2022年8月13日土曜日

「311子ども甲状腺がん裁判」詳報

 13日付の日刊ゲンダイが、主として「311子ども甲状腺がん裁判第1回口頭弁論5月26日)の東京地裁での口頭弁論を取り上げましたので、詳報として紹介します。
 当ブログでは当時下記の記事などで紹介しています。
(5月28日)福島甲状腺がん訴訟始まる 治療の過酷さ、奪われた人生を原告女性が陳述
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福島原発事故裁判「手術しないと23歳までしか生きられない」と言われ…原告の20代女性が悲痛な訴え
                           日刊ゲンダイ 2022/8/13
 今年1月、2011年の福島第1原発事故の影響で甲状腺がんが発症したとして、県内に住んでいた男女6人(当時6~16歳)が東京電力に計6億1600万円の損害賠償を求めた。この「311子ども甲状腺がん裁判」の第1回口頭弁論は5月26日、東京地方裁判所で行われている
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 原発事故をめぐる裁判は全国各地で起こっている。7月13日には東京地裁が、東京電力の旧経営陣4人に事故後に支払ってきた費用など13兆円を会社の損害と認め、元会長ら個人が会社に賠償するよう命じた。
 一方、6月17日に、原発事故で全国各地に避難した人らが国と東京電力に損害賠償を求めた4件の集団訴訟では、東京電力への賠償責任は確定しているものの、国の責任は認められなかった。そして今年裁判が始まったのが「311子ども甲状腺がん裁判」である。裁判では弁護士らが陳述し、原告の20代女性が法廷に立った。
 女性は、高校生の時にがんが見つかり、手術後に近県の大学に進学したものの、再発と転移によって中退。現在も治療中だという。法廷では、〈医師は甲状腺がんとは言わず、遠回しに「手術が必要」と説明しました。その時、「手術しないと23歳までしか生きられない」と言われたことがショックで、今でも忘れられません〉などと話している。
 1986年4月に原発事故が起こったチェルノブイリ周辺では、事故から20年後に4000人以上の甲状腺がんが発症したとされる。

少なくとも293人が甲状腺がんを発症
 裁判の原告は全員が手術を受けて、甲状腺の全部または一部を摘出したという。原発事故以降、人生は変わってしまった。
 弁護団のひとり、柳原敏夫弁護士は言う。
「争点は、原発事故に伴う放射線被ばくとがん発症の因果関係になるでしょう。小児甲状腺がんは、年間で100万人に1~2人しか発症しないことが分かっています。しかし、事故当時18歳以下や事故後1年間に生まれた県内の子どもら38万人のうち、少なくとも293人が発症しています。小児甲状腺がんで最も多い発症因子は放射線被ばくですから、因果関係は疫学的な手法で証明できると考えています」
 原告側によると、東京電力側は答弁書で「原告らは被ばくしていない」などと反論しているという。福島原発事故後の国や県の対応をめぐって、14年から福島地裁で続いてきた「子ども脱被ばく裁判」は、21年3月1日に全面敗訴している。
「県や福島市が大気中の放射線に関するデータを適切に公表していれば、住民の避難を早められた可能性があります。計131人が仙台高等裁判所に控訴しています。当時の行政の裁量権が適切だったかが争点になります」(柳原敏夫弁護士)

 先の「311子ども甲状腺がん裁判」の次回公判は9月7日に開かれる。