2022年12月25日日曜日

原子力規制委 福島事故の反省どこへ 京都新聞社説

  原子力規制委が原発の60年を超える長期運転を可能にする安全規制の見直し案を、まるで既定の予定であったかのように容認したことを京都新聞が社説で批判しました。

 同紙は、原発の安全性を確認する具体的な方法を示すこともなく、科学的根拠もなく経産省の見直し案に合意するものであると批判し、推進側と距離を置いた原点に立ち返らねばならないと警告しました。
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社説:原子力規制委 福島事故の反省どこへ
                           京都新聞 2022/12/23
 東京電力福島第1原発事故から来春で12年。今なお事故処理は続いているのに教訓は忘れられたのか。国民の不安は拭えない。
 原子力規制委員会が、原発の60年を超える長期運転を可能にする安全規制の見直し案を了承した。原発活用を目指す経済産業省と歩調を合わせた形で、丁寧な議論もなくわずか3カ月で容認した。
 何のための規制委かと言わざるを得ない。事故を反省し、規制と推進を分離するために環境省に発足した独立性の高い組織としての役割が根底から疑われる。
 安全に絶対はなく、問題があれば必ず安全の側に軸足を置くのが事故の教訓であり、規制委の原点だったはずだ。それをないがしろにし、政府の原発回帰に追随するばかりなら存在意義はない
 新たな規制案は、運転開始30年後から10年以内ごとに設備の劣化状況を確認することが柱だ。事故を受けて運転期間は「原則40年、最長60年」としてきたが、規制上は上限がなくなる
 だが60年以降で安全性を確認する具体的な方法は示さず、点検方法など詳細な検討は先送りした。老朽原発は原子炉の耐久性など未知数な点が多く、世界でも60年超運転の前例はない。
 規制委は今年9月で発足10年となった。3代目の山中伸介委員長は就任前に40年ルールは短いとも発言したが、「経年劣化が進めば進むほど、規制基準に適合するかの立証は困難」と述べてきた。
 それなら、なぜ運転上限の撤廃に突き進むのか。「見直しで規制は厳しくなる」と強調するが、何をもって担保されるのか。科学的根拠もなく規制が見直されるなら、甚大な災禍を招いた「安全神話」の復活にほかならない
 福島の事故後、原発政策は「依存度低減」を掲げてきたが、エネルギー価格の高騰などを理由に、岸田文雄首相は8月に原発の最大限活用へと方針を大転換した。
 政府はきのう、脱炭素の方策を議論する会議で、次世代型原発への建て替えや運転期間延長を盛り込んだ基本方針を決めた。再稼働のための審査対応で停止した期間を計算から除外し、60年を超える運転を可能にする。
 規制委は厳格な規制を維持できるのか。推進側と距離を置いた原点に立ち返らねばならない
 福島原発の廃炉作業や被災者の避難生活は今も続き、ウクライナ危機は原発が攻撃対象となる危うさを浮き彫りにした。第一に向き合うべきは国民の不安である。