2022年12月20日火曜日

柏崎刈羽 信頼回復は遠いと 福島民友

 原子力施設のある地域の地方紙でつくる地方新聞エネルギー研究会は10月、柏崎刈羽原発で改善措置の状況を視察しました。福島民友がその内容を報じました。

 大半はこれまで報じられていることですが、東電は新に発電所内にセキュリティ管理部を設け、6号機の上層部「オペレーティングフロア」に入る際、生体認証でチェックするなど監視態勢強化しました。設備予算も200億円規模から580億円規模に拡大したということです。福島民友の記事を紹介します。
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柏崎刈羽、遠い信頼回復 東京電力、不祥事防止へ危機意識共有
                           福島民友 2022/12/19
 東京電力が再稼働を目指す柏崎刈羽原発(新潟県)でテロ対策の不備など不祥事が相次ぎ、東電の信頼回復に向けた取り組みが問われている。不信感が募れば、事故を起こした福島第1原発の廃炉作業に影響を及ぼしかねない。原発に関わる事業者として、社員一人一人が危機意識を共有するなど不祥事を防ぐ社内体質の改善が求められている。

危機意識「甘い部分」
 原子力施設のある地域の地方紙でつくる地方新聞エネルギー研究会は10月、柏崎刈羽原発で改善措置の状況を視察した。一連の不祥事について大東正樹副所長(56)は「本来、認識していかなければならないところで、捉え方に甘い部分があった」と危機意識の甘さを認めた。
 同原発では原子力規制委員会による検査で2020年3月以降、テロ目的などの侵入を検知する設備が故障し、代替措置も不十分だったことが判明した。20年9月には所員が同僚のIDカードを無断で持ち出し、中央制御室に不正に入室する問題も起き、規制委は21年4月、核燃料の移動を禁じる事実上の運転禁止命令を出した。再稼働に「待った」がかかり、東電の担当者は「地域の理解なくして再稼働はない」と信頼回復に努める考えを強調する。

改善策、あいさつから
 一連の不祥事を受け、東電は核物質防護に関わる36項目の改善策に取り組む。発電所内にセキュリティ管理部を新設して人員体制を見直し、設備予算も200億円規模から580億円規模に拡大。視察では6号機の上層部「オペレーティングフロア」に入る際、生体認証が必要となるなど監視態勢が強化された。
 東電は、社員や協力企業の作業員とのコミュニケーション不足が不祥事の背景にあるとする。改善策として幹部らが朝、正門に立つなどして「あいさつ運動」に力を入れていると説明したが、基本から見直さざるを得ない異常な状況が浮かぶ。

対応は後手「お粗末」
 地元の行政や経済界、住民は不祥事をどう受け止めたのか。研究会は桜井雅浩柏崎市長(60)や西川正男柏崎商工会議所会頭(66)に話を聞いた。いずれも再稼働に容認の立場だが、不祥事を受け東電には厳しい視線を注ぐ。
 「一言で言えばお粗末」。桜井市長は不祥事後に生体認証を強化するなど後手を踏む東電の対応を嘆く。不祥事を巡る東電の対策を「努力している」と評価しつつも、社員一人一人に緊張感や危機意識が浸透していないと指摘する。西川会頭も「信頼関係が崩れた」とし、東電に申し入れ書を提出して抗議したことを明らかにした。
 原発反対運動を続ける刈羽村民の武本和幸さん(72)は「国は必死に再稼働させようとしているが、本当に動かせるのか」と述べ、使用済み核燃料の処理を含めた国の核燃料サイクル政策に疑問を呈する。再稼働への歩みを進めたい東電だが、忘れてはならないのが原発事故の教訓だ。柏崎刈羽原発内のビジターハウスには、"福島復興への責任"と書かれたパネルが張られていた。その言葉にどう向き合い、どう行動で示していくのか。国民が注視している。(報道部・水野智史)