2021年11月21日日曜日

21- 女川原発再稼働「地元同意1年」

 東北電力女川原発2号機の再稼働について、河北新報社などが複数回行った県内世論調査ではいずれも6割以上が再稼働に反対でしたが、村井嘉浩宮城県知事は、県議会の判断を最重要視するとして、1年前に地元同意を政府に伝えています。

 宮城県議会は19年20年、住民投票条例案を2度否決し、県民が意思を示す機会は訪れませんでした。
 昨年11県市町村長会議で、発言した20人の賛否は交錯しました。立地2市町の容認を重く見る一方、多くの人々が古里を奪われた東京電力福島第1原発事故の深刻さを訴え、広域避難計画の実効性を疑問視した首長も複数いました。
 河北新報が、再稼働の同意通告1年目に当たり記事を出しました。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
女川再稼働「地元同意1年」 立地首長、避難道整備の動向注視
                            河北新報 2021/11/18
■民意の反映、県民に疑念も
 東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働を巡り、村井嘉浩宮城県知事が地元同意を政府に伝えて18日で1年となるが、民意が十分に反映されたのかどうか県民の間には疑念が今もくすぶる。原発と共存し、東日本大震災で被災した地域の将来像を左右する重大決断は「国への追従に過ぎない」(野党県議)との見方も根強い。
 村井知事は2号機の再稼働に関し「県民の代表たる県議会の判断を最重要視する」と一貫して主張。河北新報社が複数回行った県内世論調査ではいずれも6割以上が再稼働に反対だったが、自民党会派が過半数を占める県議会は2019年と20年、住民投票条例案を2度否決し、県民が意思を示す機会は訪れなかった。

 東北電が20年4月、安全対策工事の完了時期を2年遅らせ、新型コロナウイルス下で国の防災訓練も延期される中、住民説明会は一気に進められた。県議会は同10月、立地2市町議会と歩調を合わせ、再稼働を求める請願を賛成多数で可決した。
 同11月9日の県市町村長会議で、発言した20人の賛否は交錯した。立地2市町の容認を重く見る一方、多くの人々が古里を奪われた東京電力福島第1原発事故の深刻さを訴え、広域避難計画の実効性を疑問視した首長も複数いた。
 「女川町、石巻市の考えに理解を示したというのが『総意』でよろしいですか」。最終盤に切り出した知事は拍手で決を採り、一任を取り付けた。その2日後の同意表明。政府の要請を受けてから、わずか8カ月間での流れ作業だった。
 一連の経緯は、先月の知事選での争点にもなり、対立候補は「知事預かりのような形で決めたのは民主主義の否定だ」と厳しく批判した。
 5選を果たした村井知事は今月15日の定例記者会見で、地元同意に関して「極めて民主的な手続き」と改めて強調。「県議会で示された民意がまさしく県民の民意。市町村長会議も最終的には(立地2市町長との)3人で決めた結論が会議の意思だった」と振り返り、住民投票についても「議会軽視だと思う。よほどのことがない限りやるべきではない」と持論を述べた。

■石巻バイパスの予算化まだ
 女川2号機再稼働への地元同意から1年がたち、立地自治体の首長は原子力災害時の避難道路整備に向けた宮城県や国の動向を注視している。
 須田善明女川町長は昨年11月の地元同意に際し、災害時に住民が避難できる道路インフラの着実な整備を村井嘉浩知事に求めた。関係省庁への要望も重ねる。
 懸案となるのが三陸沿岸道石巻女川インターチェンジ付近と町をつなぎ、未整備区間を抱える国道398号石巻バイパス。大雨による冠水被害が相次ぐ国道の迂回(うかい)路で女川原発での重大事故時の避難道になる。未整備区間について県は今年8月、山側にトンネルを掘る全長約65キロの新ルート案を女川、石巻両市町に示したが、予算措置は講じられていない。
 須田町長は「県には正面から向き合ってもらっているが、予算化されないと何とも言えない」と話す。町民は避難時に周辺自治体を通るため「女川に限った話ではなく、原子力防災を包括的に扱う枠組みが必要だ」と注文した。
 4月の市長選で初当選した斎藤正美石巻市長は再稼働について亀山紘前市長と同様に前向きな立場を示す。ただ、市長選でも避難計画の実効性向上を強調しており「住民が納得できる計画作りに引き続き取り組む」と述べた。