2016年10月30日日曜日

30- 新潟日報の泉田前知事への過激ネガキャンに県民が反発したとBJ

 泉田氏の4選立候補引きずり下ろしに向けてネガティブ・キャンペーンを行った新潟日報が新潟県知事選において果たした役割について、ビジネスジャーナル(Business Journal)が総括する記事を載せました。
 同誌はそうした新潟日報の行動が県民の間に「不明朗な動機を持っているのではないか」という疑念を生じさせ、却って米山候補の当選に結びついたとしています。
 
 また泉田前知事がマスコミへの拡散能力を持っていて、岩上安身氏が主宰するIWJや全国紙、週刊誌などのインタビューを積極的に受け入れたことで新潟知事選を全国ネット版に押し上げたことも、米山候補の当選につながったとしています。
 
 こうした問題提起をされた当事者(新潟日報)が見解表明を求められれば、普通であればそれなりに丁寧な釈明を行うものですが、このケースで日報から来た見解は、『まったく事実ではありません。このような報道をしたことは、一度もございません』という、あまりにも簡単なものでした。
 これではとてもビジネスジャーナルの視点を否定することなどできません。
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反原発知事への過激ネガキャンで自民・大手電力に加担?
批判殺到の新潟日報が真っ向反論
ビジネスジャーナル 編集部 2016年10月29日
 10月16日、新潟県知事選挙で原発再稼働反対派の米山隆一氏(共産、自由、社民推薦)が森民夫氏(自民、公明推薦)を退け、泉田裕彦前知事の路線を引き継ぐことになった。
 その数カ月前、原発再稼働反対を訴える泉田知事が出馬を撤回し、新潟県民の多くが言葉にならない無力感に襲われていた。最後の土壇場で、原発再稼働に危機感を抱いた共産、自由(旧生活の党)などの原発再稼働反対陣営が告示6日前に元民進党の米山氏を擁立し熾烈な戦いが始まった。
 
 その戦いは米山氏の勝利に終わったが、実際の展開は自民対野党といった選挙戦ではなく、原発再稼働に反対する市民グループと、原発ムラ(政府、自民党、経済産業省、東京電力、地元政財界など)、成り行きで自民・公明推薦の森陣営に加担した格好となった地元紙・新潟日報の戦いでもあった。米山氏を支援した市民グループには子供を持つ主婦が圧倒的に多く、どぶ板作戦を展開する市民グループと連携して、共産、自由などの政党が米山候補の組織的支援運動を展開した。対する森陣営は、安倍晋三首相が官邸で自ら森氏に推薦状を手渡すなど、政府が総力をあげた支援体制を敷いた。
 
 そのようななかで特異な動きをしたのが、地元紙の新潟日報だ。発行部数は46万部ほどで、地方紙として全国的にもその名前を知られている。特に原発問題の報道では一貫して東京電力に批判的な記事を展開し、県外でも高く評価されてきた
 しかし、その地方紙がここ数年で変貌を遂げた。その顕著な例が、2015年に発覚した支社報道部長によるツイッターを使った誹謗中傷、脅迫といった一連の事件だ。この報道部長は自分の立場を盾に新潟水俣病弁護団の弁護士を相手に「(ジャーナリストとして)お前の身辺を調べ上げる」と脅迫まがいのことをしていたのが発覚した。
 
異例の事態
  今回も選挙戦直前に、新潟日報は新潟県の第三セクター会社が関与した中古フェリー船購入を問題視した。能力不足で使いものにならない船を購入したとして泉田知事に非難を浴びせ、連日批判的な記事を掲載し続けたのだ。
「それが必要以上に過激な攻撃で、自民党筋が関与し、新潟日報を使った『泉田降ろし』ではないかといった声も聞かれた。さらに、新潟日報は泉田氏に反論する機会を紙面でまったく与えず、それに嫌気がさしたのか、彼は知事選の出馬を撤回するに至った」(マスコミ関係者)
 
 こうした新潟日報による泉田氏への批判の強さについて、10月11日付インターネットメディア「IWJ(インディペンデント・ウェブ・ジャーナル)」記事内で泉田氏にインタビューしたジャーナリスト・岩上安身氏は、「フェリー購入問題に関する新潟日報の記事は2015年12月からこれまで131件で、特に(実質的に県知事選が始まった)7月から9月に集中している」と指摘している。
 そして泉田氏本人も8月31日の会見で、今回の県知事選で出馬を断念した理由として新潟日報による報道を挙げ、「臆測で事実に反し、私の訴えが届かない」と公然と批判。これを受け新潟日報は9月17日、自社サイト上で「泉田知事の言動は極めて異例で、理解に苦しむものだ」「執筆や掲載の過程で、外部から圧力を受けたり、特定の勢力に配慮したりしたことは一度もない」「あずかり知らない『陰謀論』などを基に記事を色眼鏡で見られては心外だ」などとする反論記事を掲載する異例の事態に発展した。
 
泉田氏のメディア展開が功を奏す
 一連の新潟日報の報道を受け一般読者は、日頃は反原発を掲げる新潟日報がなぜ原発稼働反対派の泉田知事に対して、執拗に責め立てるのか理解に苦しんだ。そして予想外の結果だが、このような新潟日報の一連の動きが、米山氏に利したことになる。
 新潟日報が泉田氏への非難報道を続ければ続けるほど、一般市民の間では、泉田路線を継承する米山氏への同情票が増えていった
 元経済産業省官僚の泉田氏も、新潟日報には負けてはいなかった。地元で発言する場を失った泉田氏は、いくつかのメディア展開を迅速に繰り広げた。ツイッターを使って自分の見解を拡散し、手早くフォロワーを増やしていった。フォロワーは現在でも6万人ほどいる。
 
 さらに「週刊朝日」(朝日新聞出版)などの在京メディアで積極的にインタビューを受けて、突然の出馬撤回の理由を語り、「知事個人に対する不気味な動きがある」と訴えた。同時に、強力な訴求力をもつインターネット情報メディアのインタビューも積極的に受け入れ、知事を取り巻く出来事を語り続けた。そのひとつが、前出・岩上氏が主宰するIWJで、泉田氏や米山氏へのインタビューを含め、現地からの映像レポートを繰り返し発信している。
 泉田氏がメディア展開の場を新潟から東京に広げた時点から、全国紙や主要テレビ局の情報番組も新潟県知事選を注視し始めた。そのような注目度が米山陣営に利することにもなる。新潟県知事選は原発再稼働の今後を占う天王山と見られるようになり、泉田氏や米山氏のツイッターをフォローするユーザーは全国に広がり、大げさにいえば、県知事選の動向は全国的な規模でフォローされていった。
 この段階で米山陣営がマスコミの注意を惹いたのは、出遅れた選挙戦の巻き返し策として、誰にでも理解しやすい原発問題だけに的を絞り、それをワンイシュー(単一争点)としたことだ。
 
 一方、森陣営は地元財界を支援組織としているだけに、地元経済再生をメインに67項目の公約を挙げ、原発だけに公約を集約した米山候補とは対照的な選挙戦略を見せている。結果的には、マスコミも報道しやすい原発問題だけが語られる選挙戦となり、原発再稼働に反対する米山陣営に勢いがついた。
 
変わる選挙報道
 選挙取材に動いたのはインターネットメディアだけはない。朝日新聞などの主要全国紙も本社から支援要員をかなり送り込んだ。実際に、米山氏の当確を最初にいち早く報じたのは地元の民放テレビ局だが、新聞媒体では朝日新聞が最初だった。それに次いでNHKが当確を報じ、選挙速報と報道内容では新潟現地と東京で政府の反応などを取材する全国紙とNHKが強さを見せていた。ここでも、地方のニュースを知るために地元紙を読む時代が終わりを告げ、地方紙、全国紙を問わず、一刻も早くニュースを自社ウェブサイトにアップするかどうかで評価が分かれる時代になったといえる。
 
 ユーザーのほうも、たとえばYahoo!ニュースのフォロー欄でキーワードを登録すれば読みたい記事を即時にチェックできる。地元の主要な記事をフォローするだけなら、地方在住でも地元新聞に頼る必要もなく、全国紙のサイトで自分が住む地域情報をスマートフォン(スマホ)でチェックすれば事足りる。
 いまや、ニュースを発信するほうも、それをフォローするユーザーも変化し、その結果、選挙活動や選挙報道も変化を遂げている。後発だった原発再稼働反対派の米山氏も圧倒的な劣勢を巻き返し、ツイッターなどのソーシャルネットワークをフルに活用して、一気に森候補に差をつけた。今回の新潟県知事選は、選挙が本格的なネットの時代に突入したことを見せつけている
 
 新潟県民の間では、新潟日報が政府や原発ムラの片棒をかついで「泉田降ろし」に加担したと受け止めた向きが多いが、実際に同紙がそのような意図を持っていたのかは、謎のままだ。しかし、県知事選挙直前の泉田氏に対する同社の報道姿勢が、そのような疑惑を生んだのも事実だろう。「週刊朝日」(9月16日号)は、自民党新潟県連関係者のコメントとして「(新潟日報社の)小田敏三社長は以前から泉田氏に批判的で、今回の『泉田降ろし』キャンペーンは特に凄まじかった」と報じている。
 
 以上みてきたような、新潟日報が政府・自民党筋や大手電力会社の意向を受けて「泉田降ろし」を行ったという見方や、中古フェリー船購入問題に関して泉田氏本人に紙面上で反論する機会を与えなかったという見方について、新潟日報は当サイトの取材に対し、次のように回答した。
「まったく事実ではありません。このような報道をしたことは、一度もございません」
 
 今後、新潟日報は米山新知事にどのようなスタンスで接するのか、目が離せない。(文=編集部)