2021年11月5日金曜日

伊方原発3号機、差し止め却下 広島地裁決定、危険性認めず

 四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを求め、広島、愛媛両県の住民7人が申し立てた仮処分について広島地裁は4日、最大の争点である原発の耐震性を巡り「具体的な危険があるとはいえない」として申し立てを却下しました。住民側は広島高裁に即時抗告する方針です。
 同原発の基準地震動650ガルは、近辺を中央構造線が走っているにもかかわらず、全国各地で実際に観測された地震動の値と比較して一見して低いものです。
 それに対して広島地裁は「伊方原発の地盤構造などに合わせた補正などをしないままに比較しても具体的な危険があるとはいえない」として、原告側に立証責任を求める立場をとっている一方で、「原子力規制委は極めて高度な科学的、専門技術的な知見に基づく総合的判断をしている」と無条件で高く評価しています。
 現実には規制委に地震の専門家はいないし、これまで個別の事案で外部の専門家から様々に誤りを指摘されてきました。「地盤構造にあわせた補正」と言うのは簡単ですが、そんなことが正確に出来るほど地盤構造を含めた地震強度の解明は出来ていないというのが実情(そもそも基準地震動の決め方も「断層線の長さと実際の地震の強度」との関係を統計的に対比して処理しているに過ぎない)で、規制委の側にこそ650ガル以上の地震が来ないことを証明すべき責任があります。
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伊方原発3号機、差し止め却下 広島地裁決定、危険性認めず
                            中國新聞 2021/11/4
 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求め、広島市の被爆者を含む広島、愛媛両県の住民7人が申し立てた仮処分について広島地裁は4日、申し立てを却下した。最大の争点である原発の耐震性を巡り「具体的な危険があるとはいえない」と判断した。住民側は広島高裁に即時抗告する方針。
 住民側は耐震設計の目安となる揺れ(基準地震動)の加速度について、四国電が定める650ガル(震度6弱相当)は過小評価だと指摘。愛媛県の地域防災計画では南海トラフ巨大地震が起きた場合、伊方町は1531ガル(震度7相当)と想定されているなどとし「巨大地震で重大事故を起こす可能性が極めて高い」と主張していた。
 吉岡茂之裁判長は、決定理由で「伊方原発の地盤に合わせて数値を補正せず、比較するだけでは危険性があるとはいえない」と指摘。「原子力規制委員会が極めて高度な科学的、専門技術的な知見に基づく総合的判断をしている」とし、裁判所が同じ審査をするのは「相当でない」とした。
 住民側弁護団は「立証責任を国民に押し付け、不当な決定だ」と批判。四国電は「安全性が確保されているとの主張が認められた妥当な決定」とのコメントを出した。
 3号機の運転差し止めを求めた仮処分は東京電力福島第1原発事故後、広島、松山、大分の各地裁と山口地裁岩国支部に申請され今回が6件目。これまでの5件では四国電側の主張を認める決定が確定した。
 ただ広島高裁は2017年12月と20年1月、地震動の算定方法や阿蘇カルデラ(熊本県)の噴火リスクの評価が不十分として運転を禁じる決定をし、18年9月、今年3月の各異議審でいずれも覆った。
 運転差し止めを求める訴訟は、同じ3地裁と同支部で係争中。(山田英和)

<クリック>伊方原発 
瀬戸内海に面する愛媛県伊方町に四国電力が構える四国地方唯一の原発。計3基の加圧水型軽水炉で、3号機(出力89万キロワット)は1994年に運転開始。使用済み燃料を再処理し、加工した混合酸化物(MOX)燃料によるプルサーマル発電も行う。2011年の東京電力福島第1原発事故後、全3基が定期検査のため運転を停止。3号機は新規制基準への適合が認められ、16年8月に再稼働したが、定期検査や運転を差し止める司法判断、トラブルのため19年12月から運転を停止している。1、2号機(ともに出力56万6千キロワット)は廃炉が決まっている。


伊方原発、運転差し止め却下 運転停止中の3号機―広島地裁
                         時事通信 2021年11月04日
 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の安全性に問題があるとして、広島県と愛媛県の住民7人が運転差し止めを求めた仮処分申請について、広島地裁(吉岡茂之裁判長)は4日、却下する決定をした。住民側は広島高裁に即時抗告する方針。
 住民7人が昨年3月に申し立てていた。主な争点は、四国電が策定した耐震設計の目安となる地震の揺れ「基準地震動」の合理性などだった。
 吉岡裁判長は決定で「運転差し止めを命じるためには、基準地震動を上回る規模の地震が発生する具体的な危険性を住民が疎明することが必要」と指摘。「伊方原発の地盤構造などに合わせた補正などをしないままに、全国各地で実際に観測された地震動の値を引用し、伊方原発3号機の基準地震動と比較するだけでは、具体的な危険性があるとは言えない」と結論付けた。
 住民側は「過去の地震観測記録に照らすと、伊方原発3号機の基準地震動(650ガル、ガルは加速度の単位)は過小評価」と主張。一方、四国電は「基準地震動が適切に策定されていることは原子力規制委員会の審査で確認されている」と反論していた。


「具体的な危険性の証明なし」
伊方3号機運転差し止め認めず 広島地裁が仮処分申請却下
                          愛媛新聞 2021年11月4日
 愛媛県松山市と広島県の住民計7人が四国電力伊方原発3号機(伊方町)について想定する地震の評価が過小で重大事故の恐れがあるなどとして運転差し止めを求めた仮処分申請で、広島地裁の吉岡茂之裁判長は4日、「想定を上回る地震が発生する具体的危険性が証明されていない」などとして却下する決定を出した。住民側は広島高裁に即時抗告する方針。
 3号機は運転停止中で、四電は宿直中の待機要員が無断外出した保安規定違反の再発防止策などに対する地元自治体の理解を得て、再稼働を目指す考え。
 四電が3号機の基準地震動(耐震設計の目安となる地震の揺れ)を650ガルと想定したことの妥当性が主な争点だった。住民側は国内の原発で千ガル以上を観測した事例などを挙げ「伊方原発の基準地震動はあまりに低すぎる」などと主張していた。吉岡裁判長は、各地域の地盤特性への考慮や伊方原発の地盤構造に合わせた補正をせず単純比較するだけでは、基準地震動を超える地震の危険性は認められないと判断し、住民側の主張を退けた。
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