2022年8月11日木曜日

フクシマ後に脱原発を決めたドイツ人が今は原発を増やしたいと

 現在ドイツでは3つの原発が稼働していますが、それらは22年末で閉鎖されることになっていますドイツの市場調査会社が8月上旬、5000人以上に対してオンライン調査を実施したところ、予定通り3つの原発を年内に稼働停止することに賛成した回答者は22%で、78%は少なくとも23年夏までの原発稼働継続を望んでいました。
 うち67%の回答者は、今後5年間は原子力発電所の運転を継続することに賛成し、41%の回答者は、ドイツが新しい原発を建設する必要があると回答しました。

 33年前に行われたある世論調査では、ドイツが新しい発電所を建設すべきと答えた人はわずか3%ったので驚くべき変化です背景にはかつて反対運動を展開してきた世代がもう60代以上になったことと、逆に若い環境活動家世代は、原発にはそれほど関心がなく、まず化石燃料による発電停止が必要と考えていることがあります。
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フクシマ後に脱原発を決めたのに、今度は原発を増やしたいドイツ人
                       クーリエ・ジャポン 2022/8/10
原発アレルギーのあったドイツ
ドイツ南部のバイエルン州で現在も稼働するイザール原子力発電所。原発の稼働継続を求める声がドイツでは野党などから高まっている。1986年にチョルノービリで起きた原発事故を間接的に経験したドイツでは、長年、反原発意識が高かった。かつては使用済み核燃料の輸送を何百人もの人々が妨害し、警察が抗議者を逮捕するといった激しい反原発運動が数多く起きていた。
そして2011年に起こった福島第一原発の事故により、脱原発を求める風潮はさらに強まり、当時のメルケル首相は原発の段階的廃止を決定した。
しかし、独誌「シュピーゲル」によると、最近のエネルギー危機を受け、ドイツの原発をめぐる世論は大きく変化し、原発稼働を求める声が高まってきているという。

現在ドイツでは3つの原発が稼働しているが、それらは2022年末で閉鎖されることになっている。独フラウンホーファー研究所によると、2022年前半には、これらの原発で全国の電力の6.3%が作られていた。
一方、ウクライナ侵攻が始まるまで、ドイツはロシアから多くの天然ガスを輸入し、発熱や発電に利用してきた。2022年前半には、ガスから10%程度の電力が作られていた。
しかし現在、ロシアからドイツへのガス供給量は制限され、この冬にガスや電力が不足するのではないかという恐れが出てきている。特に、工業地帯が集まり、ガス依存が強かった南部のバイエルン州で電力が不足する懸念からさまざまな議論が起こり、市民の間でも不安が高まっている

原発継続賛成が過半数に
そんななか、独市場調査会社のシヴェイ社が8月上旬、ドイツの5000人以上に対してオンライン調査を実施したところ、驚くべき結果が出た。予定通り3つの原発を年内に稼働停止することに賛成した回答者は、22%しかいなかったのだ。
その他78%の回答者は、少なくとも2023年夏までの原発稼働継続を望んでいた。この期間であれば、新しい燃料棒は購入しないで済むのだ。
また、67%の回答者は、今後5年間は原子力発電所の運転を継続することに賛成している。これに反対する回答者は27%いるが、そのほとんどは緑の党の支持者だ。環境政党である同党は、脱原発運動を長く展開してきた。
なお、産業界から支持を受け、連立政権入りしている自由民主党(FDP)などは、2024年までの原発稼働延長を求めている。今後5年間の延長に賛成している過半数の回答者は、現在の政界での議論より先を行っていることになる。
さらに、41%の回答者は、ドイツが新しい原発を建設する必要があると回答した。この点については、ドイツでは現在ほとんど議論すらされていない。33年前に行われたある世論調査では、ドイツが新しい発電所を建設すべきと答えた人は、わずか3%しかいなかった。驚くべき世論の変化だ
なお、シュピーゲルの別の記事によると、緑の党から選出されている連邦経済・気候保護大臣のロバート・ハーベックも、原発の運転継続を否定していない。現在、電力のストレステストを実施しており、その結果次第では原発を停止しないこともあり得ると述べている。
しかし、原発の稼働を継続しても、節約できるガスは0.5~0.7%程度だということをハーベックは強調している。原発の稼働はあくまでも、万が一の危機的な状況に備えるかどうかという観点からみているようだ。

反原発派の高齢化
何十年も脱原発を掲げてきたドイツで原発を認めるような世論が出てきているのには、かつて反対運動を展開してきた世代の高齢化があるのかもしれない。チョルノービリの事故を受けて活動していた世代は、もう60代以上だ。
気候変動対策を求める国際的な草の根運動「フライデー・フォー・フューチャー」に参加しているような若い環境活動家世代は、原発にはそれほど関心がない。彼らの優先順位は、まず化石燃料による発電停止なのだ。
一方、気候変動の影響を目の当たりにし、最近原発を肯定するようになったという53歳の女性も南ドイツにいる。二酸化炭素を排出しない原発の活用は環境保護になると考え、「核のための母たち」という組織で原発推進を訴えている。
71歳の男性フェリックス・ルーヴェは、住んでいたドイツ西部のアハウスの街に使用済み核燃料が貯蔵されたことから、かつて激しく反原発運動を行った1人だ。当時は反対団体を結成し、2000年前後にもっとも激しく活動していたという。
ルーヴェたちは言う。「もうみんな年寄りだ。私たちがいなくなれば、抵抗勢力はいなくなる」