2021年11月3日水曜日

東京電力強制起訴、2日から控訴審 東京高裁

 福島第1原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴され、一審東京地裁で無罪判決を言い渡された東電旧経営陣3人の控訴審初公判2日午後開かれました。

 争点のポイントは経営者たちが津波襲来の可能性を予見できたのかどうかと言われていますが、これまでの経過を見ると、政府機関が公表した津波の高さなど地震の評価を経営側が受け入れたくないとばかりに、放置乃至判断を先送りしようとしていた姿勢が見受けられ、「予見できたかどうか」の判断以前の問題に思われます。
 原発事故避難者訴訟においてこれまで高裁判決は4例あり、うち国と東電の賠償責任を認めた判決は3例あり「政府の機関による地震の評価は信頼できる。国はこれに基づいて津波の危険性を予測できたはずだ」としています
 審理に参加した海渡雄一弁護士は、「2審の最も大きな焦点は、裁判所が原発の現場検証を行うかどうかだ。 実施されれば1審の無罪判決が見直される可能性も高まると思う」と話していま
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東京電力強制起訴、2日から控訴審 東京高裁、長期評価が争点
                         福島民友 2021年11月2日
 東京電力福島第1原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴され、一審東京地裁で無罪判決を言い渡された勝俣恒久元会長(81)ら東京電力旧経営陣3人の控訴審初公判は2日午後1時30分から、東京高裁で開廷する。控訴審では、一審判決で否定された、政府がまとめた地震の規模や切迫度に関する予測「長期評価」の信頼性が再び争点になる見通しだ。
 被告は勝俣元会長のほか、武黒一郎元副社長(75)、武藤栄元副社長(71)。一審では、東電が事前に福島第1原発を襲う大津波の発生を予見することができたか、十分な安全対策を講じたならば原発事故は防げたのかどうかが争われた。
 検察官役の指定弁護士は、旧経営陣の3人が事故前に長期評価に基づき最大15.7メートルの津波が来る可能性があるとした試算を知りながら、「津波襲来の危険性を知りつつ、対策をしなかった」と主張した。一方の弁護側は、長期評価は信頼性が欠け、「大津波は予見できなかった。仮に試算に基づく対策をしても、事故は防げなかった」と主張した。
 一審判決は、政府の長期評価の信頼性を否定し、禁錮5年の求刑に対し無罪を言い渡した。指定弁護士はその後、長期評価は信頼性があり、判決は事実誤認であるとして控訴した。高裁の審理では、専門家の証人尋問や裁判官による第1原発周辺の現場検証を求めている
 起訴状によると、3人は大津波の対策を怠って原発事故を招き、長時間の避難を余儀なくされた双葉病院(大熊町)の入院患者ら44人を死亡させたほか、原子炉建屋の水素爆発で自衛官ら13人にけがを負わせた、としている。

両元副社長出廷、元会長は欠席へ
 控訴審に出廷の義務はないが、2日は3人の被告のうち武黒、武藤の両元副社長が出廷する。勝俣元会長は、体調不良を理由に欠席する。


東電 強制起訴裁判 2審始まる 旧経営陣側 改めて無罪を主張
                     NHK NEWS WEB 2021年11月2日
福島第一原発の事故をめぐり、強制的に起訴され、1審で無罪を言い渡された東京電力の旧経営陣3人の2審の裁判が始まり、旧経営陣側は改めて無罪を主張しました。
東京電力の勝俣恒久元会長(81)、武黒一郎元副社長(75)、武藤栄元副社長(71)の3人は、福島県の入院患者など44人を原発事故からの避難の過程で死亡させたなどとして、検察審査会の議決によって業務上過失致死傷の罪で強制的に起訴されました。
1審の東京地方裁判所はおととし9月「巨大な津波の発生を予測できる可能性があったとは認められない」などとして3人全員に無罪を言い渡し、検察官役の指定弁護士が控訴していました。
2審の裁判が、2日から東京高等裁判所で始まり、指定弁護士は「1審の判決は、津波に対する国の見解で対策の大前提となる『長期評価』の信頼性を無理やり否定していて誤りだ」と述べ、3人には防潮堤の建設や、建屋などへの浸水を防ぐ対策をとる義務があったと主張しました。
一方、旧経営陣側の弁護士は「巨大津波を防ぐための対策は大がかり、かつ長期間にわたり、原発事故の前に着手していても間に合わなかった」と述べて、改めて無罪を主張しました。
次回の審理は来年2月に行われ、指定弁護士が求めている裁判官による原発の現場検証を実施するかどうかが決まる予定です。

被害者 遺族の代理人「裁判所が原発の現場検証行うかが焦点」
被害者と遺族の代理人として審理に参加した海渡雄一弁護士が記者会見し、「2審の最も大きな焦点は、裁判所が原発の現場検証を行うかどうかだ。きょうは判断されなかったが、慎重に検討したいという裁判所の姿勢の表れだと期待している。実施されれば1審の無罪判決が見直される可能性も高まると思う」と話していました。

遺族「無罪はありえない」
福島県の佐藤久男さん(62)の父親は原発事故のあと入院先の大熊町の双葉病院から避難することができず、医療スタッフとともにその場に残り3日後亡くなりました。
東京電力の旧経営陣3人が改めて無罪を主張したことについて、佐藤さんは「原発が爆発したため、取り残された人たちを迎えに行きたくても行けなかった。亡くなった父親の目元には涙のあとがあり、苦しんで亡くなったのだと思う。東京電力には絶対に責任があり、無罪ということはありえない。3人には罪を認めてほしい」と話していました。