柏崎刈羽原発7号機の消火配管で多数の手抜き溶接が見つかった問題で、東電は今月、1580カ所に上る工事のやり直しを始めました。1580カ所というと膨大な個所ですが、これは不正工事を内部告発された1メーカーが行った工事の全カ所ということで、その他の個所は大丈夫なのかという問題は残ります。
発電所の工事は元請け以下第4~5次下請けまであるというので、とても東電だけではチェックし切れず、結局は下請任せであったことが明らかにされました。
この「多重下請け構造」は工事費の高額化に直結するもので、発注元は高額の工事費を支払うのですが、膨大な額が中抜き(中間手数料)されるため作業員に渡る額はかなり低くなるということで以前から問題視されていました。不具合が明らかになった分だけについて応急的に対処するという弥縫策では、問題の根本解決は困難です。
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東電 問われる管理能力 柏崎刈羽原発7号機 手抜き溶接
新潟日報 2022/01/24
東京電力柏崎刈羽原発7号機(新潟県)の消火配管で多数の手抜き溶接が見つかった問題で、東電は今月、1580カ所に上る工事のやり直しを始めた。溶接は原発を安全に稼働させる上で不可欠の技術でありながら、東電にノウハウがなく、下請け業者に依存してきた分野。東電は匿名の「告発」があるまで不正に気付くことができず、原発を隅々まで把握しきれていない実態がまたも露呈した。やり直し工事の適正な遂行とともに、東電の原発の管理能力があらためて問われている。
「溶接は私どもがあまり親しんでいなかった分野だった」。昨年末、手抜き溶接を公表した記者会見で、同原発の稲垣武之所長は東電の「弱点」を率直に認めた。
手抜き溶接の発覚は、昨年3月にあった匿名の情報がきっかけ。調査の結果、6号機に続き、東電が再稼働を目指す7号機でも不正の事実が確認された。東電は9月に、他人のIDカードを使った中央制御室への不正入室問題などに関する再発防止策をまとめたばかり。東電が改革を誓った矢先に発覚した新たな不祥事だった。
対策として、稲垣氏は、外注業務の知識や経験などを手の内にいれる「手の内化」という言葉を使いながら、作業を直営で試行するなどして管理体制の向上を急ぐとした。
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原発は多くの複雑なシステムからなる巨大施設だ。点検や修繕工事などの業務が、何層にも重なった多くの下請け業者に支えられている。その末端で頻発する不正や失態は、これまでも東電の頭痛の種となってきた。
東電も課題を自覚し、「安全最優先」の文化を定着させようと、社内の研修強化などに取り組んできている。再発防止策にも下請け業者を含めた意識改革を挙げるが、事態はなかなか改善しない。
7号機では昨年、火災感知器が消防法の規則を満たさない場所に設置されていたことも発覚した。工事を担当した業者の確認不足が原因で、東電も立ち会い確認で誤りを正すことができなかった。
県技術委員会委員で、品質管理などが専門の浅田義浩氏は「東電は品質管理が弱い」と印象を語る。
「辺縁現象といって、問題は組織の端で起きることが多い。中枢が懸命に取り組んでも、その意識が薄い末端でエラーが起きる」と指摘。結局、安全の最終責任は発注者の東電にあり、末端を管理しきれない甘さが原発で相次ぐ問題の背景にあるとみる。
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東電は1580カ所に上る溶接工事のやり直しに踏み切った。思い切った判断にも映るが、やり直しの対象は、不正が見つかった消火配管の溶接を受注した業者の担当部分などに限られる。大量の気体や水を扱う原発構内には、消火配管以外にもさまざまな配管が血管のように張り巡らされ、溶接箇所は無数にある。
同じく県技術委委員の岩井孝氏=核燃料工学=は「他の配管溶接は適正に行われたのだろうかと私も思うし、一般の人も思うだろう」と懸念する。
東電は、原子炉の運転に直接関わるような重要配管については「施工方法や性能検査のチェックが(不正のあった)消火配管より厳格だ」と強調。業者や原子炉メーカーに「適切に行われていると確認している」とする。
自前の溶接技術の蓄積は一朝一夕にはいかない。東電が掲げる「手の内化」の実現と品質管理の向上が、相次ぐ失態で失った信頼の回復に向けた試金石になる。