中の完了を見込んでいる。
最大の難関は地元の同意だが...
ただ、今回の安全審査の先にはテロ対策費も待ち受ける。3400億円の枠外で、テロ対策に必要な「緊急時制御室」は、原子炉が攻撃されても遠隔操作で核燃料を冷やし続けられる機能が求められる。さらに、原子炉から十分離れた所に施設を整備できない場合、航空機を衝突させるテロ攻撃にも耐えられる頑丈さが必要。過去に再稼働した原発を見ると、その費用は数百億円から2000億円超になるという。2号機が再稼働できれば、火力発電の燃料費などを年間約350億円削減できると見込まれ、安全対策、テロ対策の費用を賄えるはずだが、トラブルなど予期せぬ出費がかさむ懸念は拭えない。
何より、再稼働への最大の難関が地元自治体の同意だ。
事前同意が必要なのは宮城県と、立地自治体である女川町と石巻市。原発5〜30キロ圏内の緊急防護措置区域(UPZ)にある他の5市町については県が意見を聞き、東北電に伝えることになる。
女川町の須田善明町長は「ニュートラル」、石巻市の亀山紘市長は「議会の意見なども聞きながら判断する」などと述べている。村井嘉浩知事は審査合格を受け、「現時点では白紙」としたうえで、6月の県議会での議論や市町村、県民向けの説明会の意見などを踏まえて判断する考えだが、UPZ内では美里町が再稼働反対を明言、他の自治体でも、避難計画について、必要な要員確保や高齢者施設など要支援者への対応などに不安の声があり、村井知事がどのように意見を集約していくかがポイントになる。
他原発より「ハードルが低い」理由
世間の相場観として、「女川2号機への地元同意の壁は高くないとみられている」(産経新聞2019年11月29日「主張」=社説に相当)と言われる。震災直後、津波に耐えた女川原発には最大364人の被災者が避難したこともあり、「地元との関係は良好」(電力業界関係者)。同じBWRで地元の同意を得るのに手間取る東電柏崎刈羽6、7号機(新潟県)や日本原電東海第2などとの違いで、「事故後に再稼働する最初のBWRとなる可能性がある」(大手紙経済部デスク)との見方が強い。
とはいえ、反原発の世論が収まったわけではない。2019年2月に、再稼働の是非を問う住民投票条例の制定を求める署名が県内有権者の5.75%にあたる11万1743人分集まった。条例案は2月県議会で否決されたが、安全審査パスを受け、県議会野党4会派が2020年2月議会に改めて条例案を提出(3月3日に否決)するなどの動きは、県民の間の不安の根強さを示している。
また、2019年11月には石巻市民17人が県と市を相手取り、避難計画は実効性に欠けるとして「地元同意」の差し止めを求める仮処分を仙台地裁に申し立て、係争中だ。事故が起きれば、放射性物質の検査待ちの車で渋滞が起き、「30キロ圏を脱出できず避難所にたどり着けない」という訴えだ。高浜原発(福井県)や伊方原発(愛媛県)をめぐって運転差し止めの仮処分決定が出たケースもあり、裁判の行方も再稼働に直結する。