2021年3月19日金曜日

ずさんな東電テロ対策 原発を扱う資格あるのか

 一旦原発が過酷事故を起こせばどんな被害が広範囲にわたって降りかかるのかを福島事故で学んだ筈なのに、東電はなぜ不祥事を根絶できないのでしょうか。
 今回の侵入検知装置の不具合を長期間放置していた件では、規制委から安全重要度などが4段階で最悪の「赤」と暫定評価を受けました。赤の判定は初めてということです
 軽微なミスなら構わないということではありませんが、東電には事の軽重を判断する能力さえも失っているのではという疑念が湧きます。これでは原発の管理など出来ません。
 毎日新聞と新潟日報の「東電に原発を扱う資格があるのか」とする社説を紹介します。

 以前にも書きましたが、花角知事は柏崎刈羽原発再稼働に一時前のめりになっていました。新潟県の「検証委員会」の結論が出されていない時点で馬脚をあらわしたのでした。
 花角知事には改めて公約通りに「検証委員会」の結論を尊重することを求めます。
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社説 ずさんな東電テロ対策 原発を扱う資格あるのか
                            毎日新聞 2021/3/18
 目を覆うばかりの、安全意識の欠如である。
 東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)で、敷地内への侵入を検知する設備に複数の故障が見つかった。
 原発には大量の核燃料がある。このため法令に基づき、核テロを防ぐ「核物質防護規定」が定められている。にもかかわらず柏崎刈羽では、第三者の侵入を防げない状態が少なくとも3年前から放置されていた
 きっかけは今年1月、設備の一部を作業員が誤って壊したことだった。原子力規制庁は他設備も調べるよう求め、不備が判明した。
 それがなければ、穴だらけのセキュリティー対策が見過ごされていた可能性もある。
 原子力規制委員会は今回の事態を「最悪」レベルと判断した。徹底的な調査で問題点を洗い出し、厳正に処分すべきだ。
 東電は、柏崎刈羽7号機の再稼働を目指している。安全審査に合格し、早ければ今夏に営業運転する構想も描いていた。
 だが、現場では安全を軽視した、驚くような不祥事が相次いで起きている。
 昨年秋には、所員が同僚のIDカードを不正に使い、原発の心臓部にあたる中央制御室に入っていた。「完了」と報告した安全対策工事のうち、実際には4件が終わっていないことも判明した。
 今回の法令違反を受け、梶山弘志経済産業相は「このままでは再稼働できない」と語った。
 不祥事の背景について東電の小早川智明社長は、意思疎通の不足を挙げている。核物質を扱う事業者としての責任感が、経営陣から作業員まで共有されているとは思えない
 それでも、福島第1原発の廃炉費用を稼ぎ出すために柏崎刈羽を動かすしかないというのだろうか。そんなおごった考えから、最優先すべき安全文化がないがしろにされたとすれば言語道断だ。
 福島の事故の反省が生かされないどころか、現場の危機意識のなさが問題を放置し、不信を増幅させるという悪循環が起きているのだろう。
 再稼働の審査もやり直すべきではないか。こうしたずさんな実態を改めない限り、東電に原発を動かす資格はない。


核防護「最悪」 改めて東電の適格性疑う
                            新潟日報 2021/03/18
 またもずさんな実態が明らかになった。あまりのひどさに言葉を失う。
 原発を運転する上で不可欠な安全、安心をないがしろにしているとしか見えない。東京電力に、再び原発を動かす「適格性」というお墨付きを与えた国の判断も問われるべきだ。
 原子力規制委員会は16日、東京電力柏崎刈羽原発への侵入者の検知に関わる核物質防護設備の複数箇所で2020年3月以降、機能が喪失し検知ができない可能性があったと発表した。
 テロ目的など外部からの侵入を原発内に許してしまう恐れが長期間あったということだ。
 規制委は「組織的な管理機能が低下し、核物質防護上、重大な事態になり得る状況にあった」と指弾し、安全重要度などが4段階で最悪の「赤」と暫定評価した。赤の判定は初めてだ。
 柏崎刈羽原発では、所員が中央制御室に不正入室する失態があり、東電は10日に「厳格な警備業務を行い難い風土があった」などとする報告書を規制委に提出したばかりだ。そこにさらなる重大な失態である。
 再稼働を推進する立場の梶山弘志経済産業相は「今のままでは再稼働できる段階にない」と述べた。規制委は17日の会合で、東電が再稼働を目指す柏崎刈羽原発7号機の燃料装填(そうてん)に必要な手続きを保留すると決めた。
 当然だろう。再稼働の準備などできる状況ではあるまい。
 この問題は今年1~2月、侵入検知設備の機能喪失に関する東電の報告を受け規制委が2月下旬に行った検査で把握した。東電は「代替措置は済んでいる」と説明したが規制委は信じず休日に抜き打ち検査をした
 計16カ所の故障があり、うち10カ所で代替措置が不十分と規制委が指摘した。30日を超える期間、検知不能な状態になった可能性があるという。
 看過できないのは、東電社員の警備員が代替措置に実効性がないことを認識しながら組織内で情報共有せず、改善しなかったことだ。不正入室でも警備の問題が指摘されたが、それと関連するところはないのか。
 規制委は今後、追加検査を実施する。更田豊志委員長は「1年以上はかかる」との認識を示した。原因や背景を徹底的に究明してもらいたい
 17日の参院予算委で更田氏は、再稼働の前提として昨年9月に了承した保安規定について「変更も視野に入れて今後の審査を考えたい」と語った
 現時点で規制委は、東電に原発再稼働の適格性を認めている。その妥当性も議論すべきだ。
 核物質防護を巡って、東電の体制不備が指摘されたケースは過去にもあった。
 福島第2原発で侵入検知器の警報を鳴らないよう設定し、規制委が16年、核物質防護規定の順守義務違反に当たるとして東電を厳重注意した。

 安全に関わるミスや失態を繰り返す東電には、立地地域や住民に対する責任感が欠如しているのではないか。そう思わざるを得ない。