韓国の独立機関・原子力安全委員会の劉国熙委員長が聯合ニュースの単独インタビューに応じ、日本のトリチウム汚染水の海洋放出計画について、「正当性と妥当性を欠く」と厳しく批判しました。具体的に次の3点が指摘されました。
・海洋放出が最善の方法なのか考える必要があるにもかかわらず国際社会の意見を取りまとめる過程がなかった
・汚染水を海洋に放出することがはたして社会の利益になるのか
・安全性の確認に当たり透明な情報公開が先行しなければならない(情報が共有されてこ
そ安全性をきちんと議論することができる)
日本の経産省は当初から海洋放出を考えていたようで、肝心の原子力規制委もその方針であったと言われます。その背景には、通常の原発においても運転中には常時微量なトリチウムが発生しますが、それを循環水中の異物を除去する復水脱塩装置(イオン交換樹脂で金属イオンを除去)では除去できないので、仕方なく海洋に放出してきたという事情があったからでした。
しかし運転時に不可避的に発生する微量なトリチウムをやむを得ず海洋に連続的に放出することと、デブリから発生しタンクに貯蔵された大量で濃厚なトリチウムを投棄処分することを同等に扱ってよいのかは別の問題です。後者については海洋放出以外の処理法がいろいろあるからです。
その点東電などは、この問題で当初から「希釈後海洋放出で問題がない」として思考を停止させていたわけなので、真っ当な視点から批判されるのは仕方がないことです。
海洋放出ではなく他の処分法を採用すべきです。
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韓国原子力安全委トップ 東電の海洋放出計画審査申請を「正当性・妥当性欠く」
聯合ニュース 2021/1/9
【ソウル聯合ニュース】韓国の原子力安全規制を担う独立機関、原子力安全委員会の劉国熙(ユ・グクヒ)委員長は、先ごろ東京電力が福島第1原子力発電所で発生する処理済み汚染水の海洋放出計画の審査を日本の原子力規制委員会に申請したことについて、「正当性と妥当性を欠く」と厳しく批判した。9日までに聯合ニュースの単独インタビューに応じた。
劉氏は、海洋放出が最善の方法なのか考える必要があるにもかかわらず国際社会の意見を取りまとめる過程がなかったと指摘したほか、汚染水の保管施設が不足するため放出するという東電の主張が国際規範に適合するかも議論すべきだと強調した。国際原子力機関(IAEA)の一般安全要件にもあるように、放射性物質の扱いに関しては「利する」かどうかの見極めが原則としながら、「汚染水を海洋の放出することがはたして利になるのか」と問い返した。
東電が海洋放出計画の審査を申請したことを受け、原子力安全委所管機関の韓国原子力安全技術院は安全性の検討に入った。劉氏は「原子力安全技術院の安全性検討チームは一つも見落とさないという姿勢で、東電が提出した書類中の汚染水放出計画や異常事態発生時の措置などを精査している」と説明した。
同氏はまた、問題提起する事案の一つに「情報公開の透明性」を挙げ、「安全性を確認するには日本の透明な情報公開が先行しなければならないため、必要な部分に関し質問を続けている。情報が共有されてこそ安全性をきちんと議論することができる」と述べた。
劉氏は原子核工学の専門家で、科学技術情報通信部と原子力安全委で要職を経て、先月初めに現職に就いた。