福島原発の廃炉の費用は一体どれほど掛かるのか、この先どれほど膨らむのかは全く不明です。
分かっていることは、当面は国や東電などが一旦負担しますが、最終的にそれらは家庭や企業の電気料金に長年月にわたって加算されるということで、それだけははっきりしています。
東京新聞が、原発の廃炉費や処理費に関する記事 <Q&A> を出しました。
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<Q&A>福島第一原発の廃炉費1.5兆円‥‥困難な作業手つかず、支出増これから
東京新聞 2021年3月23日
東京電力福島第一原発の事故処理費は廃炉、賠償、除染などを合わせると、10年間で13・3兆円に達しました。政府は最終的に計21・5兆円になると見込みますが、実際には、さらに膨らむことが懸念されています。(妹尾聡太)
Q 膨大な金額がかかっているのですね。
A 21・5兆円は、政府の有識者会議「東京電力改革・1F問題委員会」(東電委員会)が2016年に示した見込み額です。これに対し民間シンクタンクの日本経済研究センターは19年、廃炉作業を続けた場合は約40兆~80兆円かかると試算しました。技術的に難しいとして廃炉を当面見送り、旧ソ連ウクライナのチェルノブイリ原発の「石棺」のように、原発をコンクリートで覆うなどした場合も35兆円かかると指摘しています。
Q それに比べると、今までの廃炉費1・5兆円は少ないですね。
A 支出が増えるのはこれからです。今までは使用済み核燃料プールからの核燃料取り出しや汚染水処理などをしてきました。しかし原子炉内部に溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しは難しく、手つかずです。作業が難航し金額が想定を超えかねません。
Q 廃炉作業はいつまで続くのですか。
A 政府と東電は41~51年に廃炉を完了させる計画ですが、大量の高レベル放射性廃棄物を撤去し、処分できるめどは立っていません。日本原子力学会は昨年、仮に順調に廃棄物を処分できても、敷地の再利用には最短でも100年以上かかるとの見解を示しました。通常の原発でも廃炉には30年前後かかるのに、事故を起こした福島第一原発も30年後に廃炉にできるとは考えにくいです。
Q 賠償と除染は進んでいるのですか。
A 今年2月末時点の東電の賠償合意額は累計約7兆円です。また環境省が計上した除染費用は今月末までに約3・7兆円、除染で取り除いた土壌を保管する中間貯蔵施設の整備費は約1・1兆円に上る見通しです。これの合計額は見込み額(計13・5兆円)の8割超に上る計算ですが、被災地の回復に十分な金額とは言えません。
Q もっと多く必要ということですか。
A 賠償請求に携わる弁護士は、避難生活が続いて損害の実態を明らかにできない被災者が、十分な金額を請求できていないケースも多いと指摘し、「集団訴訟などの賠償請求が認められ、見込み額(7・9兆円)を超える可能性もある」とみています。
除染は、見込み額(4兆円)分の作業はおおむね終わりました。しかし取り除いた土壌の最終処分の費用や、放射線量が高い帰還困難区域の除染などはここに含まれません。一方、政府は同区域の一部の除染などに既に約2000億円を支出してきました。これを加えた実質的な除染費用は来年度中にも4兆円を超えます。
<Q&A>福島原発事故の処理費21.5兆円 負担は家庭や企業に
東京新聞 2021年3月25日
政府が計21・5兆円と見込んだ東京電力福島第一原発の事故処理費の多くは、最終的には家庭や企業の電気料金などを元手に支払われます。東電の株主や債権者である銀行ではなく、事故後に生まれた若者や外国人も含む消費者に負担させる構造は矛盾を抱えています。(妹尾聡太)
Q 事故処理費とはどんなお金ですか。
A 政府は(1)廃炉(8兆円)(2)賠償(7・9兆円)(3)除染(4兆円)(4)除染作業で取り除いた土壌を管理する中間貯蔵施設の整備(1・6兆円)に分類。事故後の10年間で計13・3兆円が支払われました。このうち廃炉の費用は東電が自社の利益から積み立てて拠出しています。
Q 賠償や除染などの費用の支払いはどうなっていますか。
A 国の予算や借金で先に支払った後、東電などが事実上の「返済」をしていきます。政府は事故処理を加速させるため、一部の「返済」を電力各社の負担や税金などで賄い、東電の負担を軽くしました。
賠償は、他の原子力事業者も互いに助け合うとの考えから、東電や関西電力など11社が年に計約1600億円の「一般負担金」を拠出しています。昨年10月には事故後に設立された新電力の負担などが加わりました。このお金は電気料金に盛り込まれます。東電だけは、利益から出す「特別負担金」も年に数百億円ずつ支払っています。
除染費は、政府が認可法人を介して保有する東電の株式を売却した利益で支払う想定です。ただ見込み額の4兆円を工面するには、東電の経営を向上させ、株価を今の4倍の1500円程度にしないといけません。
中間貯蔵施設の整備にかかった費用は、電気料金に上乗せされている「電源開発促進税」の一部を流用し、毎年470億円ずつ回収されています。
Q 月々の電気代に事故処理費はいくら含まれているのですか。
A 明示されないので正確には分かりません。ただ、東電の販売電力量と「一般負担金」から計算すると、東電と契約して毎月300キロワット時を消費している家庭の場合、「一般負担金」と「電源開発促進税」を合わせて月に100円弱程度とみられます。東電の「特別負担金」や廃炉費用も電気料金が元になっていると考えれば、東電の契約者の負担はもっと多くなります。
Q この負担はいつまで続くのですか。
A 今の支払いペースなら、あと30年程度で終了します。しかし、廃炉は難航する懸念が強く、電気料金に含まれる「一般負担金」は、別の原発事故にも備えるお金として徴収が続きます。政府は公的資金を投じて東電株を保有することで東電を救済し、株主や銀行の責任を問いませんでした。その一方で過失のない国民にツケを回し続けようとしています。