2022年1月13日木曜日

東海第二原発12月に対策工事完了予定も再稼働の道険しく  

 東海第二原発再稼働に向けた事故対策工事は今年の12月に完了する予定ですが、昨年3水戸地裁が避難計画の不備を理由に東海第二の運転差し止めを命じたことで、避難計画の「実効性」の要求が一層強まっています。ところが30キロ圏内の14市町村のうち計画策定済み茨城県と5市町のみで、昨年1年間で新たに策定した自治体はないというありさまです

 「実効性のある避難計画」とは文字通り実行可能な計画ということで、例えば「バス1千台で住民を避難させる」という計画の場合は、それだけのバスの手配が可能であるという「バス会社との確約」等が求められます(これは当然のことで、それが伴わない計画は机上の空論に過ぎません)。勿論高齢者や病弱者などの避難の安全性と確実性を保障することも必要です。
 これまで司法(と規制委)は漫然と原発の再稼働を認めてきていますが、住民の確実な避難を眼中に置かなかったことの「非」は致命的で、大いに反省すべきです。
 避難者には幼児や虚弱者が含まれるにもかかわらず。一部に避難中に100ミリシーベルトまで許容すべきというような異常な論調がありますが論外です。それこそは原発の危険性を如実に示すもので、人権と個人の尊厳に反するものです。
 東京新聞が報じました。
 併せて3月の水戸地裁判決:「東海第二原発の運転禁じる 防災体制は極めて不十分」についての記事を紹介します。
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東海第二原発 再稼働の道険しく 12月に対策工事完了予定 
30キロ圏市町村の広域避難計画策定も見通せず
                         東京新聞 2022年1月12日
 日本原子力発電は今年、東海第二原発(東海村)再稼働に向けた事故対策工事を十二月に完了予定だ。だが、県や立地・周辺六市に再稼働の事前同意を求めるプロセスに入るには、三十キロ圏の十四市町村の全てが実効性ある広域避難計画を策定することが大前提昨年三月の水戸地裁判決が避難計画の不備を理由に東海第二の運転差し止めを命じたことで「実効性」の要求は強まっており、計画が出そろう見通しは立たない。再稼働への道のりは険しい。(長崎高大、保坂千裕)
 「必要な検証をして実効性を確認しながら、住民の理解を得られた段階で策定していきたい」。東海村の山田修村長は十一日、県内の全市町村や原子力事業者などでつくる「茨城原子力協議会」の新年パーティーに出席後、村の広域避難計画について報道陣の取材にそう語った。
 村は、広域避難先となる守谷市などへの避難訓練が新型コロナ禍の影響で実施できておらず、避難計画も未策定。仮に順調に事故対策工事が完了しても、すぐに事前同意の是非を判断する状況にはならないことは誰の目にも明らかだ。
 大井川和彦知事も、パーティーでのあいさつで東海第二再稼働について触れ、実効性ある防災体制の構築などが前提になるとの考えを重ねて示した。

 東海第二では、新規制基準に基づく事故対策工事として、最大一七・一メートルの津波を想定した高さ二十メートルの防潮堤の建設や、外部電源が使えなくなった場合に備えた非常用電源の増設、原子炉の冷却設備の多重化などを進めている。
 一方、広域避難計画の整備は難航。県と、東海第二から三十キロ圏内の十四市町村には、重大事故に備えた避難計画策定が義務付けられているが、策定済みは県と五市町のみで、昨年一年間で新たに策定した自治体はない。昨年三月の水戸地裁判決以降、「実効性」の中身が厳しく問われるようになった影響もあり、策定済みの計画も内容の見直しを迫られている。
 加えて昨年は、三十キロ圏にある有床医療機関や入所型社会福祉施設の多くで、原発事故時に患者や入所者を避難させるための避難計画が策定できていない問題も発覚した。救急車や福祉車両の必要台数の確保が難しいことが背景にある。
 大井川知事は、自治体の広域避難計画の実効性を担保するには「全ての医療機関、社会福祉施設で避難計画が策定されることが必要」との認識を示しており、再稼働に向けたハードルはさらに高まっている。
 十一日のパーティーには原電の松井誠常務も出席したが、新型コロナ感染対策を理由に、報道陣の取材には応じなかった。


東海第二原発の運転禁じる 水戸地裁「防災体制は極めて不十分」
                         東京新聞 2021年3月18日
 首都圏唯一の原発で、日本原子力発電(原電)が再稼働を目指す東海第二原発(茨城県東海村)を巡り、11都府県の住民ら224人が原電に運転差し止めを求めた訴訟の判決で、水戸地裁は18日、運転を認めない判決を言い渡した。前田英子裁判長は、原発の半径30キロ圏に94万人が暮らすことを踏まえ「実効性ある避難計画や防災体制が整えられているというにはほど遠い状態で、人格権侵害の具体的危険がある」と理由を説明した。(松村真一郎)

◆30キロ圏の原告79人の請求認める
 東海第二原発の30キロ圏には14市町村があり、人口は原発の立地地域として全国最多。原告弁護団によると、事故時の避難計画の不備を理由に、原発の運転差し止めを認めたのは初めて。判決では、30キロ圏に住む原告住民79人の請求を認める一方、それ以外の請求は棄却した。原電は控訴する方針。
 東海第二原発は2011年の東日本大震災の津波で被災し自動停止し、現在も止まったまま。原電は再稼働に向け、原発の事故対策工事を進めているが、判決が確定すると、再稼働できなくなる。
◆課題抱える避難計画の策定
 判決によると、原子力災害対策指針に基づく避難計画では、原発から半径5キロ圏は事故時すぐに避難が求められる。5キロから30キロ圏ではまず屋内退避、その後に放射線量が上がると避難することになる。しかし、避難計画の策定が義務付けられる30キロ圏の14市町村のうち、計画を策定済みなのは5市町にとどまっている。
 前田裁判長は「人口15万人以上の日立市やひたちなか市や、27万人の水戸市は計画の策定に至っていない。策定した5自治体の避難計画も、複合災害などの課題を抱えている」と指摘した。
 原発事故と大規模地震が同時に起きた場合、住宅が損壊して屋内退避が難しくなることや、道路の寸断による情報提供体制がないことを挙げ「防災体制は極めて不十分であると言わざるを得ない」と強調した。
 一方、地震や津波の想定などに関しては「安全性に欠けるところがあるとは認められない」と原電側の主張を認めた。