欧州委員会は1日、原子力発電と天然ガスを地球温暖化対策に貢献する「グリーン」な投資先だと一定条件下で認定する草案を加盟国に提示しました。これに対し、脱原発を目指すドイツやスペイン、オーストリアから反対の声が相次いでいます。
オーストリアの気候変動相は、草案は「グリーンウオッシュ(ニセのグリーン化)」、「気候や環境に有害で、子どもの未来を破壊する」などと指摘し、「計画が実行されれば訴える」と法的措置を取る構えを示しました。
スペインの環境保護担当は、原発が「グリーンでも持続可能でもない」と指摘し、ドイツの環境相は、原子力は「壊滅的な環境破壊をもたらす恐れがある」と指摘し、原発利用を温暖化対策に位置付けるのは「絶対に間違っている」と強調しました。
しんぶん赤旗が報じました。
読売新聞の記事を併せて紹介します。
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EUの原発「グリーン」草案「子どもの未来を破壊」 独・スペインなど反対
しんぶん赤旗 2022年1月4日
欧州連合(EU)の行政を担う欧州委員会は1日、原子力発電と天然ガスを地球温暖化対策に貢献する「グリーン」な投資先だと一定条件下で認定する草案を加盟国に提示したと発表しました。これに対し、脱原発を目指すドイツやスペイン、オーストリアから反対の声が相次いでいます。(桑野白馬)
草案は、2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロ実現に原発と天然ガスが必要だと明記。気候変動対策に役立つとする「EUタクソノミー(分類)」に追加するとしています。
欧州委は昨年4月、投資家や企業に一定の評価基準を与え、脱炭素への投資を促すためだとしてタクソノミー案を発表。その際、賛否が割れていた原発と天然ガスの扱いについては決定を先送りしていました。
オーストリアのゲウェッスラー気候変動相はツイッターで、草案は気候変動対策を講じるふりをした「グリーンウオッシュ」だと批判。原発や化石燃料由来の天然ガス使用は「気候や環境に有害で、子どもの未来を破壊する」と指摘しました。「計画が実行されれば訴える」と、法的措置を取る構えを示しました。
脱原発を掲げるスペインのリベラ副首相(環境保護担当)は、原発が「グリーンでも持続可能でもない」と指摘。温室効果ガス排出量実質ゼロの実現に「誤った合図を送る」と指摘しました。
22年末に脱原発を目指すドイツのレムケ環境相は独メディアグループに対し、原子力は「壊滅的な環境破壊をもたらす恐れがある」と指摘。原発利用を温暖化対策に位置付けるのは「絶対に間違っている」と強調しました。
一方、原発が発電量の約7割を占めるフランスや、原発導入計画を進めるポーランドはタクソノミーに原発を加えるよう求めています。
欧州委は、加盟国の意見を求め、月内にも正式案を公表する予定。加盟国で構成する理事会や欧州議会が承認すれば施行されるものの、ドイツやスペイン、オーストリア、デンマークなどが反対しており、内容は修正される可能性があります。
原発と天然ガス発電、EUが「脱炭素」適格に
読売新聞 2022年1月2日
【ブリュッセル=畠山朋子】欧州連合(EU)の執行機関・欧州委員会は1日、2050年の脱炭素実現に向け、原子力発電や天然ガス発電を一定の条件下で「適格」とする方針を発表した。原発や天然ガスを巡り加盟国間で賛否が割れていたが、EUが認定することで投資家や政府から関連事業への資金を呼び込みやすくなる効果が期待される。
製造業や運輸といった産業ごとに持続可能な経済活動かどうか分類するための基準となる「EUタクソノミー(分類)法案」で位置付ける。1月中に正式発表し、23年の発効を目指す。
欧州委は昨年12月31日、加盟国に草案を示した。関係者によると、原発は各国が放射性廃棄物の管理を徹底することで環境に重大な損害を与えないようにでき、温室効果ガスの排出削減に貢献すると判断した。45年までに建設許可を得た原発を適格とする。
天然ガスは、排出量の多い石炭などからの移行手段と位置付けた。1キロ・ワット時あたりの二酸化炭素排出量を270グラム未満に抑えることなどを適格の条件とした。30年までに建設許可を受けた発電所を対象とする。
原発を巡っては、原発が多いフランスが「適格」を求める一方、ドイツなどが慎重な姿勢を示していた。昨年4月に法案が発表されたが、原発や天然ガスの判断は先送りされていた。