2023年9月25日月曜日

中国の禁輸で豊洲に打撃 福島産の魚「常磐もの」に応援の声

 アルプス処理水が海洋放出されてから1カ月中国や香港による日本産水産物の禁輸に伴い、東京・豊洲市場の水産業者も深刻な打撃を受けています。すしネタなどの高級鮮魚を取り扱う仲卸業者は「輸出の大半が止まってしまった。被害は数千万円に上りそう」と肩を落とします。

 その一方で福島県産の消費を後押しするムードが高まっていて、同市場内に設置された被災地支援の一般向け水産物販売店も利用者が増えています。7月オープンした岩手、宮城、福島の3県産水産物を一般客が購入できる店舗「三陸常磐 夢市楽座」盛況で、「8月以降、刺し身などの鮮魚はほぼ完売」(東卸担当者)してい人気は上々です
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
福島産の魚「常磐もの」に応援の声 処理水放出1カ月、禁輸で豊洲に打撃
                             時事通信 2023/9/25
 東京電力福島第1原発の処理水が最初に海洋放出されてから、24日で1カ月。放出に反発する中国や香港による日本産水産物の禁輸に伴い、東京豊洲市場(江東区)の水産業者も深刻な打撃を受けている。その一方で、福島県産の消費を後押しするムードが高まっている。同市場内に設置された被災地支援の一般向け水産物販売店も利用者が増えている。(時事通信水産部 岡畠俊典)

◆輸出は大幅減少、ホタテなど相場下落も
 処理水の放出が始まった8月24日以降、中国は日本産の水産物を全面禁輸、香港は福島など10都県からの輸入を停止している。中国と香港は日本の主要な輸出先だっただけに、産地や魚市場に暗い影を落としている。
 豊洲市場では、鮮魚を都内の高級すし店などに卸すだけでなく、海外に輸出する仲卸業者も多い。香港向けが中心で、同市場で早朝に取引された魚がその日のうちに現地へ空輸され、現地の飲食店に届けられるルートが確立。輸出を伸ばしてきた。それに加え、同市場関係者は「中国に香港などを経由して渡っていた水産物も少なくなく、禁輸による損失は大きい」と話す。
 すしネタなどの高級鮮魚を取り扱う仲卸業者は「輸出の大半が止まってしまった。被害は数千万円に上りそう」と肩を落とす。ウニなどを手掛ける別の仲卸は、輸出量が半減したと明かし、「禁輸がこのまま長期化すれば、ますます厳しくなる」と不安な表情を浮かべる。早期の輸入規制撤廃に向けた中国などへの働き掛けも政府に求めている。
 中国などの禁輸措置は、水産物の取引価格にも影響を及ぼしている。北海道産などのホタテは「相場が2~3割下がった」と豊洲市場の卸会社の関係者は明かす。このほかにも、香港の禁輸の対象地域となった千葉県産で、キンメダイの価格が3割前後落ち込んだほか、アワビも一時、半値近くになったという。

◆「食べることで応援したい」
 そんな中、豊洲市場の卸会社や仲卸業者からは、福島県産の水産物「常磐もの」を応援する声が相次ぐ。卸会社の競り人は「品質の良い魚が多いので、自信を持って出荷してほしい」と強調。処理水の放出以降、「福島の魚を仕入れるすし店が増えてきている」(大手仲卸)といい、支援の輪が広がっている。
 同市場に7月オープンした岩手、宮城、福島の3県産水産物を一般客が購入できる店舗「三陸常磐 夢市楽座」も盛況だ。「夢市楽座」は、東日本大震災の被災地支援を目的に、同市場の水産仲卸団体、東京魚市場卸協同組合(東卸)が運営。店頭には、仲卸が選んだ東北3県の新鮮な魚の刺し身や加工品が並び、「8月以降、刺し身などの鮮魚はほぼ完売している」(東卸担当者)と、人気は上々だ。
 これまでに毎月第1、3土曜を中心に開店し、延べ1200人以上が購入、売り上げは約230万円。営業は来年2月末までの期間限定だが、東卸の担当者によると「既に期間中の総売り上げ目標に到達した」という。
 9月中旬、初めて買い物に訪れた都内在住の40代女性は「処理水の放出は気にならないむしろ食べることで応援したい」と語る。東卸の幹部は「三陸や常磐の魚を食べてもらい、多くの人に良さを知ってもらいたい」と消費拡大に期待を込めている。