福島第1原発事故の避難者らが起こした各地の集団訴訟のうち福島など先行する4件の上告審で最高裁が6月、国の責任を否定する初の統一判断を示しました。一般に下級審は最高裁判例に拘束されるため、原告側弁護団が戦略の練り直しを進めています。
最高裁は国の責任を否定した反面、重要争点について明確に判断していません。そこで控訴審では、従来通り規制権限を行使して東電に津波対策を指示しなかった国の「不作為」の違法性に加え、国策で原発を推進した「作為」の違法性を追及するとしています。また最高裁が判断を明示しなかった津波の予見可能性などの論点の立証にも力を割くということです。
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新たな論点での主張を模索 原発賠償訴訟で原告側 国の「作為」追及へ
福島民報 2022/8/12
東京電力福島第一原発事故の避難者らが国や東電に損害賠償などを求めた各地の集団訴訟で、原告側弁護団が戦略の練り直しを進めている。福島(生業=なりわい)など先行する4件の上告審で最高裁が6月、事故に対する国の責任を否定する初の統一判断を示したためだ。地裁や高裁で係争中の同種訴訟は主な争点が4件と共通し、一般に下級審は最高裁判例に拘束される。各弁護団は国の責任を認める判決を得ようと新たな論点での主張を模索。重要争点を明確に判断していない最高裁に疑問を呈し、法廷に臨む。
原発事故で帰還困難区域となった浪江町津島地区の住民約650人が国と東電に賠償や地域の原状回復を求めた訴訟は、控訴審が9月28日に仙台高裁で始まる。「各地の避難者訴訟は新たな局面に突入した」と弁護団事務局長の白井剣弁護士(63・東京)は最高裁判決の影響を表現する。
昨年7月の地裁郡山支部判決は、国の地震調査研究推進本部が2002(平成14)年に公表し、福島県沖での津波地震の危険性を指摘した地震予測「長期評価」の信頼性を認め、国は津波を予見できたと認定。国の責任論に関しては「原告勝訴」と言える内容だ。
ただ、弁護団は一審判決の約1年後、二審開始前に示された統一判断の影響を警戒する。6月17日の最高裁判決直後から戦略の見直しに入った。
控訴審では従来訴えている、規制権限を行使して東電に津波対策を指示しなかった国の「不作為」の違法性に加え、国策で原発を推進した「作為」の違法性を追及する。十分な安全性を確保せず原発を稼働させた責任はあるはずと訴える。最高裁が判断を明示しなかった津波の予見可能性などの論点の立証にも力を割く。
白井弁護士は「最高裁判決をいかに克服するかは後続訴訟に共通する課題だろう」と他の事件の動向にも関心を寄せる。
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一方、審理が既に進行中のケースでは、新たな論点の追加や主張を大幅に軌道修正するハードルはより高い。
いわき市民約1300人が国と東電に賠償を求めた訴訟は仙台高裁での控訴審が大詰めを迎えている。10月4日と11月29日の2度の口頭弁論を経て、結審する方針が示されている。