2022年12月3日土曜日

関西電、中国電、中部電、九電が事業用電力販売カルテル

 2000年以降、電力が段階的に自由化されたことに伴って、西日本ある大手4社が顧客獲得競争をやめるためのカルテルを21年7月までに結んだとして公正取引委員会から1000億円超の課徴金納付を求める処分案を通知されました(カルテルの構造は読売新聞の「図解」を参照してください)。公取委の幹部は「電力自由化の理念をゆがめる行為悪質だ」と指摘しました。

 課徴金の内訳は中国電力が約707億円、中部電力が約275億円、九州電力が約27億円です。このカルテルを首謀した関西電力は違反の自主申告により処分を免れる見通しで、各社からは不満が漏れています。
 関西電力が自主申告した背景には、19年9月に高浜町の元助役(故人)から、複数の関電幹部が金品を受領していた問題が発覚した際に、カルテルも明るみに出る惧れがあったためということですが、何の言い訳にもなっていません。
 中国電、中部電、九電各社の課徴金に関する記事は別立てで紹介します。
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関電主導のカルテルなのに…電力各社、関電の「無罪放免」に怒り
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 顧客獲得競争をやめるためのカルテルを結んだとして、西日本などにある大手電力各社が1日、計1000億円超の課徴金納付を求める処分案を通知されたカルテルの中心になったという関西電力(大阪市)は違反の自主申告により処分を免れる見通しで、各社からは不満が漏れるが、公正取引委員会の幹部は「電力自由化の理念をゆがめる行為をした各社は、いずれも悪質だ」と指摘する。
   【図解】ひと目でわかる「事業用電気販売」を巡るカルテルの構図
 電力の販売は長年、各地域の大手が独占していたが、2000年以降、段階的に自由化され、新規参入や他地域への販売ができるようになった
 関係者によると、関電は17年以降、1件あたりの売り上げが大きい「特別高圧」や「高圧」の契約を取るため、中部電力(名古屋市)、中国電力(広島市)、九州電力(福岡市)の各エリアで営業を強化。顧客の獲得や価格面での競争が激化し、各社の収益も悪化したため、関電の役員らが各社の役員クラスの幹部らに、カルテルを持ちかける形で「手打ち」を行ったという。
 一方、公取委に最初にカルテルを申告したのも関電で、課徴金納付などの処分は免れるとみられる。
 中国電の関係者は「関電主導なのに、課徴金がないのは納得ができない」と話し、九電の関係者も「うちは関電から持ちかけられ、カルテルに応じた。関電がおとがめなしなのはおかしい」と怒りをあらわにした。
 ただ、公取委幹部は「国民生活に欠かせないインフラを担う電力各社が、自由化の流れに逆行するカルテルを結んでいた」と言及。さらに「コンプライアンスを重視すべき役員らが主導して行ったカルテルで、悪質だ」と指摘する。
 中国電は1日、公取委から処分案の通知を受けたことを公表し、「今後の対応は公取委から証拠などに関する説明を受けた上で、慎重に検討する」とコメント。中部電は「通知の内容を精査し、対応を慎重に検討する」、九電は「通知を厳粛に受け止め、今後の対応を検討する」などとした。
 関電は読売新聞の取材に「公取委の調査に全面的に協力している」とコメント。関電の関係者は「他地域で利益が出なければ撤退すれば良かった。手打ちにしてカルテルを結んだのはまずかった」と話した。公取委は昨年、関電と中部電、中国電、九電などに対し、独占禁止法違反容疑で立ち入り検査を実施していた


値下げ競争から方針転換 カルテル主導の関電 他社幹部「もらい事故」
                             時事通信 2022/2/2
 大手電力会社のカルテル問題で、電気料金の値下げ競争が激化し、利益率の低下を懸念した関西電力がカルテルを主導していたことが1日、関係者への取材で分かった。
 関電は2017年7月、高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の再稼働を受け、電気料金を値下げすると明らかにした。企業向けの値下げ率は平均4.9%。東京電力福島第1原発事故後、2度にわたり値上げを実施し、顧客の流出が続いていた関電にとって、反転攻勢のきっかけとなった。
 18年春にはセブン―イレブン・ジャパンが中部、中国、四国地方で3000店以上構えるコンビニへの電力供給を開始。他社の大口取引先を奪うなど顧客獲得競争に注力する一方、「利益率は値下げの影響で薄くなっていた」(関係者)という。
 業界関係者によると、さらなる競争は経営に響くとみた関電は、他社エリアへの進出を抑制する方針に転換した。中部電力や九州電力などの幹部に対し、互いのエリア外での営業を見合わせるよう持ち掛けたとされる。
 しかし、19年9月に高浜原発が立地する高浜町の元助役(故人)から、複数の関電幹部が金品を受領していた問題が発覚。社内では、カルテルも意図しない形で明るみに出る事態を懸念する声が上がり、課徴金減免制度に基づき違反を自主申告する判断に傾いたという。
 関電が自主申告で課徴金を免れる見込みとなったことについて、処分案の通知を受けた他社の幹部は「釈然としないというか、われわれからしたらもらい事故みたいなものだ」と話した。