2022年12月19日月曜日

電力 カルテル問題 計1000億円の課徴金命令へ(続報)

 先に大手電力会社が、企業向け電力販売に関し互いに顧客獲得を制限するカルテルを結んでいたとして摘発され、中部電力など3社と一部子会社が計1000億円の課徴金を命じられる見通しと伝えられました。
     ⇒(12月3日)関西電、中国電、中部電、九電が事業用電力販売カルテル
 ジャーナリストの白井俊郎氏が取り上げましたので続報として紹介します。
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電力カルテル問題...計1000億円の課徴金命令へ 中国電、来春の電気料金「値上げ」申請中...審査への影響は?
                      白井俊郎 J-CAST 2022/12/16
                           ジャーナリスト
大手電力会社が、企業向け電力販売に関し、互いに顧客獲得を制限するカルテルを結んでいたとして摘発され、中部電力など3社と一部子会社が計1000億円の課徴金を命じられる見通しになった。
従来の供給エリアを越えて競争することで電力料金の水準を引き下げよう、という電力自由化の根幹を揺るがす事件だ。
折しも、原油・液化天然ガス(LNG)の価格高騰を受けて、電気料金は1年前から2割程度値上がりしているだけに、消費者の反発は避けられない。

主導したとされる関電は課徴金免除?...リーニエンシー制度で
公正取引委員会は2022年12月1日、中部電力と販売子会社「中部電力ミライズ」(いずれも名古屋市)、中国電力(広島市)、九州電力と販売子会社の「九電みらいエナジー」(いずれも福岡市)の大手3社と2子会社に対し、独占禁止法違反(不当な取引制限)に当たる行為があったとして、過去最高となる計1000億円超の課徴金納付を含む処分案を通知した。内訳は、中国電700億円超、中部電と子会社計約275億円、九電約27億円。各社の意見を聞いたうえで、22年度内にも正式に行政処分を出す。
公取委は21年4~7月に各社を立ち入り検査し、違反行為の有無について調査していた。

関係者によると、2018年秋以降、中部電・子会社、中国電、九電・子会社の3社・グループは、今回の処分対象になっていない関西電力(大阪市)とそれぞれ個別に、カルテルを結んでいた。
具体的には、大規模工場やデパートが対象の「特別高圧」電力、中小規模工場やビル向けの「高圧」電力など企業向け電力の販売について、安値競争を避けるため、自由化前のそれぞれの営業エリアを互いに維持し、競争を制限する合意をした――とされる。関電側が各社に対して提案したとみられ、20年10月まで続いたという。
関電が主導したかたちだが、不正を最初に自主申告したとして、課徴金を免れることになるとみられる。
関電が利用したのが、課徴金減免(リーニエンシー)制度だ。2006年、欧米にならい導入された。談合やカルテルの多くが「密室」で行われるため、違反行為の情報提供につなげようとの狙いだ。
違反を自主申告し、減免を申請すれば、自らがその不正に関わっていても、課徴金を減免される。申請順位や調査への協力度合いによって、減免率が変わる。全額免除される見通しの関電は、21年4~7月の立ち入り調査前に違反を自主申告したとみられる。

関電では元役員らが福井県高浜町の元助役から金品を受領していた問題が2019年に発覚し、八木誠会長、岩根茂樹社長(いずれも当時)ら経営陣が退陣に追い込まれた。そこからの信頼回復を図る過程で、今回のカルテル問題での自主申告につながった、との見方が出ている。
ただ、カルテルについて、関電は公式のコメントは一切しておらず、課徴金の対象になった3社などから「関電に巻き込まれ」などの不満が渦巻き、市場などでも関電の説明責任を問う声が強い。

カルテルの背景、電力販売の自由化後に激しさ増した競争
大手電力はかつて、地域の電力販売の独占を法律で認められていた。
公益事業として、安定供給を優先することは、いわば常識だった。しかし、日本の電力料金が国際的に割高なことから、国は、コスト削減やサービスの多様化を目的に自由化に舵を切った。
まず2000年に特別高圧が自由化され、04~05年にかけ高圧に拡大され、16年に家庭向けの「低圧」が加わり、電力販売は全面自由化された。
こうして各社は、従来の営業エリアを越えて競争するようになった。
典型的なのがコンビニ大手セブン―イレブン・ジャパンで、15年に関西の約1000店舗の電力契約を、関電から東京電力に切り替えた。その一方、18年には中国、四国、中部の各電力のエリアにある約3000店の契約を関電にした
こうした動きはサービス競争といっても、実質的には低価格を提示して顧客を奪い合うもので、各社のもうけが先細ることになり、今回のカルテルにつながったわけだ。

電力大手では、家庭用の規制料金について、6社が来春から30%程度の引き上げを申請して、国の審査を受けている。
原料価格の上昇分は「基準価格の1.5倍」まで転嫁が認められているが、この分を使い切ったため、値上げ申請に踏み切った(J-CASTニュース 会社ウォッチ「東北電力と中国電力、経産省に『規制料金』引き上げ申請...ほか4社続く見込み そうせざるを得ない『背に腹は代えられない』事情」 2022年11月29日付参照)。
この6社には中国電が含まれる。同社は2023年3月期決算の見通しで、純損益を1390億円の赤字と見込んでいたが、課徴金分を引き当てるとして、赤字額を2097億円に修正した。
これが値上げの審査にどう響くかは不明だが、値上げするためには厳しいコスト削減努力が求められ、役員報酬カット、株主配当の減配または見送り、従業員の給与削減などを迫られる可能性もある

中国電はカルテル問題で、一段と厳しい対応を迫られることになった。(ジャーナリスト 白井俊郎)