2022年8月22日月曜日

「宝財踊り」 原発事故後、初めて復活 福島

 今年6月に一部で避難指示が解除された福島県葛尾村野行地区に伝わる郷土芸能「宝財(ほうさい)踊り」が21日、若者たちの手で原発事故後に初めて復活しました。住民たちと交流を重ねて踊りを習得した地区出身の若者と県内の高校生が発表会を開き、復興の途上にある村の人たちが感慨深げに見守りました

           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
古里思い「宝財踊り」 原発事故後、初めて復活 福島
                            毎日新聞 2022/8/21
 東京電力福島第1原発事故で帰還困難区域となり、今年6月に一部で避難指示が解除された福島県葛尾(かつらお)村野行(のゆき)地区に伝わる郷土芸能「宝財(ほうさい)踊り」が21日、若者たちの手で原発事故後に初めて復活した。住民たちと交流を重ねて踊りを習得した地区出身の若者と県内の高校生が発表会を開いた。復興の途上にある村の人たちが感慨深げに見守った
  【福島・葛尾 12年ぶり宝財踊り】
 宝財踊りは南北朝時代、今の福島県伊達市にあった霊山城(りょうぜんじょう)が落城する際に主従が変装して踊りながら逃げたことが由来とされる。県沿岸部の浜通りを中心に広まり、地区には大正時代に伝わったとされるが、原発事故の1、2年前を最後に途絶えていた。住民が散り散りとなったためだ。

 踊りを披露したのは、県立ふたば未来学園中学・高校(広野町)の演劇部の高校生ら17人。今春、高校を卒業した部OGで地区出身の大学生、半沢詩菜(うたな)さん(18)を中心に練習を重ねた。
 半沢さんが踊りに取り組んだのは高校に入ってから。小1だった2011年3月に原発事故で村を離れ、高校時代は福島県いわき市に住んでいた。東日本大震災の被災地を視察に訪れた県外の人たちと交流した際、古里について語れない自分にショックを受けた。
 2年生になり「探求」の授業で葛尾村を取り上げ、田植えや稲刈りで村を頻繁に訪れ、踊りの存在を知った。父和夫さん(49)や亡くなった祖父も踊ったという。「復活させたい」。部員も賛同し、演劇部として被災地域と交流を深めて発表会を開くことになった。
 踊りはその保存に取り組む住民から指導を受けた。発表会は新型コロナウイルスの影響で2回延期され、当初の予定から約10カ月後の開催に。2カ所で40人超が訪れた。進学先の水戸市から駆けつけた半沢さんは敵から逃げる法師役として、青とピンクの着物姿で登場。踊り手たちは笛の音色に合わせて太鼓やばち、すりこぎを手に足を交互に上げて舞った。
 踊りを堪能した村内の農業、松本邦久さん(63)は「皆避難していて、郷土芸能の継続は悩みの種だ。高校生らが取り組んでくれるのはいいこと。感動した」。半沢さんは「緊張したが楽しんでもらえてうれしい」と笑みを浮かべた。今後も古里の人々と交流を続けたいという。【肥沼直寛】