鹿児島県垂水市の高峠周辺で基数最大32基・総出力最大約19万2000キロワットの風力発電計画が出来上がり環境影響評価(アセスメント)の手続きに入っています。26年4月着工、29年4月の運転開始を目指します。
一方、宮城県大崎市の鳴子温泉郷観光協会は26日、鳴子温泉周辺で計画されている3つの大型風力発電事業に反対することを決めました。「国民保養温泉地の鳴子温泉郷にとって、風力発電は自然と景観に著しい悪影響を与え、観光地の価値を大きく傷つける」という理由です。再生エネを拡大することは大いに必要なのですが、なかなかうまくいかないものです。
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高峠周辺に風力発電 最大32基・19万キロワット 陸上では鹿児島県内最大規模
南日本新聞 2022/08/27
国内外で再生可能エネルギーを手掛けるユーラスエナジーホールディングス(東京)が、鹿児島県垂水市の高峠周辺で風力発電事業を計画している。4000~6000キロワット級の発電機(風車)を最大32基設置し、総出力は最大で約19万2000キロワットを見込む。稼働中の施設も含め、陸上では県内最大級の計画規模。環境影響評価(アセスメント)の手続きに入っており、2026年4月着工、29年4月の運転開始を目指す。
同社によると、事業実施想定区域は垂水、鹿屋の両市にまたがる約2500ヘクタール。風車は支柱の高さ85~105メートル、羽根の直径120~160メートルを予定する。年間を通して風況が安定しており、風力発電の好適地と判断した。
事業実施想定区域の一部に鹿児島大学の高隈演習林が含まれており、同社は「土地利用の可否について大学側と協議する」としている。今後の調査で具体的に設置場所を絞り込む。
同社は環境影響評価法に基づき、事業計画を記した配慮書を公表。県庁、垂水、鹿屋、鹿児島の各市役所などで、29日まで縦覧できる。同社ホームページでも同日まで公開している。
県エネルギー対策課が把握する県内の風力発電所は25カ所157基で、出力は計約27万キロワット。最も大きいのは長島風力発電所(21基)で5万400キロワット。このほか、洋上3カ所、陸上16カ所で環境影響評価法に基づいた手続きが進んでいる。
県内の陸上風力発電の計画では、ジャパンウィンドエンジニアリング(東京)が北薩地域で県内最大の総出力23万6500キロワットを構想していたが、競合他社との調整がつかず撤退した
大崎・鳴子の風力発電計画 「温泉郷の景観に著しい悪影響」観光協会が反対
河北新報 2022/8/27
宮城県大崎市の鳴子温泉郷観光協会は26日、鳴子温泉周辺で計画されている三つの大型風力発電事業に反対することを決めた。「国民保養温泉地の鳴子温泉郷にとって、風力発電は自然と景観に著しい悪影響を与え、観光地の価値を大きく傷つける」との見解もまとめた。
鳴子公民館で理事会を開き、全会一致で反対が決まった。菊地英文事務局長は「大崎市を象徴する渡り鳥への影響が懸念される。豪雨が頻発する中、自然災害の心配も大きい。風力発電の諸問題に拒否感を示す観光客に、敬遠される恐れもある」と理由を説明した。
理事からも「観光にはマイナスになってもプラスはない」「事業者側の概要説明はあったものの、不安を解消することはできていない」などの意見が出た。
鳴子温泉郷には鳴子、東鳴子、川渡、中山平、鬼首の5地区に観光協会があり、温泉郷観光協会は各協会代表で構成する。傘下の旅館や商店は約230社ある。
温泉郷周辺で計画されているのは、栗原市にまたがる「六角牧場風力」、加美町や山形県も含む「宮城山形北部風力」「宮城山形北部Ⅱ風力」の3事業。いずれも着工前で、国の環境影響評価手続きが進む。
六角牧場風力は市民風力発電(札幌市)などが出資する事業目的会社が、東北大六角牧場跡地に高さ最大200メートルの風車を20基建設する。総出力は7万キロワット。2025年度末の稼働を目指す。宮城山形北部風力とII風力はグリーンパワーインベストメント(東京)が計画する。70~90基と4、5基を建設。合計出力30万キロワットで26年開業を予定する。
これらの風力発電を巡っては景観や渡り鳥への影響があるとして、市民団体の「鳴子温泉郷のくらしとこれからを考える会」(大崎市)環境保護団体「日本雁(がん)を保護する会」(栗原市)「NPO法人田んぼ」(大崎市)が反対し、県や大崎市に署名を提出している。