2023年9月11日月曜日

1回目放出は11日にも完了 7800トン

 福島原発のアルプス処理水の海洋放出は10日に放出予定量の約7800トンに達したので、1回目の放出を終了します。
 今年度はあと2回放出する予定で、3回分で計約3万1200トンを放出します。
 放流後の海水については分析員40人で69核種の放射性物質濃度を調べ、1日平均約100件の試料を測定しているということです。
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原発処理水1回目放出、11日にも完了 7800トン、国の基準下回る
                             産経新聞 2023/9/9
東京電力福島第1原発処理水の海洋放出は、設備などのトラブルはなく、計画通り10日に放出予定量の約7800トンに達し、11日に配管を洗い流して1回目の作業が完了する見通しだ。放出後には中国が日本産水産物を全面禁輸し、嫌がらせ電話が相次ぐなど波紋も広がっており、国内外で生じる風評にどう対処するか。科学に基づく正確な情報発信は懸念を解消する最大の論拠となる。
原発構内の入り口近くにある化学分析棟。ここでは処理水に含まれる放射性物質の測定が行われている。運用が始まったのは事故から2年後の平成25年7月。当時は地上の放射線量が高く、分析結果への影響を考慮し、地下1階に建設された。

測定に当たる分析員は約40人。処理水に含まれる69核種の放射性物質濃度を調べ、1日平均約100件の試料を測定している。令和4年度は約9万件の分析を実施し、このうち多核種除去設備(ALPS=アルプス)で浄化処理できないトリチウム関連の測定は約1万件に上った。
実際の測定作業では、眼鏡型端末スマートグラスを装着した分析員が、処理水の入った試料を持ち上げ、容器に貼ったQRコードをカメラで読み取る。「グッド」と発声すると、グラスには次の作業手順が表示され、採取した日時や場所などを音声入力し、システムに自動登録される。
「ミスを防ぐために先端技術を導入し、データはQRコードで一元管理している」。東電の担当者はこう説明した。システムは3年前に導入され、測定データを紙に手書きしていたときよりも転記ミスが大幅に減少。データ処理の時間も大幅に短縮されたという。

放出後には海水の調査ポイントが10カ所増え、分析件数が増加。今年度内の施設拡張も検討されている。担当者は「分析結果の信頼性を高めるために、正確で迅速なデータ公表に努めたい」と話す。
海洋放出にあたっては国や東電、福島県が周辺海域の監視態勢を強化し、海水や魚、海藻に含まれるトリチウム濃度を100カ所以上で測定。このうち放出口付近は東電が重点的に調べ、8月24日に始まった放出後は1カ月程度、原発から3キロ圏内の10地点を毎日測定している。
これまでの測定では、放出口付近で24日に採取した海水を精密分析した結果、1リットル当たり10ベクレルのトリチウムが検出されたが、残りの9カ所ではいずれも検出限度を下回った。世界保健機関(WHO)の飲料水水質ガイドラインは同1万ベクレル以下を安全基準と定め、福島原発では同1500ベクレルを上限濃度に設定。仮にこの濃度の水を毎日約2リットル飲んでも、1年間で被曝(ひばく)する線量は限度量の10分の1にも満たない。水産庁が実施しているヒラメやトラフグなどの分析でも検出されていない。

東電の拡散予測によると、放出前の海水に含まれるトリチウム濃度(同0・1~1ベクレル)よりも高くなると評価されたエリアは、原発周辺の2~3キロの範囲で同1~2ベクレル、放出口付近でも最大30ベクレルと予測。いずれも国の基準値以下で、周囲の海水と混ざれば、さらに濃度が低下し周辺環境と区別ができなくなるという。
ただ、放出に反対する中国は、開始後に日本の水産物輸入を全面停止した。中国からの嫌がらせ電話も後を絶たず、訪日団体旅行客のキャンセルや日本製品の不買運動など反日感情が広がる。
岸田文雄首相は中国に対し「科学的根拠に基づいて議論するよう働き掛ける」と述べ、冷静な議論に応じるよう求めた。禁輸撤廃に向けて、国内外でくすぶる風評の火種を抑えるためには、正確で透明性の高いデータを広く公開し、丁寧に説明を尽くす必要がある。
                  
福島第1原発処理水 1~3号機で溶け落ちた核燃料(デブリ)を冷やすために注入した水と、地下水や雨水から発生した汚染水を浄化処理した水。敷地内のタンクに約134万トンを保管し、トリチウム濃度が国の排水基準の40分の1未満になるよう海水で薄めてから海に流す。1回目の放出は約7800トン。10日には予定量に達し、11日に移送配管に残った約16トンを流して完了する。今年度は残り3回の放出を計画、計約3万1200トンに上る見通し (白岩賢太)