熊本日日新聞が「原発・エネルギー 世界の変化に対応すべき」とする社説を掲げました。一字一句、尤もな主張です。
日本が世界の中で特異的に再生可能エネルギー発電で後れを取っているのは、ひたすら日本の原子力ムラの特異性・・それは大量の官僚は勿論大量の政治家も含んでいる・・に起因しています。彼らは一刻も早く世界の現実を認識し、自分たちの異常性に気付くべきです。
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社説 原発・エネルギー 世界の変化に対応すべき
熊本日日新聞 2019年3月18日
東京電力福島第1原発事故の発生から8年が過ぎた。その間、原発の高コストが明確になり、世界のエネルギー情勢は大きく変わった。その中で、日本の政策は足踏みしたまま、変化から取り残されている。現実に目を向けて対応しなければ、国際的な競争力も損なわれてしまう。
原子力発電は世界で急速に競争力を失った-。公益財団法人・自然エネルギー財団が1月、そんな報告書を公表した。1996年に世界の総発電量の17%を占めた原子力は、2017年に10%まで低下した。安全対策の強化などでコストが増大したこと、放射性廃棄物の処理が停滞していることなどが原因だ。
一方、風力や太陽光など再生可能エネルギーの発電コストは下がり、比率は24%に達した-と報告書は指摘する。国際エネルギー機関(IEA)によると、再生可能エネは40年に41%まで拡大すると見込まれている。
「脱炭素化」に向かっている世界は、化石燃料による火力発電についても依存度を下げている。二酸化炭素排出を削減して地球温暖化防止を目指すパリ協定が15年に採択され、英国、フランスなどは相次いで石炭火力発電の廃止を決めた。石炭依存度の高かったドイツでさえ、38年までに全廃する方向を打ち出した。
これに対し、日本の現状はどうか。震災前に国内電源の25%を占めた原発は54基すべてが停止。再稼働できたのは9基で、17年度は電源全体の3%にとどまっている。電力各社は代わりに火力発電に頼り、石炭・液化天然ガス(LNG)・石油で80%に上っている。水力を含む再生可能エネは16%にすぎない。
将来に向けても日本の政策の腰は定まっていない。昨年7月に決定したエネルギー基本計画は、30年度の電源比率を原発20~22%、再生可能エネ22~24%、火力56%の目標としている。
原発の目標は高すぎて、専門家からも「非現実的」との指摘が出ている。政府は「可能な限り原発依存度を低減していく」としながら、原発を重要な基幹電源と位置付けている。私たちが何より忘れてはならないのは、福島の原発事故と回復困難なその後の被害である。原発のリスクを完全に回避できる保証はない。現在の計画はその経験則を軽視している。
火力は今より削減される方向だが、この目標設定ではこれも高すぎるだろう。化石燃料、特に石炭重視の日本の政策には、外国政府からも厳しい批判が出ている。再生可能エネの目標は逆に低すぎ、世界の実績に追い付いていない。
供給と需要を調整するシステムや蓄電池など、電力供給が不安定な再生可能エネの欠点をカバーする技術は、もともと日本の得意分野だ。脱原発、脱炭素化の国際競争に打ち勝つためにも、こうした技術に集中投資すべきだろう。適切な政策が社会変革を促せば、既存の技術で原発も温暖化もない社会の実現は可能ではないか。