柏崎刈羽原発の全7基が停止してから26日で9年が過ぎました。
新潟日報が柏崎刈羽原発の現況を総括的に報じました。
稼働を目指してきた7号機について、今後少なくとも規制委の追加検査だけで1年はかかるとされていて、東電としても再稼働の見通しが立てられる状況ではありません。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
東電、失態続き再稼働白紙 柏崎原発全基停止9年 原子力事業存続の危機
新潟日報 2021/03/28
東京電力福島第1原発事故後、柏崎刈羽原発の全7基が停止してから26日で9年が過ぎた。東電は当初、柏崎刈羽7号機の再稼働前に必要な検査を4月に完了する計画だった。しかし、年明け以降、テロなどを防ぐ核物質防護を巡り県民を危険にさらす事態が発覚。この問題で原子力規制委員会が核燃料の移動を禁じる是正措置命令を出す方針を示し、7号機の再稼働は白紙となった。規制委の追加検査だけで1年はかかるとされ、全基停止は当面続きそうだ。
柏崎刈羽原発の全7基は2012年3月26日に6号機が定期検査のために停止してから動いていない。2~4号機の3基は2007年7月の中越沖地震での緊急停止後、一度も稼働せず、停止期間はことしで14年を超える異例の事態だ。
ただ、東電が再稼働を目指す7号機は、原子力規制委員会の審査が昨年10月に全て終了した。ことしは再稼働に向けた動きが加速すると見る向きもあった。
事態が急展開したのは1月下旬。同原発所員が昨年9月に他人のIDカードを使って中央制御室に不正入室した問題が報道で発覚した。さらに東電は、一度は完了したと公表していた7号機の安全対策工事が実は未完了だったと発表し、地元住民の不信が高まった。
さらに、原発作業員がテロ防止に関わる侵入検知設備を誤って損傷させる事案も発生。規制委は3月、複数箇所で不正侵入を長期間検知できない可能性があったとして、安全上の重要度を最悪レベルと評価した。追加検査に1年以上かかるとの見通しを示している。
「私を含め、再稼働の意義を認める方々への背信としか言いようがない」。新潟県柏崎市の桜井雅浩市長は19日、謝罪に訪れた東電幹部に苦言を呈した。
同原発に反対する住民たちは東電への反発を強めている。反対団体のメンバーは20日、柏崎市で会見し、「同じことを何度繰り返せばいいのか」「国は原子炉設置変更許可を取り消すべきだ」などと口々に批判した。規制委に対しても「東電のお粗末な措置を長期間把握できなかった」と指摘。規制の在り方自体も問われる事態となった。
規制委が東電への是正措置命令方針を決めた日の翌25日、新潟県の花角英世知事は謝罪に訪れた東電の小早川智明社長に「東電に対する県民の信頼は大きく損なわれた」と言い切った。小早川氏は同日、報道陣から再稼働について問われ「見通しが立てられる状況ではない」と力なく語った。
事態は原発再稼働以前の問題になっている。規制委が東電への行政処分を検討する選択肢の中には、原子炉設置許可の取り消しも含まれていた。小早川氏は26日、「原子力事業の存続に関わる危機的状況」との認識を示した。