新潟県知事選で“小池劇場”の再来 ! ?
米山氏出馬で予想外の大接戦
HARBOR BUSINESS Online 2016年10月12日 9時0分
◆森氏の楽勝ムードから一転、ほぼ横一線に
東京電力「柏崎刈羽原発」の再稼動が最大の争点となっている新潟県知事選(9月29日告示・10月16日投開票)が、予想外の大接戦となっている。
「福島原発事故の検証と総括なき再稼動はありえない」が持論の泉田裕彦知事が8月30日に四選出馬を撤回した直後は、全国市長会会長を務めた森民夫・前長岡市長が自公推薦に加えて連合の支持も受け、楽勝ムードが漂っていた。
しかし告示日6日前というギリギリのタイミングで、泉田知事路線の継承を掲げる米山隆一氏が出馬表明し、共産・社民・生活の三野党が推薦すると、「再稼動反対が賛成の倍近い」という県民世論を背景に急速に浸透。森氏より一か月以上も出遅れたにもかかわらず、選挙戦終盤でほぼ横一線に並んでいる。
7月の参院選新潟選挙区では、野党統一候補の森ゆうこ参院議員が自公推薦の現職候補を僅差で破った。しかし今回の県知事選では、国政選挙で民進党を支援してきた連合新潟が自公推薦の森候補の支持に回っている。
地元選出の石崎とおる衆院議員(新潟1区)は、野党統一候補の枠組みが変わった理由をこう説明した。
「連合新潟の一番大きな母体は電機連合で、電機労組の方々は原発を動かしてほしいのです。『ちゃんとしたエネルギー政策、俺らの話を聞いてほしい』という思いで森候補支持を決めたのです」(10月2日の森候補演説会)
◆新潟でも、巨大組織に立ち向かう候補者を応援する“小池百合子現象”が
ほぼ互角だった参院選の野党陣営から、自主投票の民進党が抜けて連合新潟も与党陣営に転じたのだから、基礎票の単純計算では与党支援候補が圧倒的有利となる。しかし都知事選と同じように新潟でも、巨大政党や有力団体に立ち向かう一匹狼的候補が支持を集めるという“小池百合子現象”が起きていたのだ。
3年前の参院選にも出て落選した米山氏は、県知事選出馬表明の直前まで民進党第五支部長で次期総選挙に出馬する予定だった。しかし泉田知事の突然の出馬撤回で後継候補探しは難航。民進党新潟県連が自主投票を決め、連合新潟が森候補支持を決定する中で、県知事選に名乗りを挙げたのだ。その結果、第五支部長は解任(公認取消)と民進党離党となった。
三野党党首が勢ぞろいした10月7日の街頭演説会に駆けつけた松野頼久・前維新代表は「米山さんと政治活動を一緒にしてきた」「3年前(の参院選)、そこの街角で街頭をやった時は寂しかったね。今日はこんなに応援団がいて本当にうれしいと思います」と切り出した後、小池知事と重ねあわせた。
「米山さんは(国政選挙への)退路を断って、まるで東京の小池さんと同じように、すべての政治生命をかけて、たった一人で手を挙げた。この知事選に政治生命をかけたのです。それに今、こうやって、みんながついて行ってくれている。野党三党の皆さんがついて来てくれている。彼は捨て身です。この米山君のこの覚悟を成就していただきたい」
◆「中央との良好な関係」路線 対 「中央にもの申す」路線
米山陣営の選対本部長の森ゆうこ参院議員は「地元の自民党県議が官邸や自民党本部で陳情に行くと、『(泉田)知事を代えるのが先だろう』と言われる。新潟県知事を官邸で決めていいのでしょうか」「安倍首相から推薦状をもらう森民夫候補では再稼動に反対できない」と訴えた。
実際、泉田知事は原発再稼動に突き進む安倍政権にとって目の上のタンコブのような存在だった。そして官邸や自民党本部の泉田知事降ろしの意向を受ける形で、自民党県議は『新潟日報』と連携しながら知事批判キャンペーンを展開した。
そしてついに泉田知事は「心が折れた」「もう疲れた」と周囲に漏らしながら出馬撤回したのだが、そのバトンを引き継ごうと出馬したのが米山氏だった。「原発推進、中央との良好な関係をアピールする森候補」対「原発再稼動反対、中央(官邸や自民党本部)に物申す泉田知事路線継承の米山候補」という構図になっているのだ。大接戦の新潟県知事選、今後も目を離せない。
<取材・文・撮影/横田一(ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた最新刊『黙って寝てはいられない』<小泉純一郎/談、吉原毅/編>に編集協力)