小泉純一郎元首相が「脱原発は郵政民営化より簡単」と安倍首相を批判
エキサイトニュース 2016年10月9日
小泉純一郎元首相(74)が報道番組『NEWS23』(TBS系)で、2006年の首相退任後では初のテレビ単独インタビューを受け、そのVTRが10月4日に放送された。
小泉氏の現在のライフワークは脱原発活動だが、インタビューでも「原発推進論者がいままで言ってきたことはすべてうそ」と話し、「うそだと分かってたのに、どうして(原発政策を)進めるんだ」、「これだけ言っているのに、どこも私に文句を言ってこない」と続け、かつて首相を務めたときの強気発言が健在であるところを見せつけた。
さらに小泉元首相は、先月にあった加藤紘一さんの葬儀で安倍首相と対面したとき、安部首相に「原発をゼロにできるのに、なぜしないんだ」と思いをぶつけたそうだが、安倍首相は、返答することなく苦笑しながら聞いていただけだそうだ。
小泉氏は、安倍首相の態度について「ここまで推進しちゃって、原発の輸出まで奨励しようとしてる。(脱原発は)ムリじゃないかな」と分析。さらに「あまり感心ないんじゃないかな。むしろ憲法改正の方が大事、優先順位が違うんだね」と語っていた。
2014年の東京都知事選挙で、小泉氏は反原発を掲げて出馬した細川護熙元首相を支持したが、細川氏は落選。国政選挙でも原発はなかなか主要な争点にはならない。こうした現状を小泉氏は次のように説明していた。
「立地自治体には交付金が入る。原発産業は裾野が広い。鉄を使い、セメントも使う。…原発で食べていこうという人や、利害関係者は多いだろう。本来は民進党が脱原発と言うべきだが、労働組合があるから言えない」
しかし、小泉氏は「脱原発は郵政民営化より簡単」と決して悲観していない。「粘り強く国民運動が必要」と今後についても意気軒昂だった。
そして、小泉氏が批判する国の原発政策も、ここにきて大転換を迎えようとしている。高速増殖炉『もんじゅ』の廃炉が決まりそうなのだ。
一般の原子力発電所からは、使用済み核燃料(いわゆる核のごみ)が必ず出てくるが、そこからプルトニウムや燃え残りウランを取り出し、再び燃料として利用する仕組みを『核燃料サイクル』と呼んでいる。もんじゅは、福井県敦賀市にある高速増殖炉という特殊な原子炉のことで、使用済み核燃料から出たプルトニウムを使って発電しようとしていた。それゆえ、1950年代から核燃料サイクルの根幹として位置付けられてきた施設だ。
しかし、1995年にナトリウム漏れ事故を起こすなど、試運転後も事故続きで、約1兆円もの国費を投じながら、30年間でまともに稼動していたのはたったの200日あまり。まったく動いていないにもかかわらず、いまも年間の維持費が200億円もかかるという。
そんな施設であるにも関わらず、政府(文部科学省)がこれまで廃炉にできなかったのは、核燃料サイクルという名目があったからだ。そうでなければ、原子力発電所から出た使用済み核燃料は、直ちに再利用できない単なる核のごみだということになってしまう。…政府は「ゴミではありません。資源です」と強弁してきたが、それもいよいよ通用しなくなる。
そして、核のごみを捨てる場所は全く決まっておらず、その目処すら立っていない。ごみ捨て場を引き受ける自治体があるはずもないからだ。
小泉氏はインタビューの中で、もんじゅについて「30年間かけて、夢の原子炉がまぼろしの原子炉になった」と皮肉を言っていた。