2023年9月2日土曜日

02- 近大研究チームが5年前にトリチウム除去に成功 政府が実用化を阻止

 日刊ゲンダイに「近大研究チームが5年前にトリチウム除去に成功」という記事が載りました。
 近畿大学の研究チーム18年に、民間企業と連携し、直径5ナノメートル(ナノは10億分の1)以下という超微細な穴を多数持つアルミ製フィルターを開発し、トリチウム水を含んだ水蒸気を通すと、細孔にトリチウム水だけが付着しほぼ100%分離できたということです。
 その後、研究チームは更に吸着材の品質改良を進めていますが画期的な実用化を阻んでいるのは何と政府と東電で、近大が政府系の補助金を申請すると「まだ実験室レベルでの研究」として突き返され、東電に福島第1原発敷地内での試験を打診しても、協力を得られなかったということです
 要するに「海洋放出処分」が疑問視されるような研究には一切協力しないということなのでしょう。しかし一番安価な「海洋放出ありき」で進んだ結果が、いまや関係者にこの先どれ程の補償をしなければならないのか想像もつかないという最悪の仕儀に陥ったのでした。
 政府はこの「結果責任」をどう果たすつもりなのでしょうか。
 海洋放出を直ちにやめてどう処分するべきかを根本的に見直すしかありません。
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近大研究チームが5年前、トリチウム除去に成功も…実用化を阻んでいるのは政府と東京電力
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 検出限界値未満で「不検出」──。東京電力は、福島第1原発処理水の海洋放出を受け、周辺海域10地点で採取した海水に含まれる放射性物質トリチウムの濃度を検査している。放出開始から1カ月程度は毎日実施し翌日に結果を公表。その後は週1回の通常検査となる。
 トリチウムを巡っては環境省や福島県も海水の濃度検査を実施。水産庁は周辺海域で採取した魚の濃度検査を行い、今後1カ月程度は毎日結果を公表する。狙いは風評被害の拡大防止だが、中国は日本産水産物を全面禁輸。公明党の山口代表の訪中が延期となり、海洋放出とは無関係な個人や団体にまで中国から抗議電話が相次ぐなど、負の影響は広がっている。

 全ての原因は多核種除去設備「ALPS」でもトリチウムを取り除けないことだ。問題のトリチウム水は普通の水と科学的な性質が似ており、分離するのは困難とされるが、民間では新技術への挑戦が続いている。
 2018年には、近畿大学の研究チームがトリチウム水の分離・除去に成功したと発表した。民間企業と連携し、直径5ナノメートル(ナノは10億分の1)以下という超微細な穴を多数持つアルミ製フィルターを開発。トリチウム水を含んだ水蒸気を通すと、穴にトリチウム水だけが付着し、ほぼ100%分離できたという。
 発表から5年。研究チームは品質改良を進めているが、実用化を阻んでいるのはナント、政府と東電である

中韓両国に日本の技術を売り込むチャンスなのに
 さらなる研究のために政府系の補助金を申請すると「まだ実験室レベルでの研究」として突き返され、東電に福島第1原発敷地内での試験を打診しても、協力を得られなかった。これでは宝の持ち腐れだ。せっかく画期的な国産技術が芽生えているのに、政府や東電の行動はその芽を摘もうとしているのに等しい。
 原発問題に詳しいジャーナリストの横田一氏はこう言う。
すぐに実用化できなくても汚染水との戦いは、数十年単位で続くのです。その間になぜ、日本の科学技術を進化させる機会を奪うのか。海洋放出容認派は、中国や韓国の原発は福島第1原発の何倍ものトリチウムを放出していると主張しますが、それこそ日本の技術を世界に売り込むチャンスです。トリチウム除去を巡っては近大の研究チーム以外にも、民間からさまざまな技術提案がなされていますが、政府も東電も一顧だにしません。理由はALPSなど海外の権威ある技術を使っておけば失点につながらないという保身でしょう。リスクを恐れず、新たな技術に挑むのが本来のあるべき姿です」

 中国の全面禁輸に、食品安全担当でもある河野太郎大臣は「全く科学的根拠のない非論理的な対応」と批判したが、日本のトリチウム除去技術に目を向けないのも「非科学的で非論理的」である。