2021年3月18日木曜日

柏崎刈羽原発 核防護「最悪レベル」規制委暫定評価(詳報)

 柏崎刈羽原発の侵入検知に関わる核物質防護設備が損傷したことを事実上約1年間放置していた問題で、規制委16日、違反状態を重要度、深刻度とも最悪レベルと暫定評価した件は17日紹介しましたが、新潟日報が17日、報じましたので詳報として紹介します。
     3月17日)柏崎刈羽原発 侵入検知できない事態を1年も放置
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柏崎刈羽原発、核防護「最悪レベル」侵入検知設備不備で規制委暫定評価
                            新潟日報 2021/03/17
 東京電力柏崎刈羽原発の侵入検知に関わる核物質防護設備が損傷した問題について、原子力規制委員会は16日、2020年3月以降、複数の箇所で長期間、テロなど外部からの不正な侵入を検知できない可能性があったと明らかにした。東電は代替措置を講じたと説明したが、規制委の検査で不十分であることが判明したという。規制委は16日、臨時会議を開き、「組織的な管理機能が低下し、措置の有効性を長期にわたり把握していなかった」とし、事態の重要度、深刻度とも最悪レベルとの暫定評価を示した。
 規制委はこれらの評価が追加検査を2千時間分実施する区分に当たると判断した。更田豊志委員長は同日の記者会見で「検査は1年以上はかかるのではないか」と述べた。東電が目指す7号機の再稼働は当面、極めて難しい状況になった。
 規制委が今回示した暫定評価のうち、重要度は4段階評価で最も高い「赤」に初めてなった。規制委は今後、東電の意見を聞いた上で評価を確定し、行政命令などの対応を議論する。
 原発では外部からの不正な侵入に備え、フェンスやセンサーの設置など多重の防護措置を取っている。
 東電は同日、侵入検知設備の故障は計16カ所あり、このうち10カ所について規制委事務局の原子力規制庁から代替措置が不十分と判断されたと公表した。
 東電によると、ことし1月27日に規制庁に1カ所の機能喪失を報告。以降、ほかの故障状況も報告した。東電はこれまで「代替措置は済んでおり、核物質防護に必要な機能は果たしている」と説明していた。
 しかし、規制庁は現地検査などで、一部で代替措置が不十分な状態が30日以上続いていると判断した。さらに、東電社員の警備員は不十分だと認識しながら、組織内で共有せず、改善していなかったという。
 規制庁による検査の結果、18年1月から20年3月までにも一部の機能喪失が複数あり、復旧に長期間を要していたことも分かった。
 更田氏は会見で「なぜ東電が非常にお粗末な代替措置でいいと考えたのか。知識不足なのか、放置していたのか、把握しなければならない」と強調。既に重要度評価「白」で確定した柏崎刈羽原発の中央制御室への不正入室問題にも触れ、「別に扱うことは不可能で全体として『赤』だ」との見方を示した。7号機の再稼働については「検査に長期間を要する中で、運転に向けた次のステップに進むことはない」と述べた。
 東電は16日夜、規制委の評価について「大変重く受け止めている」とのコメントを発表した。現在は全ての設備が復旧し、外部からの侵入は確認されていないと説明した。


「東電の能力 ますます疑問符」 花角知事、柏崎刈羽原発の設備損傷問題受け
                            新潟日報 2021/03/17
 柏崎刈羽原発で長期間、不正な侵入を検知できない可能性があったと原子力規制委員会が公表したことを受け、花角英世知事は16日、報道陣の取材に対し「大変重大な事態だ。どうしてそういうことが起きるのか。東電が原発の運転を的確に遂行する能力について、ますます疑問符が付く」と述べた。
 花角氏は16日午前の県議会で、同原発で中央制御室不正入室や7号機安全対策工事未完了などが相次いでいることを受け、早ければ3月中にも規制委を訪れ、東電に原発を運転する技術的能力があるかどうかを再評価するよう直接要請することを明らかにしていた。
 同日午後の規制委公表を受け、花角氏は県庁で報道陣の取材に応じ、規制委に東電の再評価を直接要請する考えを改めて示した。その上で「東電には徹底的な原因究明をしてほしいし、規制側にも厳しく確認してほしい」と強調した。

◎柏崎市長「再稼働はリセット」、反対派「運転資格なし」
 原子力規制委員会が柏崎刈羽原発での侵入検知設備の機能喪失を最悪レベルと暫定評価した16日、柏崎市の桜井雅浩市長は臨時記者会見を開き、「今までの積み重ねがリセットされた。改めて再稼働の見通しが付かなくなった。喪失感を大きく感じる」と落胆を隠さなかった。
 桜井氏は規制委の評価について「衝撃を持って受け止めた。長い年月を経てもなお、安全文化の欠如が指摘される東電の問題は、国民一人一人が考えないといけない厳しい現実だ」と険しい表情で語った。
 一方で、同原発6、7号機の再稼働を条件付きで容認してきた自身の姿勢については「変わらない」と強調。「この1、2カ月で話を聞いた市民や企業経営者の中で、もう再稼働なんてやめろ、と言った人は一人もいない」と語った。
 刈羽村の品田宏夫村長は新潟日報社の取材に対し、「規制委の判断に村が口を挟む問題ではない。東電にはしっかりやれと言いたい」と述べた。
 柏崎刈羽原発反対地元3団体の矢部忠夫共同代表は「(2002年の)トラブル隠し以前から、東電の企業体質は何も変わっていない。笑い事ではなく、本当に恐ろしいことだ」と言葉を失った。

 他人のIDカードを使った不正入室問題と比べ「より根本的な安全に関わる問題ではないか」と指摘。「再稼働以前の問題で、スケジュールは全て吹っ飛んだ。原発を運転する資格がないとしか言いようがない」と憤りを語った。