住民の避難が続く福島県富岡町の帰還困難区域のうち、23年春の避難指示解除を目指す特定復興再生拠点区域(復興拠点)で26日、立ち入り規制が緩和されました。10年10カ月ぶりに自由にわが家に立ち寄れるようになった避難住民は「この日を待っていた」と笑顔を見せました。
同日夕には住民有志によるセレモニー「RELIGHT 夜の森」が行われ、約1600本の竹灯籠が約400メートルにわたって設置され、桜並木をほのかに照らしました。
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わが家への帰宅いつでも 原発事故10年余、富岡の立ち入り規制緩和
河北新報 2022年01月27日
東京電力福島第1原発事故で住民の避難が続く福島県富岡町の帰還困難区域のうち、2023年春の避難指示解除を目指す特定復興再生拠点区域(復興拠点)で26日、立ち入り規制が緩和された。原発事故から10年10カ月。ようやく自由にわが家に立ち寄れるようになった避難住民は「この日を待っていた」と笑顔を見せた。(福島総局・岩崎かおり)
拠点へ向かう県道に設けられた町内のゲート前には、往来の制限がなくなる午前9時前から住民の車列ができた。一番乗りしたのは拠点内に自宅がある無職松本義隆さん(75)。避難先のいわき市から駆け付けた。
これまで拠点内への立ち入りは時間制限がある上、許可が必要だった。松本さんは「ずっとこの日を待っていた。自由に入れるようになってうれしい」と笑顔。「3カ月に1度くらいのペースで来ていたが、これからはもっと頻繁に通いたい」と語った。
規制緩和に先立ち、県警双葉署などによる地域防犯出動式が同日、JR夜ノ森駅前であった。警察や消防、町民らでつくる「とみおか守り隊」が、午前9時に車両によるパトロールに出発した。
拠点内には窓ガラスが割れたり、屋根や天井が抜け落ちたりしたままの民家がある。雑草が人の背丈ほどまで伸びた場所も。守り隊の末永博幸隊長は「住民の不安を解消できるよう、警察や消防と連携して、防犯と防火に努めたい」と力を込めた。
町によると、復興拠点に該当する地域には原発事故当時、1697世帯3886人が居住していた。今月1日時点で住民登録があるのは1176世帯2729人。4月下旬からの大型連休ごろの準備宿泊を目指しており、現時点で約50世帯が前向きな意向を示しているという。
一部しか立ち入れなかった町のシンボル「夜の森の桜並木」も、全長2・2キロを自由に楽しめるようになる。山本育男町長は「復興への大きな一歩。多くの人に訪れてもらい、桜はもちろん、町の復興状況も見て、発信してもらいたい」と話した。
桜並木に竹灯籠ともる
復興拠点内にある町のシンボル「夜の森の桜並木」に26日夕、約1600個の竹灯籠がともされた。双葉郡8町村の住民有志でつくる「双葉郡未来会議」が主催し、並木沿いの通りは幻想的な光に包まれた。
富岡町の団体職員深谷美徳さん(54)は「桜が咲くと必ず来ていた思い出の場所。早くかつてのにぎわいが戻ればいい」と願った。
福島県富岡町の復興拠点全域で立ち入り規制緩和
福島民報 2022/01/27
政府原子力災害現地対策本部と福島県富岡町は26日、東京電力福島第一原発事故に伴う町内の特定復興再生拠点区域(復興拠点)全域の立ち入り規制を緩和した。夜の森地区を中心とした約390ヘクタールについて、許可証なしで立ち入りができるようになった。
午前9時に復興拠点内にある7つのゲートが開放され、順次バリケードが撤去された。夜の森地区のロータリーゲートからはパトカーや町消防団の車両が警戒活動に向かった。
規制緩和に伴い、夜の森地区の桜並木2・2キロ全体の観桜が可能になった。同日夕には住民有志によるセレモニー「RELIGHT 夜の森」が行われた。約1600本の竹灯籠が約400メートルにわたって設置され、桜並木をほのかに照らした。
復興拠点内の1日現在の住民登録者数は1176世帯2729人。2023(令和5)年春の避難指示解除を予定している。準備宿泊は今春のゴールデンウイークに始まる見通しで、現時点で約50世帯が希望している。