日刊ゲンダイが、EUの欧州委員会が1日、原発を地球温暖化対策に貢献する事業として認定する方針を発表したことを取り上げました。
そして欧州委が原発事業を「グリーン」な投資先の環境産業として正式に認定すれば、原発事業にマネーが流れ込むことになるが、そこに「脱炭素」壮大な欺瞞があると指摘しました。そもそも使用済み核燃料などの“核のゴミ”の行き場がなくて、環境が放射能で汚染されるという原発の、どこがグリーンで持続可能なのかというわけです。
さらに原発は熱効率が悪いため高温な温排水を出して海水を暖めるので地球を温暖化させます。それだけでなく海水の温度が上がれば炭酸ガスの溶解度が下がるので、その分炭酸ガスが大気中に放出されることになり「脱炭素」でもありません。
日刊ゲンダイのこの指摘を否定できなければ、日本政府は欧州委員会に同調すべきではありません。
追記)
原記事は「箱根駅伝に車両提供しているトヨタ自動車の最新BEV(バッテリー式電気自動車)が、本当に「脱炭素」「グリーン」なのか から説き起こしているので、その部分は省略しました。
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<岸田政権はニンマリだろう>
悪魔の原発 「脱炭素」が免罪符の倒錯
日刊ゲンダイ 2022/01/4
(記事集約サイト「阿修羅」より転載)
(前 略)
脱炭素の欺瞞と強欲資本主義
(前 略)
そんな中、欧州委が1日、地球温暖化対策に貢献する事業として原子力発電を認定する方針を発表したことが話題になっている。
EUは2050年までに温室効果ガス排出量の「実質ゼロ」を目指し、目標達成に合致する経済活動を「EUタクソノミー(分類)」という制度でリスト化。EUの「グリーンリスト」と呼ばれている。そこに原発と天然ガスを認定するというのだ。
EU加盟国や専門家グループは今月12日までにこの方針について意見を提出。欧州委は今月中に正式に判断を示す見込みだ。「グリーン」な投資先の環境産業として欧州委が正式にお墨付きを与えれば、原発事業にマネーが流れ込む。ここに脱炭素の大きな欺瞞がある。
「欧州委の方針に対し、すでに原発全廃を決めているドイツや、スペイン、オーストリアなど脱原発の加盟国は猛反対していて、そう簡単にはまとまらないでしょう。だいたい、放射性廃棄物など“核のゴミ”の行き場がないのに、原発のどこが持続可能なのか。環境破壊の恐れが大きく、SDGsに逆行するのが原発です。深刻な地球環境も投資対象にして原発にまだ投資を呼び込もうとする強欲資本主義には呆れるほかありません」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)
自民党は原発稼働や新増設を進める議連を設立
欧州委の方針は、原発推進への追い風になる。岸田政権もニンマリだろう。東日本大震災で過酷な事故を経験したというのに、政府はいまだに原発を「ベースロード電源」と位置づけている。むしろ、「脱炭素」を免罪符に、事故からわずか10年で原発推進の旗を大きく振り始めた。
菅前政権は「2050年カーボンゼロ」を宣言。そのグリーン成長戦略を口実にして、エネルギー基本計画に「新型原子炉の研究費」を盛り込んだ。自民党は「最新型原子力リプレース推進議連」などを立ち上げ、岸田首相も高市政調会長も総裁選では「小型モジュール炉(SMR)」の建設や核融合炉の研究開発を主張していた。
「原発事故を経験した日本人の感覚では、二酸化炭素より放射能の方が恐ろしいのに、自民党政権は原発回帰に舵を切ろうとしている。日本で再生可能エネルギーへのシフトがなかなか進まないのも、政府が電力会社と原発を守ってきたからです。原発のリスクを一番知っているはずの日本が、経済効率を優先して原発を止めようとしない。ひとたび事故が起きたら廃炉費用や賠償費用、帰還困難などで天文学的なコストが発生することは周知の事実なのに、懲りずに原発の発電コストは安いというマヤカシを振りまいている。これは唯一の被爆国でありながら、核兵器禁止条約に署名も批准もしないのとよく似た構図です。安倍・菅政権を引き継ぎ、脱炭素を隠れミノに原発政策を推し進める岸田首相は、広島選出の首相としてあまりに情けない」(経済評論家・斎藤満氏)
地球温暖化対策にむしろ逆行
岸田首相の筆頭秘書官は嶋田隆・元経産次官だ。日本原子力発電出身だった故・与謝野馨元官房長官の腹心で、福島第1原発の事故後には東電取締役も務めた。岸田官邸が原発推進なのは間違いない。欧州委が原発をグリーン認定すれば、待ってましたとばかりに原発再稼働や新設を進めていくだろう。
発電中に二酸化炭素を放出しない原発は「クリーンエネルギー」という理屈なのだが、ウランを核燃料化する過程では大量の二酸化炭素を出す。原発の建設にだって膨大な二酸化炭素は放出される。
しかも、原発は稼働させると高い温度の排水を海に流すのだ。その量は全国で年間1000億トンとも試算されている。海水は温められると二酸化炭素を大気に放出する。また、海面温度が上がったせいで集中豪雨などの異常気象が多発するようになったとも言われる。そういう原発のどこが地球温暖化対策になるのか。何がSDGsかという話だ。
「原発回帰なんて倒錯している。地球環境を守るために、原発をゼロにして再生可能エネルギーにシフトしていくのが世界の潮流です。本来なら、過酷な原発事故を経験した日本が先頭に立って原発ゼロを推進しなければならないのに、腰が引けているのはなぜか。新型コロナウイルス対策でも『命より経済』の姿勢が顕著になりましたが、結局これが自民党政権の本質ということです。国民の安全安心よりもカネなのです。自民党政権にはできない原発ゼロやジェンダーフリーなどのSDGsな政治を野党に打ち出してほしいが、今はあまりに非力です。原発推進は連合も歓迎でしょうし、国民が声を上げなければ原発依存から抜け出せなくなってしまいます」(五十嵐仁氏=前出)
原発を主人公にしたノンフィクション小説「ごめんなさい、ずっと嘘をついてきました。福島第一原発 ほか原発一同」の著者・加藤就一氏も昨春の日刊ゲンダイのインタビューでこう言っていた。
<脱炭素社会実現をうたい、原発の新増設や建て替えを進める自民党の議員連盟の顧問に安倍前首相が就任しました。安倍氏肝いりの原発輸出は全敗しても、このざまです。「原発ゾンビ」と書きましたが、ほんとにしぶとい方々です>
岸田は再エネのインフラ整備に2兆円超を投資するというが、これだってオトモダチ企業の利権になるだけだ。原発から再エネへの転換をハッキリ打ち出さないかぎり、その場しのぎの原発稼働が続き、国民は常に危険にさらされる。そういう自民党政権に支持を与え続けていいのか。本気で考えないと、貧すれば鈍するを地で行って、悪魔の原発に未来を奪われかねない。