30年以内に東日本を再び大地震が襲う恐れが強いとされる中で、原発の再稼働に伴う住民の避難計画を机上の空論で済ませることは許されません。
住民の避難は、原発の安全対策(深層防護)において、原発内で施されているIAEA第4層の防護策までが破られたときの最後の手段、IAEA第5層の防護策です。
もしもそれが完全に機能しないのであれば、要するに原発の安全対策が不十分ということになり、再稼働の要件を満たしません。
関係自治体には「避難が出来ないから再稼働はノー」といえる資格は法律的に与えられていないということですが、それは原子力規制委が確信犯的に行った法律上の不備です。
逆にいえば、避難が十分安全に出来ないのであれば自治体は再稼働を認めるべきではないということです。
東京新聞が、百万人近い周辺住民を持つ東海第二原発の再稼働において、住民に逃げ場はあるのかとする社説を出しました。
本来、そんな高い確率で大地震が襲う可能性のあるところに原発は立地すべきではなかったのでした。ましてその際に住民が安全に避難できないということであればなおさらのことです。
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社説 東海第二原発 100万人の逃げ場あるか
東京新聞 2019年3月1日
日本原子力発電が東海第二原発の再稼働を明言した。3・11の津波被災原発なのに、百万人近い周辺住民の避難計画はほとんどできていない。大地震の危険が再び迫る中、これで理解が得られるか。
「自治体や地域住民のしっかりとした理解を得ながら、再稼働をめざしたい」
原電側の唐突な「再稼働表明」に、茨城県の大井川和彦知事は「県の安全性評価結果を待つべきではないか」と不快感を表した。
東海第二原発は昨年九月、原子力規制委員会から、新規制基準に「適合」とされ、十一月には最長二十年の運転延長の認可を受けた。四十年の法定寿命を迎える二十日前のことだった。
一般に電力事業者は、規制委の「適合」判断を安全の“お墨付き”として、立地自治体の同意を得て再稼働を進めている。
原発から三十キロ圏内の市町村は、避難計画の策定を国から義務付けられている。「危険な地域」と言われているようなものである。そのほとんどは、危険はあるのに、ノーと言う資格がない。
原発再稼働に対する不信の根っこには、説明と対話の圧倒的な欠如がある。
東海第二は、特に説明が必要な原発だ。東日本大震災で津波に襲われ、外部電源を一時失った「被災原発」なのである。
原電は昨年三月、立地自治体だけでなく、三十キロ圏内にある県内十四市町村のうち、県都水戸市など六市村に範囲を広げ、再稼働に際して事前同意を取り付けるという安全協定を締結した。
ところが先月、常陸大宮市など残る八市町などと結んだ協定では「同意権」を認めていない。
それなのに、原電の村松衛社長は「規制委の許認可に基づく安全対策にめどがつき、地元東海村や隣接自治体とも安全協定を結ぶなど、一定の条件が整った」と話している。
東海第二の三十キロ圏内には、全国最多の約九十六万人が暮らしているが、避難計画の策定はほとんど進んでいない。
そもそも百万人近い人々に、どこへ逃げろというのだろうか。住民側には「理解」の土壌すらできていない。「三十年以内に、東日本を再び大地震が襲う恐れが強い」という政府の地震調査委員会の警告を、どう受け止めるのか。
東海第二だけでなく、再稼働に理はないということだ。
確実な避難計画がなければなおのこと。