2021年3月2日火曜日

「脱原発」増加傾向 地方紙連携のアンケート 6200人が回答

 読者参加型の報道に取り組む全国の地方紙連携して、エネルギー政策と原発に関するアンケートを実施し全国の約6200人が回答しました

 原発政策について「運転延長は控え、基数を減らしながら活用」「積極的に廃炉とし、脱原発を急ぐべきだ」「すぐにでも廃炉に」等の「脱原発」の意見823%でした。
 福島原発事故からの10年間で、「今も変わらず反対」が最多の448%次が「賛成でも反対でもなかったが、反対に傾いている」139%「賛成だったが今は反対」102%などと脱原発を望む層が増えています
 原発再稼働の同意・了解について「立地自治体に加え、周辺自治体も加えるべきだ」が861%でした。
 避難計画の実効性確保について「難しい」「どちらかと言えば難しい」が合せて57・5%で、「可能」「どちらかと言えば可能」は合計182%でした。
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「脱原発」増加傾向 地方紙連携6200人アンケート
                            西日本新聞 2021/3/1
 2011年の東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生10年を前に、西日本新聞「あなたの特命取材班」など読者参加型の報道に取り組む全国の地方紙は連携して、エネルギー政策と原発に関するアンケートを実施した。全国の約6200人が回答。今後の原発政策について、運転開始から40年超の稼働は控えるなど、脱原発を望む回答が82・3%に達した一方、運転延長や増設、建て替えといった「原発容認」は14・9%にとどまった。
 アンケートは協働企画「#311jp」の一環。年代や男女比などを考慮した一般の世論調査とは異なる。
 原発政策についての回答として、「運転延長は控え、基数を減らしながら活用」「積極的に廃炉とし、脱原発を急ぐべきだ」「すぐにでも廃炉に」の各項目を合わせた「脱原発」の意見が82・3%に上った。
 福島原発事故からの10年間で、原発に対する考え方の変化も尋ねた。「今も変わらず反対」が最多の44・8%。次が「賛成でも反対でもなかったが、反対に傾いている」(13・9%)。「賛成だったが、一定程度縮小してもよい」(12・3%)、「賛成だったが、今は反対だ」(10・2%)と続き、脱原発を望む層が増えてきた傾向がうかがえる。

 事故発生の11年3月時点で国内の原発は17原発54基。老朽化もありこのうち21基の廃炉が決まり、再稼働したのは9基にとどまる。
 原子力規制委員会の審査を終えた原発再稼働の同意・了解について尋ねると「立地自治体に加え、周辺自治体も加えるべきだ」が86・1%で、幅広い合意形成を望む意見が大勢を占めた。原発事故時の避難計画の実効性確保についても「難しい」「どちらかと言えば難しい」が合わせて57・5%の一方、「可能」「どちらかと言えば可能」は合計18・2%にとどまった。
 北海道では、使用済み核燃料を再処理して生じる「高レベル放射性廃棄物」の地層処分場建設を巡り、地元調査が始まった。これについて複数回答で聞くと、最多が「必要性は理解するが、安全性は疑問」(48・8%)。次いで「核燃料サイクル政策などの見直しも必要」(35・1%)、「住民投票で合意のない調査は進めるべきではない」(33・4%)、「処分場は必要なので注視したい」(33・3%)が並んだ。
 福島第1原発では、汚染水を浄化した「処理水」が増え続け、海洋放出が検討されている。地元漁業者らは風評被害の再拡大を強く懸念しており、その対応策を尋ねた(複数回答)。「放射線の性質や影響に関する学校教育の充実」が47・2%と最多。「メディアの活用や全国的な住民説明会開催で国民に啓発」も45・1%に上り、「漁業者への十分な補償金の支払い」と「漁業振興のための財政支援」がともに44・3%と高かった。

再エネに「期待」大きく
 菅義偉首相は「温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロにする」と目標を掲げ、電源構成などを定める国のエネルギー基本計画の議論も始まった。
 それに関連し、再生可能エネルギーの普及については「期待する」「ある程度期待する」が合わせて84・9%に及んだ。さらに、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの削減手法として複数回答で聞いたところ、「洋上風力など再エネ拡大」(73・2%)、「電気自動車(EV)など需要面の変革」(48・7%)、「液化天然ガス(LNG)などCO2排出量が少ない火力の活用」(39・4%)と続いた。(竹次稔、福間慎一、データ分析班=高倉弘行、蔦本幸治)
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 アンケートは本紙など地方紙14紙が紙面や無料通信アプリ「LINE(ライン)」などを使って2月8~17日に呼び掛け、47都道府県の6248人が回答。平均的な回答時間は約22分だった。

感情的な反対から、冷静な見方へ変化
 明治大の勝田忠広教授(原子力政策)の話
 福島第1原発事故から10年で「脱原発」を求める理由は変わってきた。かつては感情的な反対が先に立ったが、今は未解決の「核のごみの問題」を掲げる人が増えてきた。実際、事故前を大きく下回る基数の原発稼働が常態化する中、「それほど必要ではない」という冷静な見方が拡大した。ただ、こうした声はあまり政策に反映されておらず、政府が原発を推進しようとすれば、理由を丁寧に説明する必要がある。もちろん再生可能エネルギーの推進も重要だが、省エネなど暮らしの見直しからまず始めたい。「エネルギーは何のために必要なのか」を考えなければ、事故の教訓は生かされない。 (福間 慎一、竹次 稔


避難計画に実効性「難しい」6割超
福井県を含む原発立地13道県、地方紙エネルギー政策・原発アンケート
                          福井新聞 2021年3月1日
 地方紙協働企画「#311jp」のエネルギー政策・原発アンケートで、原発事故時の避難計画に実効性を持たせるのが「難しい」「どちらかといえば難しい」との回答が、福井県を含む原発立地13道県で6割を超えた。原発再稼働については、周辺自治体の同意や了解も必要だとする意見が8割を超え、立地地域でも原発防災や再稼働など重要課題に慎重な意見が多かった。
 避難計画は、事故時に屋内退避などが必要になる原発30キロ圏の住民が対象。40年超運転に向け今年1月に策定された関西電力美浜原発の場合、対象は福井、岐阜、滋賀3県で福井県民約22万7千人を含む計約27万8千人に上る。奈良、兵庫、石川県へも広域避難する。
 避難計画の実効性について尋ねたところ、立地道県は「難しい」36・3%、「どちらかといえば難しい」25・5%。「可能」「どちらかといえば可能」と考える人は計17・6%にとどまり、事故時の対応を懸念している状況がうかがえる。「内容を知らない」も9・9%いた。福井県は「難しい」「どちらかといえば難しい」が計52・4%だった。
 原発再稼働の判断については、立地道県の84・8%が「(主に30キロ圏の)周辺自治体も加えるべきだ」と回答。非立地都府県も86・7%と同程度で、再稼働については幅広い議論が必要という回答が大勢をしめた。福井県は「周辺自治体も加えるべきだ」が73・7%、「立地自治体だけで構わない」は18・3%だった。
 使用済み核燃料を巡っては立地道県でも複雑な思いが表れた。再処理後の高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に関する北海道での文献調査について複数回答で聞いたところ、「最終処分場は必要なので注視したい」が34・2%。一方で「必要性は理解しているが安全性は疑問」は45・4%を占めた。
 「巨額の交付金と引き換えに調査を進めることに反対」「住民投票で合意を確認していない処分場の調査は進めるべきでない」もともに3割を超えた。

福井県内外で「脱原発」の考え増加
 アンケートでは福島第1原発事故後、日本のエネルギー政策に「関心を持っている」「やや持っている」と答えた人が計95・5%。高い関心を持つ層がアンケートに応じた傾向がある。