2022年12月15日木曜日

防衛費財源案...復興税転用なぜ今 被災者、政府議論に厳しい目

 防衛費増額の財源に福島原発事故からの復興再生が目的の復興特別所得税の一部を流用することに福島県内から疑問の声がやみません。これまで政府は福島の復興は最優先課題だと繰り返し言っており、今でも除染は一部でした進んでいないのですから当然です。

 県民からは「いまだ(除染が進まず)自宅に帰れない人がいる状況で、どうしてこんな話が出るのか」「処理水の処分方針も政府が一方的に決めており、同じような構図で進められている」と不信の声が上がっています。
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防衛費財源案...復興税転用なぜ今 被災者、政府議論に厳しい目
                           福島民友 2022/12/15
 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興、再生が目的の復興特別所得税の仕組みを防衛費増額の財源に活用する案に、県内から疑問の声がやまない。秋葉賢也復興相は「復興予算が削られることは断じてない」と繰り返すが、被災者を中心に復興事業への影響を心配する意見が上がる。未曽有の災害に見舞われた被災者の生活を再建するため、国民全体で負担を分かち合うという制度の趣旨が変わりかねないだけに、政府、与党の議論に厳しい目を注いでいる。
 震災と原発事故当時に富岡町に住んでいた会社役員鈴木浩三さん(45)は「被災地では商業や観光も戻っておらず、依然として厳しい状況。復興に影響が出なければいいが...」と不安を口にした。
 いわき市に移り、飲食店を営む鈴木さんにとって増税も死活問題だ。新型コロナウイルス禍に物価高が重なり、自身の報酬を削りながら何とかやりくりしているという。「震災や新型コロナ禍を乗り越えようと踏ん張ってきた。防衛力強化の必要性は理解するが『なぜ今なのか』の言葉に尽きる」と厳しい表情を浮かべた。
 今回の案では、2037年まで所得税額に2.1%を上乗せする復興特別所得税の税収の一部を防衛費に回す代わりに、37年より後も課税を続け、復興財源の総額を確保する。復興庁は「復興債として将来の税収を先食いする形で、既に事業は進んでいる」(幹部)とし、被災地に影響はないと強調する。ただ、年間の税収が当初見込みより減れば、復興債の償還が長引く恐れがある。
 本県には原発事故による帰還困難区域が残り、復興が緒に就いたばかりの地域も抱える。「いまだ自宅に帰れない人がいる状況で、どうしてこんな話が出るのか」。富岡町の30代公務員女性は、現下の国際情勢から防衛費増額には一定の理解を示す一方で「復興がまだ終わっていないのに、防衛費に活用するのは理解できない」と表情を曇らせた。
 第1原発で発生する処理水の海洋放出方針を巡っては影響が長期化する可能性もあり、風評抑制や安全確保に向けた対策の予算確保が求められる。いわき市の漁業者志賀金三郎さん(75)は、今回の案が国民に唐突に示されたことに触れ「処理水の処分方針も政府が一方的に決めており、同じような構図で進められている」と不信感をあらわにする。「復興特別所得税を別の用途に使うのであれば、国民への説明が必要だ」と納得のいく説明を求めた。

自民議員「理解得られぬ」
 今回の案には自民党の本県関係国会議員からも公然と異論が出ている。「復興特別所得税は国民みんなで東北を救うためにつくった目的税だ。防衛目的税をつくった方がすっきりする」。14日午後、党本部で開かれた税制調査会の会合後、自衛官出身の佐藤正久元外務副大臣(参院比例、福島市出身)は苦言を呈した。
 防衛費の税負担を巡って「為政者にとって税を上げることは簡単だが、最後の手段だ。ほかに(防衛財源に回せる)税外収入はないのか、やり繰りした上で国民にお願いするべきだ」と語気を強めた。
 会合に出席した菅家一郎元復興副大臣(衆院比例東北)も「(復興特別所得税を)防衛費に充てることに県民の理解を得るのは難しいと肌で実感している。慎重に対応するべきだ」と訴えた。
 一方、野党からは今回の案に「完全な流用だ」と厳しい批判が相次いでいる。
 旧民主党政権時代に党政調会長として、復興特別所得税の創設に携わった立憲民主党の玄葉光一郎元外相(衆院福島3区)は「厳しい経済状況の中で国民にお願いし、理解と納得を得て導入した復興のための財源だ。防衛費に流用するのは文字通り悪のりで邪道だ」と切り捨てた。