2025年2月10日月曜日

規制委 住民不安に応えず 原発事故・屋内退避見直し 複合災害対策自治体任せ

 6日付の新潟日報に掲題の記事が載りました。
 同紙を入手したので文字起こしをしました(電子版には冒頭の数百字ほどしか掲載されない)。以下に紹介します。
 昨年1月の能登半島地震を機に、「自然災害と重なる複合災害が起きても、安全に屋内退避できるのか」という問題が俄かにクローズアップされました。急遽その検討委員会ができましたが、「自然災害との複合災害(の対策)は所掌外」というのが山中規制委員長の意向(⇒内閣府=自治体の範疇)であるため、3月にまとめられる報告書には何も期待出来ないことが分かりました。
 規制委は「あくまでも自然対策がしっかり機能する前提で議論を進める」と、都合のいい考え方をしています。しかし、「自宅は堅牢で地震に強く、避難路もがけ崩れや陥没が起きないという前提で『屋内避難』し、もしも自宅の堅牢性が確認されなければ自治体が準備する施設に避難する」というのですが、「一部損壊もしない家屋というのは鉄骨構造かコンクリート製、または木造でも十分に耐震補強がなされていて築○年以内のケースに限定」されるので、大半の住民は公共の避難施設に入るしかない訳です。
 各自治体には、原発事故用にそんな大量の避難施設を建設する余力はないと思われます。
 複合災害については「自治体でお考えになっていただければいい」というのは余りにも虫がいい話で、避難の際に 住民の安全を守ろうとする態度ではありません。
 また降雪時に「屋根の雪下ろし時に被ばくする」問題をどうするのかについては、自治体の問題というよりは「降雪時には原発を停止する」という新条件を設けるべきという問題です。
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規制委 住民不安に応えず 原発事故・屋内退避見直し 複合災害対策自治体任せ
                          新潟日報 2025年2月6日
 原子力規制委員会が原発事故時の屋内退避の運用を見直す。しかし実態は退避期間や解除条件などを具体化するだけ。昨年1月の能登半島地震を機にわき起こった「自然災害と重なる複災害が起きても、安全に退避できるのか」という住民や自治体の不安に正面から応えなかった。

避難所をつくってください、道路ができるだけ寸断しないようにしてくださいということはわれわれの範疇自治体でお考えになっていただければいい」。規制委が見直しの議を始めた昨年2月、山中押介委員長は記者会見で強調した。

▽縦割り
 能登半島地震では北陸電力志賀原発(石川県)の周辺で道路の寸断や家屋の倒壊が相次ぎ時避難先となる放射線防護施設にも損害がでた。しかし山中氏は「得られた教訓は(防災全般を担当する)内開府で調査し、今後の対策に反映する」と述べ、あくまでも然対策がしっかり機能する前提で議論を進める考えを示した。
 内開府は2024年度補正予算案で複合災害を想定し、屋内退避の体制強化などの交付金として41億円を計上。建物の放射線対策などの議論も進めている。一方、規制委は積極的な提言や情報発信はしておらず、縦割り行政に映る。

▽異論も
 規制委の会合には内開府幹部や、放射線の専門家、原発立地自治体も加わったが、議論は山中氏が示した方針で進んだ。
 それでも内部から異論も出た。議論の中まとめが公表された昨秋、山岡耕春委員は「規制委の担当範囲を超えるとしても『具体的に地震津波対策はこうあるべきだ』みたいなことは言えるのではないか」と提案したが、報告書案には盛り込まれなかった。
 結局、複合災害への対応は「自宅に退避できない場合は近隣の避難所に退避し、それも難しければ原発30キロ圏外に避難する」とまとめられた。
 避難計画策定や防災対策を担う自治体には負担感がある。
 東北地方の自治体担当者は「もともと屋内退避という仕組みが浸透していない状況で能登半島地震が起き、住民の不安や疑問が募っている」と指摘している。


原発事故・屋内退避 雪下ろし 被ばくしないか 県内の周辺住民に不安
                          新潟日報 2025年2月6日
 原発事故が起きた際の「屋内退避」の運用見直しについて原子力規制委員会の検討チームが5日に示した報告書案には、事故と自然災害が重なる複合災害時の細かな対応方針は盛り込まれなかった。折しもこの日、大雪に見舞われた県内。事故時に屋内退避の対象となる地域では「雪下ろしで被ばくしないか」「雪に閉ざされた中で避難は可能か」との不安が渦巻くが、こうした本県特有の課題は解消されなかった。

 報告書案では、これまで規制委が「範疇外」としてきた複合災害時の対応について触れた。ただ、地震や雪で自宅にとどまれない場合は避難所に行くなど、安全確保を優先するとの原則論にとどまった。
「自然災害と同様の対応を優先するのは分かるが、それだけでは実効性は担保されない」。東京電力柏崎刈羽原発から半径5~30キロ圈の避難準備区域(UPZ)にある自治体の担当者は嘆く。
 事故時にUPZは原則として屋内退避となるが、複合災害時の指針はないため、自治体は具体策を求めてきた。見附市の担当者は「避難や除雪作業などを安全に行えるよう、詳しい計画が必要だ』と訴える。
 くしくも5日の県内は大雪。豪雪地では事故で放射性物質が放出されても、雪下ろしをしなければ家屋が倒壊する恐れがあり、避難する場合は道路除雪が必要となる。朝から除雪作業に追われた小千谷市の農業、長谷川正夫さん(71)は「雪下ろしで一時的外出は可能だと言われて作業には時間がかかる。家がつぷれれば屋内退避も難しくなる」とこぼす。
 複合災害に対する懸念の声は、1月に行われた県の原子刀防災訓練でも出てた。柏崎市田尻地区の無職、渡部八郎さん(73)は「大雪で家から出るのも難しい状況では、避難自体ができない。そうなると目に見えない放射線が怖い」と漏らした。