2022年1月31日月曜日

原発事故に備える「避難計画」が基準から抜け落ちた理由は?

 日本の原発規制基準から、国際基準である「深層防護第5層 『避難』」の項目が脱落しているのは不思議であり、不自然です。深層防護はいわば原発作業員や周辺の住民を如何にして被爆から守るかを眼目にしたものなので、その最終段階の「避難」が脱落することは本来あり得ません。

 毎日新聞がそのいきさつに関する記事を出しました。結論として、議論は規制委を「独立した組織として何処に位置づけるか」に時間が割かれ、避難計画の審査は話題にならなかったということです。
 日本では原発の深刻な事故は起きないという考え方で一貫していたので、それもあり得ますが、規制基準を制定する過程では当然認識された筈です。規制委は必要性を理解したもののそれにタッチしたくなかったので、敢えて無視したというのが真相のように思われます。
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原発事故に備える避難計画 国が審査しない仕組み、いきさつ探ると…
                            毎日新聞 2022/01/30
 自治体が原発事故に備えて立てる避難計画の実効性について、原子力規制委員会など国には審査する仕組みがない。東京電力福島第1原発事故では、着の身着のまま逃げて命を落とした人が多かったため、対策は強化された。ただ茨城県などの避難計画は、司法の場でいくつもの不備を指摘されている。原発事故から11年。審査の仕組みがないいきさつを探ると、規制委の設立の経緯に行き着いた。

 事故を防げなかった原発の規制行政を立て直そうと、当時の民主党政権は2012年の1月、それまでのように原発を推進する経済産業省ではなく、環境省に規制組織を設ける法案を国会に出した。一方、野党だった自民・公明両党はその3カ月後の4月、規制委の設置法案を提出。国家行政組織法第3条に基づき、省庁からの独立性が高い「3条委員会」という組織にするのが狙いだった。
 この時、国会は参院で野党が多数を占める「ねじれ国会」。こうした政治情勢もあり、政府内の水面下では「規制組織が3条委になる場合」の検討がされ始めた。原発敷地内の安全対策は3条委の規制委が審査するが、敷地外の対策になる原発防災は「専門家が担う規制委の委員では、自治体トップとの調整ができない」(政府関係者)との懸念もあり、省庁が連携する体制が思い描かれていく。
 ただ、自治体の避難計画などの審査が必要かどうかは、あまり議論にならなかった。「計画を良いとか、だめとか審査するといった発想がなかったし、考える余裕もなかった」。規制委の発足に関わったある省庁の幹部はそう明かす。
 新しい規制組織は国会論戦で決着せず、議論は民主と自公の実務者による修正協議に委ねられた。協議が始まってから9日後の6月14日、規制委を3条委にする形で合意。原発防災の業務は「原子力防災会議」(議長は首相)が担い、その事務局を内閣府に置くことなどで決着した。

 「原子力防災会議の案が出たのは修正協議の2週間くらい前。検討した期間は、4月下旬ごろから実質1カ月余りしかなかった」。政府関係者は、そう振り返った。慌ただしい駆け引きの中、避難計画の審査は話題になることがなかった。【岡田英、荒木涼子】