福島被災者は東電に賠償請求を 時効迫る中、福井弁護団が呼び掛け
中日新聞 2019年3月12日
東日本大震災による東京電力福島第一原発事故から八年となるのに合わせ、東電損害賠償福井弁護団(団長・円居(えんきょ)愛一郎弁護士)は十一日、福島県から福井県に避難した被災者のうち、東電への損害賠償請求をしていない人たちに、請求手続きをするように呼び掛けた。
弁護団によると、避難に伴う生活費の増加分や、医療費、精神的苦痛などの損害賠償請求権を行使できるのは、原発事故の発生から十年間。時効まで残り二年に迫り、「時効を理由に救済が阻害される事態が懸念される」と指摘している。
円居団長らが同日、福井市宝永四の福井弁護士会の事務所で会見。円居団長は「事故から八年たつが、避難者への適正な賠償がされていない」と述べた。復興庁のまとめでは、(福井)県内にはいまだに百八十五人の避難者がいるとされるが、弁護団によると、把握されていない人もいるという。
会見には被災者とその支援者も同席。福島県双葉町から転居した坂井市で五年間にわたって避難生活を経験し、損害賠償請求を申し立てた川崎葉子さん(68)=福島県いわき市在住=は「避難していたこともあり、歯科医師の夫は仕事ができなくなった」と精神的、経済的な苦痛は大きかったと明かした。
避難者の生活支援を続ける市民団体「ひとりじゃないよプロジェクト・福井」世話人代表の内山秀樹さん(61)=越前市中山町=は、今後も支援活動を継続すると表明した。
弁護団ではこれまで七世帯二十六人と一法人、延べ十五件の申し立てを受け、裁判外紛争解決手続き(ADR)により、和解を成立させた。現在、損害賠償請求は、申し立て中が一件、申し立て準備中が二件という。
(問)みどり法律事務所・笠原一浩弁護士(平日午前九時~午後五時)=0770(21)0252、内山秀樹さん=090(5171)6410 (青木孝行)