原発再稼働対応、残業制限外す 厚労省通達、公益性理由
中日新聞 2016年10月9日
原発再稼働に向けた原子力規制委員会の審査に対応するための電力会社の業務について、厚生労働省が「公益上の必要により集中的な作業が必要」として、労働基準法で定めた残業時間制限の大部分を適用しないとする通達を出していたことが分かった。従来、公益性を理由にした適用除外はごく一部でしか認められていなかった。専門家は「再稼働対応は営利目的で公益性や緊急性があるとは言えない」と指摘。「政府が『働き方改革』を進める中で、厚労省の見識が問われる」と疑問視している。
労基法は、労働時間の上限を一日八時間、週四十時間と規定。労使協定を結べば一カ月で四十五時間、三カ月で百二十時間、一年で三百六十時間などを上限に残業が認められる。公益上の必要があるとされる原発の定期検査などは上限の適用を除外される。年末年始の郵便業務など一時的な要因で短期間、業務量が増える場合も適用除外となる。
通達は、原発の新規制基準施行後の二〇一三年十一月、厚労省労働基準局長名で各都道府県の労働局長宛てに出され、審査対応業務には年三百六十時間の上限以外は適用しないとした。
関係者によると、審査担当の電力社員には過労死ラインとされる月百時間を超す残業が続き、三カ月で四百時間を上回るなど、年間の上限を大幅に超えていたケースもある。
名古屋大の和田肇教授(労働法)は「審査対応は、安全確保が目的の定期検査とは違う」と指摘。「原発再稼働のように社会的に議論されている問題について、局長通達という形で対応していいのか大いに疑問だ。審議会などで議論すべきだった」と批判している。