関西電力が、具体的な計画がない第2再処理工場の事業費を電気料金に転嫁し始めていることに対して、信濃毎日新聞が、「核燃料サイクルはそもそも、実質的に破綻している。それを認めないだけでなく、実体のないプランへの負担をひそかに強いているのは到底許されない。関電はただちに転嫁を中止し、他の大手電力も方針を見直すべきだ」とする社説を掲げました。
また総括原価方式を20年に廃止する予定の延長論が浮上していることに対しては、それは認められないとしました。
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社説 核燃第2工場 事業費転嫁は許されない
信濃毎日新聞 2019年3月27日
原発の使用済み核燃料を再処理して使い続ける国の核燃料サイクル政策の一環で、関西電力が、具体的な計画がない工場の事業費を電気料金に転嫁し始めていることが明らかになった。
青森県六ケ所村に建設中の再処理工場に次ぐ「第2再処理工場」の費用だ。2007年に11兆7千億円との試算が公表されたが、計画は白紙の状態が続いている。
九州電力も近く転嫁を始め、他の大手電力も追随する見込み。建設中の工場の事業費約16兆円と併せ、各電力の消費者が巨額の費用を負担することになる。
核燃料サイクルはそもそも、実質的に破綻している。再処理した燃料を使う高速増殖原型炉「もんじゅ」はトラブル続きの末に廃炉となった。一般の原発で使うプルサーマル発電も進んでいない。
転嫁方針や負担額について消費者への説明もない。破綻を認めないだけでなく、実体のないプランへの負担をひそかに強いている。到底許されるものではない。
政府や関電は、16年の制度改正によって具体的な計画がなくても転嫁できるようになったと説明している。納得できる国民はほとんどいないだろう。
関電はただちに転嫁を中止し、他の大手電力も方針を見直すべきだ。積極的に情報公開して消費者に説明する責任がある。
六ケ所村の再処理工場は、使用済み核燃料からウランとプルトニウムを取り出して混合酸化物(MOX)燃料を作る。これを原発で燃やした後、使用済みのMOX燃料を再び使えるよう処理するために必要なのが第2工場だ。
しかし、六ケ所村の工場は完成延期を繰り返している上、稼働すると使い道のないプルトニウムが増える。プルトニウムは核兵器に転用可能で、国際的に安全保障上の懸念が示されている。第2工場の必要性は見いだせない。
関電は、事業費の転嫁を、値下げした17年と18年の電気料金に織り込ませている。値上げには有識者による審査や国の認可が必要だが、値下げは国への届け出のみで可能だ。わざと目立たなくしたと受け取られても仕方ない。
電力小売り事業は16年に自由化され、事業者が独自に料金を設定できるようになった。だが大手電力会社には、さまざまな費用を転嫁できる総括原価方式に基づいた「規制料金」が残っている。
規制料金は20年に廃止予定だが延長論も浮上している。今のままでは電気料金の透明性を確保できない。延長論は認められない。