2022年8月18日木曜日

飯舘村でバイオ発電 森林再生に生かせ

 飯舘村が誘致した蕨平行政区の木質バイオマス発電施設は今月末に着工し、24年春に運転を開始します。福島県内産の樹皮や間伐材を燃やして電力を生み出すもので、発電量は一般家庭約17000世帯の年間消費量に相当する約5300万キロワット時です。福島第1原発事故が発生して以降滞っている双葉郡などの森林再生につなげることを構想しています。

 ところでバイオマスエネルギーには、木質燃料、バイオ燃料(バイオエタノール)、バイオガスなどあります。バイオエタノールや生ごみ・家畜の糞尿を発酵させて得られるメタンガスを燃焼させてもCO2を発生させないことは分かりますが、木質(間伐材や樹皮)を燃やすのが何故「脱炭素」になるのかについては、「植物は燃やすとCO2を排出しますが、成長過程では光合成により大気中のCO2を吸収するので、排出と吸収によるCO2のプラスマイナスはゼロになる」からです。間伐は森林再生のために行うものなので、そうした長期的な観点で理解すべきものとされています。
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【飯舘のバイオ発電】森林再生に生かせ
                            福島民報 2022/8/17
 飯舘村が誘致した蕨平行政区の木質バイオマス発電施設は今月末に着工する。県内産の樹皮や間伐材を燃やして電力を生み出し、東北電力に売電する。安定的な燃料流通体制を整え、東京電力。
 発電施設は国の福島再生加速化交付金を用いて整備し、二〇二四(令和六)年春に運転を開始する。飯舘村を中心とした被災市町村の間伐材と、産業廃棄物として処分することが多かった浜通り地方などの樹皮を燃料にする発電量は一般家庭約一万七千世帯の年間消費量に相当する約五千三百万キロワット時で、東京電力ホールディングスやゼネコンなどが出資した「飯舘バイオパートナーズ」が運営する
 原発事故による避難区域が設定された市町村は、放射線量が高くて林業を営めない区域が残る上、担い手不足や放射性物質による木材流通への懸念などもあって伐採が進んでいない。広葉樹林もシイタケ栽培の原木として出荷できない状況が続いている。
 発電施設は、再生可能エネルギーの固定価格買取(FIT)制度に適合する木質燃料を年間約九・五万トン使用する。放射性物質を含む焼却灰などの拡散を防ぐため、環境省が稲わらなどを焼却してきた仮設減容化施設で実績のあるフィルターを装備する。運営会社は、開所までの二年間で、施設の安全性についての県民の理解を高める努力が欠かせない。排煙部や周辺の放射線量の監視体制、その結果の公表方法を明示することが重要になるだろう。
 施設の安定的な稼働は、被災地の木材生産の復活ばかりでなく、森林の再生にも結び付く。木質燃料の供給を県内で全て賄うのが望ましいが、燃料として使用するための条件となるFIT制度に適合すると認定されている製材業者はまだまだ少ないという。県木材協同組合連合会は伐採、木材生産を続けていくため、組合員に認定の取得を強く促してほしい。
 県産材の需要をこれまで以上に掘り起こさなければ、林業従事者の増加や伐採の加速化はなしえない。国、県は、市町村が実施する作業道の整備や間伐に対して財政支援している。伐採が終わるまで予算措置を継続するとともに、責任を持って県産材の利用を促す取り組みを強化すべきだ。県は木材の表面放射線量の測定を通した安全情報の発信に加え、木材運搬経費の補助を手厚くするなどきめ細やかなてこ入れ策を検討するよう求めたい。(円谷真路)