2021年3月16日火曜日

いわき市に開館した市民の目線で考える原子力災害考証館(詳報)

 昨秋、福島県が双葉町に整備した「東日本大震災・原子力災害伝承館」が開館しましたが、著作権やプライバシーの保護のため場内は撮影禁止になっていたり、同館の「語り部」たちには「特定の団体」を批判しないよう厳格に求めるなど、国や東電などに忖度したさまざまな制約がかかっています。

      ⇒(2月15日)語り部に批判認めず…原子力災害伝承館ルポ
 その点、福島県いわき市・湯本温泉の旅館「古滝屋」に開館した「原子力災害考証館furusato」は、手作り感のあるの市民目線のもので、展示される資料は被害に遭った人々の記録が中心になっていて、3カ月に1度は展示を替えていくということです

 開館に当たっての記事は既に紹介しましたが、詳報として東京新聞の記事を紹介します。
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高線量下の捜索現場、建物なくなる商店街…市民の目線で考える原子力災害考証館、福島・湯本温泉に開館
                          東京新聞 2021年3月14日
 東京電力福島第一原発事故では、原発のある福島県双葉町、大熊町だけでなく、広い地域で直接的、間接的にさまざまな人々が被害を受けた。そうした人々が何を思い、どのように行動したかを展示や資料を通じて考えるための拠点「原子力災害考証館furusato」が12日、福島県いわき市・湯本温泉の旅館「古滝屋」に開館した。(福岡範行)

 宴会場だった20畳の部屋の壁一面に、原発事故で全住民が避難を強いられた浪江町の商店街の変遷を写したパノラマ写真が並ぶ。この10年の間に建物が解体され、更地になったことを伝える展示だ。
 部屋の中央には、福島第一原発がある大熊町沿岸部で亡くなった木村汐凪ゆうなちゃん=当時(7)=の写真や遺品のランドセルがあった。津波に遭った後、放射能汚染で迅速な捜索を阻まれ、遺骨の一部が見つかったのは震災から5年半後。汐凪ちゃんら家族3人を津波で失った父親の紀夫さん(55)が遺品を貸してくれた。
 考証館では、来館者が自分の身近なことに置き換えて考えられる展示を目指している。資料は被害に遭った人々らの記録が中心。被災を詠んだ歌集や放射能汚染に苦しむ農家を追った写真集、訴訟の記録誌などもそろえる。浪江町の写真の下には、市民グループが毎年測定した同町の放射線量マップも置いた。今後も情報を更新しながら、3カ月に1度は展示を替えていくという。
 「生きるために動かざるをえなかった人たちの声なき声を集めている」と、事務局を担う地域づくり団体職員、西島香織さん(33)。長女出産後の19年9月、埼玉県内から帰還困難区域が残る富岡町に移り、子育て支援や被災の状況を伝える人たちの熱意に驚かされたという。

 考証館長で古滝屋当主の里見喜生さん(52)は「暮らしがどう変わり、人々がどんな思いでいるのか、現地に行って感じてほしい。考証館を訪ねてもらえたら、関心に合った場所を紹介したい」と語った。
 開館は午前10時~午後4時。不定休。宿泊客に限らず入館無料。原発事故にまつわる本や映像作品は目録をつくり、考証館のウェブサイトでも紹介する。古滝屋はJR常磐線湯本駅から北西の温泉街に徒歩8分。