河北新報が行った共同調査で、岩手、宮城、福島3県の沿岸部の被災者の20・4%が、震災前と比べ暮らし向きが「厳しくなった」と感じています。「楽になった」は19・1%、「変わらない」は60・5%でした。
震災を「常に意識している」は沿岸部被災者28・2%、「ほとんど意識しない」は、沿岸部被災者18・1%に対し、沿岸部の非被災者は40・6%、首都圏は46・5%でした。
新型コロナウイルスの流行下で自治体から避難を求められた場合、独自に感染防止策を講じて避難所に行くことを「想定している」は33・3%で、「今は考えてない」は37・3%、「行かないと思う」は29・5%でした。
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震災10年ネット調査 暮らし向きは改善傾向 被災者の2割、依然「厳しい」
河北新報 2021年3月3日
東日本大震災で被害を受けた岩手、宮城、福島3県沿岸部の被災者の20・4%が、震災前と比べ暮らし向きが「厳しくなった」と感じていることが2日、河北新報社とマーケティング・リサーチ会社マクロミル(東京)の共同調査で分かった。2020年の前回調査から4・8ポイント減り、改善傾向が続いた。(報道部・小沢邦嘉)
暮らし向きが「楽になった」と回答した割合は、前年比1・0ポイント低下し19・1%。「変わらない」は5・8ポイント上昇し60・5%だった。
21年までの計5回の調査結果の推移はグラフの通り。「厳しくなった」と回答した割合は17年調査時より22ポイント低下し、「楽になった」は11ポイント上昇した。改善傾向が目立った半面、依然として約2割の被災者が生活面の支援を必要としている状況が明らかになった。
「厳しくなった」を選択した被災者からは「住宅再建や失った家財の購入で、出費やローン返済額が増えた」などの意見が寄せられた。「復興が完全ではない状態で、新型コロナウイルスの影響が広がっている」との指摘もあった。
被災3県の内陸部や首都圏などを含む回答者全体の暮らし向きは、震災前に比べて「楽になった」が15・0%、「変わらない」が72・1%、「厳しくなった」が12・9%だった。
沿岸部の被災者に「復興が遅れていると思う分野」(三つまでの複数回答)を尋ねた結果、最多が「風評被害対策」28・2%。「防潮堤・高台移転」25・6%、「除染」23・0%と続いた。
震災を意識する頻度について「常に意識している」は沿岸部被災者28・2%(前年比0・6ポイント減)だった。一方で「ほとんど意識しない」は、沿岸部被災者の18・1%(0・3ポイント増)に対し、沿岸部の非被災者は40・6%(6・9ポイント増)と大きな差があった。首都圏は46・5%(5・5ポイント増)だった。
[調査の方法]1月29日~2月3日、マクロミル社が保有する20代以上のネットモニター1524人から回答を得た。内訳は(1)被災3県沿岸部の被災者309人(2)被災3県沿岸部の非被災者278人(3)被災3県内陸部312人(4)青森、秋田、山形3県313人(5)首都圏(東京、埼玉、千葉、神奈川1都3県)312人。仙台市は宮城野区、若林区を沿岸部と見なした。
被災経験が防災意識底上げ 津波「すぐ高台」74%に
河北新報社とマクロミル(東京)は東日本大震災に関する共同調査で、震災10年を前に防災意識について聞いた。地震に備えた家具などの転倒防止策や食糧備蓄など8分野に関して、岩手、宮城、福島3県の沿岸部被災者が「取り組んでいる」割合は、全分野で回答者全体の平均を6~20ポイント程度上回った。
震災をきっかけに被災者の防災意識が向上したとみられる一方、同じ沿岸部でも非被災者は平均を下回る分野が目立つなど、被災経験の有無や地域によって差が見られた。
全8分野のうち、地震・津波災害への備えに相当する5分野の回答状況を見ると、被災者が「取り組んでいる」割合が最も大きかったのは、津波防災に関連した「海沿いにいて大地震が起きた際、すぐ高台に逃げる」の74・8%で、平均を20・1ポイント上回った。
高台避難の意識があると回答した被災者のうち、「震災前からあった」との回答は23・0%、「震災後から意識した」が51・8%だった。大地震に備えた「自宅の家具などの転倒防止策」に取り組む割合も、被災者が63・1%と全体を13・1ポイント上回った。
一方で、3県沿岸部の非被災者のうち、津波に備えた高台避難の「意識がある」と回答した割合は55・0%。平均をやや上回ったが、被災者と比べ約20ポイント低かった。家具などの転倒防止策に「取り組んでいる」との回答は37・1%にとどまり、平均を12・9ポイント下回った。
2月13日に福島、宮城両県で最大震度6強を記録した地震を受け、同20~22日に追跡調査(回答率93・6%)し、同じ8分野について「取り組む考えがあるか」と聞いた。「家具などの転倒防止策」は70・5%で、本調査と比べ20・5ポイント増えた。「食糧・飲料の備蓄」も同じく21・2ポイント増えて78・6%となり、直近の地震により防災意識が高まったとみられる。
コロナ流行下の避難所利用 「想定」33%、「行かない」29%
新型コロナウイルスの流行下で地震や豪雨災害が発生し、自治体から避難を求められた場合の行動を聞いた。独自に感染防止策を講じて避難所に行くことを「想定している」は33・3%にとどまり、「今は考えてない」(37・3%)を下回った。「行かないと思う」は29・5%だった。
マイカーなどでの車中泊避難を「想定している」は41・2%で避難所の利用を上回った。感染への懸念から、避難所の利用をためらう人が多い状況が浮かび上がった。
ホテルなど宿泊施設への避難を「想定している」は26・1%、親戚や知人の家への避難は29・1%だった。岩手、宮城、福島の被災3県沿岸部の被災者に限ると、いずれの項目も「想定している」が回答者全体の平均を上回った。
2月13日に最大震度6強を記録した地震で、相馬市などが新型コロナ対策を講じて避難所を開設した。回答者への追跡調査では、独自に感染防止策を講じて避難所に行くことを「想定している」が39・5%で本調査を6・2ポイント上回った。
東京五輪の開催賛否 反対52%、賛成15%
新型コロナウイルスの影響で1年延期された東京五輪・パラリンピックの開催については「反対」が52・6%に上り、「賛成」は15・0%にとどまった。
「反対」は被災3県沿岸被災者57・3%、首都圏57・1%でともに回答者全体の平均を上回った。年代別では70代が最多の57・2%に上るなど、年齢層が高くなるほど反対意見が強まる傾向が見られた。
「反対」と回答した人からは自由記述で「海外から人を呼んで大会を開くのは不安がある。早く終息させるのが第一」(福島県、20代女性)など感染拡大への懸念の声が相次いだ。大会理念「復興五輪」について、「関係のない方向に進んでいる」(宮城県、60代男性)と否定的な見方もあった。
「賛成」の立場からは「延期した1年間で感染対策を十分に講じられたと思う」(宮城県、40代女性)。「分からない」と答えた人からは「今まで頑張ってきた選手たちを思うと反対とは言いにくい」(宮城県、50代男性)などの意見が出た。