環境省は19日、県、市町村などに「除染土壌の再生利用を促す手引き案」をまとめ、有識者検討会に報告しました。
手引き案の内容は、環境省は再生資材化の実施者として、再生資材を保管・運搬する際の記録を作成、管理し、関係省庁や県、市町村などは再生資材の利用者・管理者として、放射線防護上の安全性を確保できる設置場所を選定し、施工の記録を作成、管理するというものです。
そして除染土約1400万立方mうち、約80%が現時点で土木工事などに再利用可能としました。その根拠は、汚染土の約80%が現時点で1kg当たり8000ベクレル以下だったというものです。
しかし本来は1kg当たり100ベクレル以上であれば放射性物質として厳重保管を義務付けられていたものを、福島事故が起きたために緊急事態下であることを口実にいきなり8000ベクレルに引き上げたもので、とても国際的に通用するものではありません。
それを1kg当たり8000ベクレル以下であれば放射性物質として扱わなくてよいというのは本末転倒の言い分です。
因みに事故直後に出された「緊急事態宣言」は現在も解除されていません。事故後8年以上も緊急事態が継続するのはあり得ないことで、今回のような処理が出来る根拠にするために解除しないというのであれば犯罪です。
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除染土8割「再利用可能」 環境省試算 福島県内には抵抗感
毎日新聞 2019年3月19日
東京電力福島第1原発事故後、政府が福島県内で実施した除染で生じた約1400万立方メートルの土のうち、約80%が現時点で土木工事などに再利用可能とする試算を環境省が19日、有識者検討会に報告した。同県内では再利用への抵抗感が根強く、政府の思惑通り進むかどうかは不透明だ。
福島県内の除染土について、政府は第1原発に隣接した「中間貯蔵施設」で30年間保管後、県外で最終処分する方針。しかし除染土の量は膨大で、環境省は放射性物質が1キロ当たり8000ベクレル以下の土について、道路の盛り土に利用したり、農地の地下深くに埋めたりして処分量を減らす方針を示している。
環境省によると、昨年10月までに中間貯蔵施設に搬入した除染土約150万立方メートルの放射性物質を測定したところ、約80%が現時点で1キロ当たり8000ベクレル以下だった。今後、時間がたてば放射性物質の濃度はさらに下がり、30年後には99%が8000ベクレル以下になるという。
環境省は除染土の再利用に向けた実証事業を2017年以降、福島県南相馬市の除染土仮置き場と飯舘村の帰還困難区域で進めている。しかし二本松市の市道や南相馬市の常磐自動車道工事に使う計画は住民の反対で実施の見通しが立っていない。【五十嵐和大】
除染土再利用へ手引き案 環境省示す 実現に疑問の声も
福島民報 2019年3月10日
東京電力福島第一原発事故に伴う除染土壌の最終処分量削減に向け、環境省は十九日、関係省庁や県、市町村などに除染土壌の再生利用を促す手引き案をまとめ、減容・再生利用技術開発戦略検討会で示した。再生利用の対象は県内で発生した除染土壌に限定し、公共事業などでの土木資材としての活用を明記した。一方で委員からは、再生利用の実現可能性を疑問視する声も上がった。
手引き案によると、環境省は再生資材化の実施者として、再生資材を保管・運搬する際の記録を作成し、管理する。災害時に再生資材が流出した場合には対応主体となる。
関係省庁や県、市町村などは再生資材の利用者・管理者として、地形や地質、気象などを勘案し放射線防護上の安全性を確保できる設置場所を選定する。施工の記録を作成、管理し、環境省などと情報を共有する。再生利用した施設の維持管理などを担う。
検討会で油井三和委員(福島高専特命教授)は、県内で発生する除染土壌の県外最終処分などに関する経済的試算を示し「当初の二千二百万立方メートルなら約三十兆円、見直し後の千四百万立方メートルなら二十兆円とされている。経済性評価を示し再生利用が現実的な解決策として理解を得るべきだ」と指摘。帰還困難区域内の特定復興再生拠点区域の整備に除染土壌を利用するなどしない限り、再生利用は進まないとの考えを示した。別の委員は「公共工事となれば民間事業者が再生資材を利用することになる」として、時期や手順が曖昧だと指摘した。
環境省は最終処分場の規模を小さくすることで県外処分に道筋を付けたい考えで、除染土壌の減容化と再生利用による県外での最終処分量の削減を目指している。今回の検討会での指摘を踏まえ、三月末までに手引き案を修正するとしている。