福島原発事故から10年間で、廃炉作業や被災者への損害賠償、汚染地域の除染といった事故処理にかかった費用は少なくとも13・3兆円だということです。政府は処理費を総額21・5兆円と見込んでいますが、廃炉作業などが難航しその想定を上回る可能性が濃厚だと東京新聞が報じました。現段階では東京新聞もその程度の表現に抑えるしかないのでしょう。
そもそも総費用の見込みは、廃炉が30~40年程度で終ることを前提にしていますが、英国など海外の識者は当初から100年以上かかると見ていました。そうなればまず工事費の主体である人件費は天井知らずになるので、総額が100兆円で収まるという保証もありません。それらの費用が最終的にすべて国民の負担になるのはいうまでもありません。
国民負担の概要は別掲の東京新聞の関連記事を参照ください。⇒ <Q&A>
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福島第一原発の事故処理費用、10年間で13兆円 政府想定21・5兆円超える懸念強く
東京新聞 2021年3月23日
東京電力福島第一原発事故から10年間で、廃炉作業や被災者への損害賠償、汚染地域の除染といった事故処理にかかった費用は少なくとも13・3兆円に上ることが本紙の取材で分かった。政府は処理費を総額21・5兆円と見込むが、廃炉作業などが難航し、想定を上回る可能性が濃厚。賠償費用などは国が立て替えた後、電気料金や税金をもとにした資金から少しずつ「返済」されていく。こうした国民負担が今後数十年は続くとみられる。(妹尾聡太)
東電や政府によると、政府有識者会議が2016年に示した見込み額21・5兆円のうち、これまで廃炉に1・5兆円、賠償に7兆円、汚染土壌を取り除く除染に4・8兆円が使われた。廃炉には想定の2割近く、賠償と除染には8割超が支出された計算だ。
これらの費用のうち、廃炉については東電が自社の利益から拠出する。賠償と除染は国債などで立て替えた上で、東電を含む電力会社などが年に約2000億円ずつ国庫に納める。さらに電気料金に上乗せされる税金も「返済」に充てる。東電の株式を売却して除染費用を捻出する計画もある。単純計算すると、「完済」には今後30年程度かかる。
しかし処理費が見込み通りの金額や期間で収まる保証はない。廃炉はあと30年以内で作業を終える計画だが、溶融核燃料(デブリ)の取り出しという最も難しい行程が始まっておらず、長期化する懸念がある。
日弁連は、賠償請求が不十分な被災者もいるとして、潜在的な賠償額が見込み額(7・9兆円)を超える可能性を指摘。除染についても、帰還困難区域の作業など見込み額(5・6兆円)に含まれていない部分が多く、実質的には5・6兆円を超える見通しだ。