別掲の記事の通り、柏崎刈羽原発7号機の『特重施設』(特定重大事故等対処施設)は工事の人手不足等によって大幅に遅れ、完成するのは「29年半ば」になる見通しなので、再稼働が可能になるのはそれ以降になります。
県庁内では早い段階から工事の大幅遅延の情報は共有されていて、花角知事も「完成は数年先」と認識していました。当然その前提で知事は〝出口戦略″(県民の再稼働賛否の確認)を練っていた筈で、「県民に信を問うのは来年の任期満了に伴う知事選」と考えている可能性は大きいと思われます。
いずれにしても、肝心の6本の避難道路の増設は未施工であり、複合災害時の5~30キロ圏内の「屋内退避に関する検討委員会」の結論(豪雪対策を含む)も得られていないわけなので、再稼働の論議に入れるのはかなり先の話になるのは間違いありません。
ペーパーの「新潟日報」を入手したので関連記事(文字起こし版)を紹介します。
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「6号機にシフト」説明は 柏崎7号機停止長期化か
新潟日報 2025年2月27日
東京電力柏崎刈羽原発7号機で工事が進められている「特定重大事故等対処施設」(特重施設)の完成が大幅に遅れ、設置期限である今年10月の完成には間に合わない見通しとなった。それまでに花角英世知事が再稼働の是非に関する判断を下すのは難しいとの見方もあり、持重施設の設置期限に余裕がある6号機の再稼働が本命視される可能性が高い。県や県議会内では特重施設の完成遅れは既定路線とみる向きがあるが、再稼働論議は常に7号機が先行してきており、「簡単に6号機にシフトできるのか」との声もある。
再稼働判断に影響必至
特重施設はテロ対策の要として、原子力規制委員会の新規制基準で設置が義務付けられている。ただ、例外として原発本体の工事計画認可を得てから5年間は特重施設が完成していなくても再稼働が認められる措置がある。
7号機は柏崎刈羽原発の中でも規制委の審査が最も早く進み、2020年10月14日に工事計画の認可を得ていた。これに伴い、持重施設の設置期限は今年10月13日に迫っていた。
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県庁内では早い段階から設置期限を越える可能性が高いことは共有されており、それを前提に花角知事の〝出口戦略″が組み立てられていた。先行して再稼働した他原発でも特重施設が間に合わず、稼働停止に追い込まれた事例が多く、花角知事も「完成は数年先」と認識していたという。
関係者によると、東電は持重施設の新たな完成目標時期について、4年後に当たる29年度の半ばとする方針だ。このため、特重施設の設置期限である今年10月13日を過ぎれば、7号機は長期にわたって運転できなくなる。
政府や東電はあくまで7号機の早期の再稼働を目指して地元への働きかけを続ける方針だ。ただ、自民県議の1人はこうした状況を踏まえ、「政治リスクを冒してまで10月までに判断することはない。県民に信を問うのは来年の任期満了に伴う知事選だ」と解説する。
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一方、6号機は規制委による工事計画の認可が7号機より遅かったため、特重施設の設置期限は29年9月となっている。猶予期間がまだ4年以上あるため、東電は6号機の再稼働にも注力していくとみられる。
その見立てを裏付けるように、今年6月に6号機でも核燃料の装填を始める予定。夏ごろには再稼働に向けた技術的な準備が整う見通しだ。
ただ、これまで東電はまずは目指すと強調してきた。笠鳥公一副知事は「国からの再稼働同意要請の対象は6、7号機で、そもそも議論の土俵には上がっていた」と冷静に受け止める。
一方、ある自民県連幹部は「7号機がだめだから、6号機というのでは批判を受ける。そんな簡単にシフトできるのか」と疑義を示す。東電と距離を置くある自民県議は「避難道路整備のスケジュールや廃炉の話など具体的に示されていない。われわれは(7号機の特重施設の新たな完成目標となる)4年後でも構わない。慎重にやればいい」と突き放した。
柏崎刈羽原発再稼働の是非を問う県民投票条例制定に向けた署名活動に携わった新潟市西区の会社員、田中忍さん(66)は東電が6号機の再稼働を進めれば、これまでの説明と異なり「県民の信用を得られなくなるのでは」と指摘した。